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四振りの国宝


 ナグモ山の封印の(ほこら)前。

 広い場所にいるなら、自然エネルギーの体内増幅を皆に伝えよう。


「仙王様、皆に教えてもいいですよね?」

「ん? あぁ増幅か。そうだな、我が教えよう」


 そう言って仙王が皆に方法をレクチャーする。

 ここにいる皆は練気による空中歩行が出来る。何の問題もなく理解した。


「これは素晴らしいな……術が更に強力になる。という事は移動速度も上がるな」

「えぇ、レトコメルスを朝に出て、日没にはルナポートに着きました。そのままだと呼吸が出来ないので、顔の前に守護術を施して空間を作ります」

「なるほどの、これは皆に伝えねば。全ての者が扱えるわけではなかろうがの」


 龍族でも皆が空を駆ける訳ではない、体内増幅もおそらく皆ができる事ではないだろう。


「そういえば、アレクサンドも習得してるんですか?」

「いや、奴は魔族との大戦の後は女に(うつつ)を抜かし鍛錬をほぼせんようになった。奴は強かったが、仙術も仙神剣術も極めたわけではない。体内増幅は教えていない」

「では、向こうは知らない戦闘法という事ですね。こちらの有利に働きそうだ」


 奴らは強い。

 が、奴らの知らない戦闘法を知っているユーゴ達も強い。これからの五年をどう過ごすかで更にその差は広がる。

 しかし、向こうには魔神ルシフェルがいる。魔術の他にどういう戦闘法を持っているかも分からない。


 皆が増幅した自然エネルギーで刀の斬れ味を試したり、守護術や強化術などのパワーアップを確認している。


「これは医術にもさらに良い影響を与えるな。エミリー、研究を手伝え」

「はい! もちろんです!」

「メイファお姉さん、私も元々回復術師なんです。私もご一緒してもいいですか?」

「あぁ、勿論だ。人数は多い方がいい」


 ――母さんも15年のブランクを取り戻さないといけないもんな、父さんもいるしすぐだろう。


「あ、ヤンさん、春雪を母さんに返したんです。オレやっぱり二刀流がしっくりくるんですよね、良い刀売って貰えませんか?」

「あぁ分かった、見繕ってやるから後で来い」


「その事だが……」と里長が口を開いた。


「これから魔族と鬼族との戦になるやもしれん、この里には誰も使っておらぬ特級品が四振りある。それをお主らに託そうと思う」

「里長……まさか……」


「うむ、フドウ達の刀だ」


 その刀を知っている者達は驚きの表情を隠せない。それはそうだ、国宝の四振りだ。


「儂とメイファはリンドウの打った特級品がある。シャオウやシュエン、ヤンガスも特級品の所持者だ。ユーゴ達の一行は四人だ、ヤマタノオロチと同等の化物を倒すほどのお主らにこそ相応しい」


「え……龍族でもないアタシが貰っても良いのか……?」

「うむ、不服か?」

「とんでもない! そんな素晴らしい刀に恥じない戦士になるよ!」

「おいおい……良いのか龍王よ……」

「ユーゴが認めて共にするほどの戦士だ、トーマスとエミリーも龍族ではないが、この里の戦士だ」


 メイファもヤンガスも驚きはしたが、トーマスとエミリーを認めている。顔を綻ばせ二人に歩み寄った。



 四振りの刀がある里長の屋敷に戻った。

 厳重に施錠された蔵から、里長が刀を持って出てくる。


「まずは我が妻リンファの刀だ、名を『凛花(リンファ)』と言う。妻は参謀であった、指揮を執る時にかざす為リンドウが長めに作った。丁子乱(ちょうじみだ)れの刃紋が美しい」


