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鬼族を探せ

 

 ユーゴ達四人はすぐ街に鬼族を探しに出かけた。


「鬼族を見かける事なんてかなり稀だもんな」

「あぁ、前回いつ見たかも忘れたよ」

「一番可能性があるのはギルドだろうね、ここには二つのギルドがあるし」

「とりあえず南のギルドに行ってみようよ」


 城を出て南の大通りを南下し、南のギルドに着いた。中を見回すが、お目当ての鬼族はいない。もう顔見知りのカウンターのオッサンに声をかける。


「おう、あんたらここ最近見なかったな。またワイバーンいじめか?」

「いや、今回は依頼じゃないんだ。早速本題なんだけど、鬼族の冒険者って最近見た? 家とか知ってたら教えて欲しいんだけど」


 オッサンは眉間にシワを寄せて腕を組んだ。


「鬼族か……そういやここ最近見ねぇな……北のギルドに行ってみな、王都にいねぇって事はねぇだろうし」

「場所はすぐ分かる?」

「あぁ、北の大通り沿いだよ」

「ありがとう、これ取っといて」


 お礼に一万ブールをカウンターに置いて出口に向かって歩き始める。


「おい! 良いのかよこんなに!」


 それには答えず笑顔で手を挙げた。正直一万ブールくらいはもう小銭感覚だ。


 北エリアに向かおう。

 


 

 北のギルドには初めて行く。

 歩いて行く必要も無い、城の上を飛んでそのまま北の大通りへ。ひと目でわかる程の大きな建物の前に降り立った。


「南のギルドより明らかに大きいな……」

「でも、南より周りの建物の規模は小さくない? いつも空を素通りだったから気にしてなかったよ」

「もしかして、敵襲があったら確実に北に被害が集中するだろうから、大きな建物はここ以外に集中してるのかな? 関係ないかもだけど……」


 なるほど、そうかもしれない。ギルドの規模を大きくする事で冒険者を北に多く集めているのだろうか。

 とりあえず中に入ろう。


 見回す限り鬼族はいない。

 カウンターには……


 ――なんだと……? 綺麗なお姉さんが二人並んでいる……南なんてむさいオッサンだけだったのに……。


 今まで損していた気分だ。

 二人のうち、好みの女性に声をかける。


「あの、すみません。このギルドに鬼族の冒険者って来たりします?」

「え? 鬼族の方ですか? はい、たまに見ますよ。けど今日はまだ見ませんね」

「そうですか、待ってたら来るかなぁ」

「あ、あの方がよく鬼族の方とパーティー組んでるの見ますよ?」


 女性の指差す方向には盾役(タンク)風のガッチリした男が座ってコーヒーカップをすすっている。


「へぇ、声かけてみよう。お姉さん、ありがとうございます」


 そう言ってオッサンの倍の二万ブールを女性目の前に置いて立ち去った。本当は胸の谷間に差し込みたいが、そういう店ではない。


「え!? 良いんですか!?」


 それには答えず手を振って男の方に向かって歩いた。


「ユーゴ、あんた声かける子おっぱいで決めたね」


 エミリーの質問には答えない、図星だからだ。


 盾役風の男の横につき、声をかける。


「突然すみません、ちょっとお話いいですか?」

「あぁ? なんだてめぇ」


 ――うわ、喧嘩腰だ……めんどくさいな。でも、下手に出ないと教えて貰えない可能性がある……。


「ちょっと聞きたい事があるんですが。ちょっと失礼しますね」


 男の向かいの椅子に腰かけた。


「何の用だ?」

「鬼族の冒険者とよくパーティを組んでるって話を聞いたんですけど、その人を紹介してもらう事できますか?」


 男は怪訝な表情のまま面倒くさそうに答えた。


「なんで教えなきゃなんねぇんだよ、まず理由を言えよ」


 ――理由……だと……? 言えるわけねーだろ……。


 ユーゴがどう言おうか悩んでいると、男が言葉を続けた。


「100万だ」

「へ?」

「100万ブール出せば教えてやるって言ってんだよ」


 男はニヤニヤと嫌らしい顔でユーゴを見ている。


「100万で教えてくれるの? やったぞ皆!」


 男の目の前に100万ブールの束を置いて立ち上がった。男は目の前に置かれたお金とユーゴを交互に見て目を丸くしている。


「よし、早速案内して貰えますか?」

「おっ……おぅ……着いてこい……」



 ◇◇◇



 北の大通りから外れて路地に入り、明らかにドアのサイズが大きい一戸建ての建物の前まで案内された。

 男が呼鈴を押すと、少ししてユーゴより頭二つ分近く大きい鬼族の男が出てきた。


「おうゴン、こいつらが鬼族に用があるんだってよ、話聞いてやってくんねぇか?」

「話……? おいらこんな奴ら知らねぇぞ? 人違いじゃねぇか?」

「いや、鬼族の方に用があって来たんです。お話出来ませんか?」

「まぁ、いいけどよ……上がってくれ」


 ゴンと呼ばれた鬼族の男は、四人を家に招いた。盾役風の男は札束を振ってニコニコ帰って行った。


 身体の大きい鬼族は、人族に合わせて作られた部屋は合わないのだろう、部屋の全てが大きい。家具などは既製品だが、大きめのサイズの物が揃っている。

 案内された部屋の椅子に腰かけた。


「で、何の用だ?」

「冒険者ならニーズヘッグって魔物の依頼があったの知ってますか?」

「あぁ、SSS(トリプルエス)の化物だな。いつの間にか無くなってたけど」

「そのレベルの化物が鬼国の周辺にいませんでした?」

「あぁ、居たな。ヤトノカミだろ? 見た事はねぇけど有名だ。姿を見ただけで皆死に絶えるなんて言われてたな」

 

 ゴンはさも当たり前のように答えた。


「本当ですか!? 場所は分かります!?」

「あぁ、おいらが国から出てくる時に持ってきた地図がある。この辺りの地図はでたらめだったけど、鬼国周辺は割と正確だと思うぞ」


 ゴンは別の部屋から一枚の地図を持ってきてテーブルに広げた。


「これが鬼国ソウジャだ、ここから北西のこの『アタゴ(やま)』にいるはずだ」

「この地図は貰っても?」

「鬼国は落ちたんだ、こんな紙切れもういらねぇよ」

「じゃあ頂きます!」


 ユーゴが出し過ぎだと思ったのか、トーマスが100万ブールの束をゴンに手渡した。


「おいおい! 良いのか地図ごときでこんなに!?」

「この地図にはそれ以上の価値がある、構いませんよ」


 トーマスがにっこりとそう答えると、ゴンは意味が分からないといった表情で素直に金を受け取った。


 礼を言い、ゴンの家を後にした。


「いやぁ、思ったよりすぐに見つかったな」

「それよりあんた達、太っ腹だね……」

「まぁ、100万くらい安いもんだ」

「金銭感覚狂ってんじゃない……?」

「ギャンブル狂いのお前にだけは言われたくねーよ!」


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