表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
190/241

ファーヴニル討伐


 皆は普段と変わらず朝食を食べた。いつも通り談笑しながら食後の紅茶を飲んでいる。

 ルシフェルの朝食は、パンとスクランブルエッグとハッシュポテトを数枚だ。どれだけポテトが好きなのだろうか。


「皆、緊張はある?」

「緊張? する必要ないだろ。ボクが完璧に守るからね」

「いい自信ね、魔法を放つ魔物ならワタシが吸収するわね」


 ホテルを追加予約し、荷物はそのまま置いていく。ファーヴニル山には昼前には着くだろう、昼食を準備した。




 皆無言で飛び続け、予定通り昼前には到着した。山の麓の時点で途轍もない魔力を感じる、でも禍々しさはない。


「シュエンちゃんは、リーベン島の魔物は禍々しい魔力だったって言ってたわね。封印されてたのが関係してるのかしら」

「怒りとかもあるのかもしれないですわね……」


 

「よし、テメェら、サクッと倒して宴会しようじゃねーか!」

「身体強化は大丈夫? 行くわよ!」


 目を瞑っていても何処にいるかわかる程の魔力の方へ飛ぶ。


 いた、間違いなくあれがファーヴニルだ。

 四足歩行の赤いトカゲにドラゴンの様な羽が生えている。体長はマモン二人分くらいだろうか。

 いきなり襲ってくる事はない、向こうもかなり警戒している。


「よし、皆ボクの後ろにね」


 アレクサンドがアズガルシスの盾を構え、ファーヴニルに対峙する。


『守護術 堅固な城壁(ロバスト ランパーツ)


 ドッシリと構えたアレクサンドを前に、ファーヴニルは動かない、相当慎重な魔物だ。四足で地面に深く伏せたままだ。


 未知の魔物に想定外ということは無いが……ファーヴニルは突然、瞬間移動のような速さでアレクサンドに襲いかかった。


「グァッ!!」


 アレクサンドは守護術ごと吹き飛ばされ、パーティーは突如危険に晒された。


「皆! 防御よ!」


 言い終わらないうちに、それぞれが守護術や闘気を纏った。


『仙術 途絶(フリーズ)!』


 マモンとサランの途絶は、素早い動きでいとも簡単に躱され、一瞬でマモンの眼前にファーヴニルが迫る。が、アレクサンドがそれを張り直した守護術で防いだ。


 一瞬の攻防に皆が言葉を失っている。


「これは驚いた……コイツ相当だね……」

「助かったわ……えぇ……速すぎるわね……」

「すまない、ボクが突き飛ばされるとはね……気合い入れるよ」


 アレクサンドの顔が変わった。

 ファーヴニルの敵意を一身に受けている。


「サラン! アレクサンドのサポートに回って!」

「分かりましたわ!」

「ルシフェル! テン! とにかく攻撃するわよ!」

「おう!」


 瞬間移動レベルの速さから繰り出される体当たりは、単純だがとてつもない威力だ。

 アレクサンドはその動きに合わせて押し返し、地に足をつけてガードしている。それにはサランの効果の高い強化術も一役買っている。


『風魔術 風魔召喚(サモンジン)!』


 ルシフェルが放つ強力な風魔術がファーヴニルを襲う、皆がヒットしたと思った。しかし……ヤツは消えた。


「どこいった!?」

「おい! 上だ!」


 上を向いた瞬間、災害級の火魔法が降り注いだ。


魔力吸収(アブソーブ)!』


 間に合った、マモンは全ての魔法を吸収した。


解放(リリース)!』


 その災害級の魔法に更に自然エネルギーを付与し、更に圧縮して空にいるファーヴニルに向け解放した。


 次の瞬間、ファーヴニルは地面に戻りアレクサンドに襲いかかった。


「なっ……なんなんだコイツの速さは!」

「クッソ……魔眼さえあればこんなトカゲ……」


 ――本当に瞬間移動してるのかしら……速すぎる……。

 

 サランのサポートを受けながらアレクサンドは必死の防御だ。マモン達三人も攻撃を繰り出すが、ようやく(かす)る程度で致命傷は与えられない。


 最初は逸れていたファーヴニルの敵意は、今は完全にアレクサンドに向いている。


「もうコイツの敵意はボクから逸れることはないよ! 存分に攻撃してくれ!」

「分かったわ!」


 ただ、速すぎる。


 ――どうすれば当たる……。


「ルシフェルはヤツの上から、テンはワタシの反対側に行って! ワタシが攻撃するから避けたところに斬りかかって!」

「分かった!」


 強化術を掛け直して、錬気で爆発的に移動する。デュランダルで渾身の一突きをお見舞いしてやる。


「鬱陶しいわね! いい加減止まりなさい!」

『剣技 刺突剣(ソードストライク)!』


 マモンの渾身の一突きはトカゲの左肩辺りを突き刺した。

 

 ――え……? さっきファーヴニルの動きが止まった……?


「シャァァァァ――ッ!!」


 ファーヴニルはパニックに陥った。


「今よ!!」


 言われるまでもなく、ルシフェルとテンは同時に斬りかかった。テンは右脚、ルシフェルは右肩から腕ごと斬り落とした。

 マモンもこの好機を見逃さない。


『剣技 光創の一撃(ストライクオブライト)!』


 肩辺りに刺さったデュランダルを引き抜き、真横から両手で振り降ろし、胴を真っ二つにした。


「やったわね……」

「あぁ……強かったな……」


 皆でへたり込んだ。確実に最強の相手だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