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美しさの理由


「離してよ! 痛い痛い!」

「うるせぇ! お前を連れて帰らねぇと俺が困るんだよ!」


 ロンが近づいて男を外に連れ出した。

 女の子は泣きながら他の黒服と店の奥に下がって行った。


「相変わらずあぁいうのが来るのか」

「そうね、これはずっと付きまとう問題だと思う。雇ってる女の子が全員そうじゃ無いけどね」


 間髪入れずにボックス席の一角辺りがザワザワし始めた。


「あそこには帰らないって言ってるでしょ! しつこいんだって!」


 他の客は慣れたものだ、普通に飲んでいる。


「ロンはまだ外か、オレが行くよ」

「ユーゴ君、大丈夫。座ってて」


 そう言ってエマは問題の起きた席に向かって歩いていった。


「ジェニー、他にも追い払ってくれる様な奴がいるのか?」

「ううん、ロン君が鍛えてはいるけど、あのレベルを追い払うのは無理かな?」

「おいおい、じゃあオレ行ってくるよ」

「見てて、大丈夫だから」


 ――え……どうするんだ……?


 エマはそのまま歩を進め、男の前で立ち止まった。


「お客様、うちの女の子が何か問題でも起こしましたか?」

「あぁ? こいつを連れて帰るように言われてんだよ。痛い目見たくなけりゃ引っ込んでろ」

「それはできませんね、お帰りください」

「あぁ? 女のクセにいい度胸だな。その綺麗な顔をぶっ飛ばしてやろうか?」

「えぇ、お気の済むまでどうぞ」


 男は拳をポキポキと鳴らし、思いっきり振りかぶってエマに殴りかかった。


「アダァ――ッ!!!」


 男は拳を抱えて転げ回っている。


「おいおい……エマ……守護術張ったぞ……?」

「うん……なかなか良い守護術だね……」


 更にエマは、ピンヒールに錬気を纏って男の太ももに突き刺した。


「ギィヤァァァ――!」

「お帰りくださいますか?」

「わっ……分かった! 帰る!」


 男は足を引きずって店を出た。

 客からは拍手と歓声が上がった。


「皆様、お騒がせいたしました。引き続きごゆっくりお楽しみください」


 エマは一礼してユーゴの横に戻ってきた。


 ユーゴとトーマスは相当間抜けな顔で見ていたらしい。エマが戻るなり笑われた。


「おい、エマ……守護術に錬気術まで……」

「うん、ロン君に教わったの。ジェニーも結構強いよ」


 ――なんてこった……エマ達が守る必要ないくらい強くなってる……。


「ロン君はあと二年で騎士団に行っちゃうしね。私達だけでこの店守れるように鍛えてもらったの」

「もうすぐAランクの試験受けようかって話してるんだよね!」


 ――冒険者登録までしてるのか……。


「ねぇ、ユーゴ君とトーマス君。もし良かったらなんだけど、私達に術の指導してくれない?」

「あぁ……明日の午後くらいからロンの成長を見てやろうかって話はしてたんだ。まだロンには言ってないけど、一緒に行くか?」

「ホントに!? 私達とニナの三人で大丈夫?」

「ニナ? あぁ、前の店からいる子だよな? 他の仲間二人も来る予定だし、三人増えるくらい何ともないよ」

「じゃ、明日の午後にギルドに行くね! ロン君にも言っとくよ!」


 二人が更に美しくなっている理由が分かった。筋肉で引き締まってスタイルが良くなっているからだ。


 明日の約束をして、強くなった二人と遅くまで飲んだ。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 朝はゆっくり起きて、朝食にしては遅い食事を摂っている。昼食は軽くにしよう、部屋で食べられるようサンドイッチを作ってもらい持ち帰った。



 正午過ぎ、ロビーに出て皆を待つ。

 すぐに三人が出てきた。皆軽装だ、ユーゴもそうだが。


「さぁ、ギルドに行くか。お前らもうカジノ飽きただろ」

「ギャンブルに飽きるなんて事は無いよ!」

「あぁ、その通りだ。一つとして同じ勝負は無いんだよ」

「へぇ……まぁ、程々にな……」


 トーマスは何も言わない、無駄な事が分かっているからだ。


 冒険者ギルドに行くと、既に四人は待っていた。


「ロン、今日は寝過ごさなかったな」

「もう昼過ぎだよ? さすがに起きてるよ」


「あれ、女の子三人も? エマもいるじゃん!」

「あぁ、ロンの弟子だよ。そろそろAランクの試験受けようかって話してるみたいだ」


 エマ、ジェニー、ニナの三人はユーゴ達に向かって一礼した。革鎧に身を包んで腰には刀を差している。いつものドレス姿じゃない分、新鮮味がある。


「皆さん、よろしくお願いします!」

「三人とも刀買ったのか?」

「うん、三級品でも下位だけどね」

「オレ達もみんな刀だからな、良い指導が出来そうだ。じゃあ、ギルドで依頼受けてから向かうか」


 中に入って依頼書を見に行く。


 ――あれ……? 里長達がいる。


「里長、何してるんですか……?」

「おぉ、ユーゴ達か。四人で冒険者の資格を取っておこうと思っての」


 里長と一緒に、シャオウ、メイファ、ヤンガスいる。二枚アタッカーの龍族最強クラスのパーティーだ。


「お前ぇらSSS(トリプルエス)ってんだろ? そんな依頼ねぇからSSで我慢しようかって話してんだ」

「この四人ならSSなんて余裕ですよ……」

「このケルベロスってのに行ってみようと思うんだが、お前ら知ってるか?」

「いや、初めて見ますね」

「三つ首の犬だ、行ってみるかの」


 里長達は冒険者カードを作りに行った。


「あの四人の戦闘……見に行きたいね……」

「うん……後で聞こう」


「ねぇ、ユーゴ君達SSSなの……? そんなランク初めて聞いたんだけど……」

「あぁ、死ぬかと思ったよ」

「すごい人達に教えて貰えるんだね……」


 とりあえずは彼女達の実力を見て苦手を指導するのがいいだろう。


「今日Aランク試験受ける?」

「とりあえず見てみようよ」


 依頼書に目を通す。


 ――お、ロックリザードの依頼だ。


「オレ達のAランク試験もロックリザードだったんだ、ロンもだよ」

「うん、俺の防具はロックリザードの革だよ」

「へぇ、カッコイイね!」

「別に今日じゃなくても良いし、受けとくか?」


 ロックリザード、BランクのアルミラージとCランクのスレイプニルの依頼書を持って受付カウンターへ。


「おぉユーゴさん、久しぶりだな。なぁ……さっきの黒髪の四人組は知り合いか?」

「久しぶりです。あぁ、オレ達の師匠だよ」

「あんたらの師匠か! なら納得だ。カード作っていきなりSSランク受けるって言うからよ……」


 ロックリザードで三人のランクアップ試験を受ける。とりあえずBランクとCランクの魔物で様子を見よう。


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