 里長の妻の刀がジュリアに渡った。両手大剣を使っている上に今の風切(かぜきり)も長めだ。ジュリアには最適な刀だ。


「ありがとう! この刀に恥じないような剣士になるよ!」



「次に長女メイリンの刀だ、これもそのまま名を冠した刀だ。名を『美鈴(メイリン)』と言う。直刃(すぐは)が美しい直刀だ」


 エミリーの刀である青眼も直刀だ、少し長めの直刀を受け取った。


「ありがとうございます! メイリンさんみたいな治療術師を目指します!」



「リンドウの刀だが、長さで言えば大脇差だ。名を『鈴燈(リンドウ)』と言う。ユーゴの持つ『龍胆(りんどう)』は一番最後の特級品だが、この鈴燈は奴が初めて打った特級品だ。奴は盾士であったが剣の腕も一流であった、お主の剣の腕もそれに劣らぬと見ておる」


 オレの龍胆と同じく刃紋は逆丁子(さかちょうじ)。伝説の盾士が扱っていた刀をトーマスが受け取った


「ありがとうございます! この里の盾士として恥じないようさらに精進します!」



「そして最後にフドウの刀だ、名を不動(フドウ)と言う。奴と同じ龍眼を持つお主にこそ相応しい。刃紋は直刃(すぐは)だ」


 不動は龍胆よりも長い。

 里一番の剣士の刀、不動で攻撃し、伝説の盾士の名を持つ龍胆で防御するのがいいだろう。


 ――特級品の二刀流……またとんでもない刀を貰ってしまった……。


「オレなんかにこんな素晴らしい刀を……その期待に応えられる剣士になる事を約束します!」



「長く眠っておった刀だ、ヤンガスに整備を頼むと良い」

「おう、責任持って仕上げる」


 全ての刀をヤンガスに預け解散した。夜は里長の屋敷で仙王を招いた酒宴が催される。

 刀を貰った四人は、久しぶりの『なから屋』にすき焼きを食べに来ている。ジュリアのリクエストだ。


「美味いな! 野営で食べるすき焼きも美味いけど、本場は違うな……」

「ここにいた時は気が付かなかったけど、これ魔物の肉だよな?」

「だね、この島に牛いたっけ?」


 追加の肉を持ってきた店員に聞いてみた。


「あぁ、牛鬼(ぎゅうき)の肩肉だよ」

「あぁ、なるほど! 牛いたね!」


 牛鬼は大型の蜘蛛の身体から牛が生えているような魔物だ。確かに肩辺りは牛だ。


 ――まさかアレの肉だとは……多分B~Aランクの魔物だろう、美味いはずだ。


 

 やはり店のすき焼きはひと味違う。

 大満足の昼食を終えてお茶を飲んでいる。


「いやぁ……とんでもない刀貰っちゃったね……」

「うん、龍族の英雄の刀だよ……」

「オレなんて二本も貰っちゃったよ……」

「アタシまで貰えるとはな……」


 

 その後、それぞれ自由な時間を過ごし夜の宴会に備えた。



 ◇◇◇

 


 宴会が行われる広間にはすでにお膳が据えられている。里長と仙王が奥に座り、その横にティモシーとシャオウが座った。

 皆がバラバラと腰を落とした。ユーゴ達もも横並びで座る。


「遠路遥々仙王が来てくれた、ささやかな酒宴をもうけた故、今後の話をしながら腹を満たしてくれ」


 吟醸酒で乾杯し、それぞれが美しく盛り付けられた料理に手をつける。やはり魚は刺身で醤油だ、酒に合いすぎる。


 ある程度食べ進めると、里長が口を開いた。


「酔うてしまう前に話をしておこう、儂は龍族の始祖の思念を見に行こうと思う」

「当然我々も行こう、明日にでも仙神国とウェザブール王都に通信させてくれ」


 里長は頷きユーゴ達の方に顔を向けた。

 

「あとはシュエンとソフィア、ユーゴら四人で共を頼めるか?」

「もちろんです! お供します」


「里長代理はシャオウだ」

「分かったわい」


「それでは日は改めて伝える故、各人自由に過ごすように」


 

 宴会は遅くまで続いた。

 ユーゴはシュエンの屋敷に三人で帰り、家族水入らずの時間を酒を飲みながら過ごした。

 

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