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言い伝えの理由


 昨日は程よく身体を動かしサウナでリフレッシュした、爽やかな朝だ。リナの元気な声と笑顔に癒されながら朝食を頂く。


 準備を終え、門前に行くとエミリーが一番乗りで待っていた。


「おはよう、マシューはどんな感じだった?」

「おはよう! 守護術も治療術も強化術もかなり精度が上がってたね。昨日は仙神剣術を主に教えたんだけど、もうSランクも問題ないんじゃないかな? 刀もしっかり整備して大事に使ってたよ!」

「ほほー、マシューはセンスいいもんな。その後のデートも楽しかったか?」

「え!? あぁ……うん、すっごく楽しかった」

「そうかそうか、そりゃ良かった」


 話しているとトーマスとジュリアが来た。


「おはよう!」

「おう、元気だなジュリア」

「あぁ、昨日はリフレッシュできたよ」

「うん、楽しかったね」


 二人はいい笑顔だ、とりあえずはユーゴに言えたのが良かったのだろう。


 少しして皆が揃った。

 シュエンとソフィアもゆっくりと楽しんだらしい。夫婦仲が良いのは素晴らしい事だ。


「よし、とりあえず北西に真っ直ぐだ。方向は間違ってはおらぬであろう、全力で飛ぶぞ」



 レイは流石だ、普通に付いてきている。もしかしたら本気は皆より速いのかもしれない。

 今日の分の昼食は作ってもらっている。正午に昼食を済ませ、更に飛ぶ。

 夕方に良い河原を発見し、野営地に決めた。


 途中ホーンオックスを見つけ、処理済みだ。


「今日は久しぶりに私に作らせて! 皆はテントよろしく」


 ソフィアが張り切っている。


 ――母さんの野営料理は初めてだな、楽しみだ。



 皆がそれぞれ仕事を与えられて動いている、野営の分担は王であろうが関係ない。

 ソフィアの料理が出来上がったようだ、皆を呼ぶ声が聞こえる。


「出来たわよ! やっぱり野営は楽しいね、どうぞ召し上がって!」


 ソフィア特製のソースがかかったステーキ、肉が浮いたスープ、切り分けられた生レバーもある。


 皆がフォークで口に運んだ。


「美味い! このソースどうやって作ったんですか!? 焼き加減も絶妙だ……このスープは何? 肉がトロトロだ、どこの肉ですかこれ!?」


 トーマスが興奮している。

 確かにこれは美味い、ソフィアの料理の腕は健在だ。


「赤ワインをベースに香味野菜を使ったソースよ。このスープの肉はね、牛のシッポなの。美味しいでしょ? テールスープよ」

 

「凄い……僕の料理なんてまだまだだな……ソフィアさん、僕に料理を教えてください!」

「そんな大袈裟な……いいわよ、明日から一緒に作りましょ」

「オレにも教えてくれ!」

「分かったわよ、みんなで作りましょうね!」


 皆がソフィアの料理を平らげた。料理が無くなった調理器具を見てニコニコしている。


 明日からトーマスと二人で弟子入りだ。食器や鍋を川で洗い異空間に入れる。


 皆で焚き火を囲み、食後の紅茶を飲んでいる。話が途切れたところでトーマスが立ち上がった。


「仙王様、お話があります」

「何だ、唐突に」

 

「僕は……ジュリアとお付き合いさせて頂いています。ジュリアは仙族で僕は人族だ……でも、この交際を認めては頂けませんか!」


 突然の告白に皆がカップを持つ手を止めた。

 当の仙王が口を開く。


「そのような事とうに知っている。仙神国に来た時には既にそうであったな? ジュリエット、君は分かりやすい。それがいい所ではあるのだが、少し内に秘める事も覚えた方が良い」


 ジュリアは顔を赤らめて俯いた。


「……では?」

「我の許可など不要、ジュリエットが良いのなら我が言うことはない」


 そう言って仙王はにっこり微笑んだ。


「やったー!!」


 トーマスとジュリアは飛び跳ねて抱き合っている。皆が拍手で祝福した。


「ただ、ライアンには挨拶に行くように。親に言わぬ訳にもいかんだろう」

「よぉーし! これは飲まねぇとな!」


 ティモシーが異空間からワインを取り出し、宴会へと突入した。


 

 皆ほろ酔いではあるが人数は多い、交互に見張りを置いてもかなり寝ることができる、何事もなく朝を迎え旅を続ける。



 ◇◇◇

 

 

 野営を四泊はさんで正午前、鬼国ソウジャが見えてきた。


「鬼国か、本当にもぬけの殻だ。奴ら相当派手に暴れたようだ」


 そのまま鬼国を通過し、更に北西のアタゴ山を目指す。


「地図は正確なようだ、あの山だな」

「うむ、もう魔力を感じる……禍々しさは無いな、かつてのヤマタノオロチとよく似ておる。良し、皆防具をつけよう」


 軽装でここまで来たが、SSSクラスの魔物に備え完全武装する。


「よし、ではティモシーとトーマスを盾役にサポートはソフィアとエミリーだ、後は皆で攻撃する」


 皆が静かに頷いた。


 盾役二人はそれぞれ盾を構えてアタゴ山の山頂を目指す。


 ――いた、あれがヤトノカミか。

 

 白蛇の頭部からは長い角が生えている。かなり長い蛇だ、とぐろを巻いてこちらを警戒している。


 どんな魔物なのか、こちらも警戒しないといけない。


 まずはトーマスが前線に出る。


『守護術 堅牢・八岐大蛇(ヤマタノオロチ)


 革盾の特性を写した守護術だ。

 しかし、トーマスはその場で倒れた。


 ――モヤの様なものが……これは……。


『毒霧だァ――!! 息を止めて皆でトーマスを守って! エミリー! 快癒だ!』


 皆がそれぞれトーマスを守るように息を止めて動いた。

 トーマスに快癒をかけたエミリーはトーマスを連れて後ろに引いた。


「大丈夫かトーマス!」

「あぁ……早く気付いてくれて良かった……」


 ――ゴンが言ってた……姿を見ただけで皆死に絶えると……こういう事か、かなり強い神経毒だ。


 トーマスを救出し、ティモシーを殿(しんがり)に山を離れ安全な場所まで引いた。早く気付いた為に、ヤトノカミがその場から動かなかったのが幸いした。

 

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