ウェザブール王都へ
その後、ラウンジに四人で集まりワインを飲んでいる。
「さて、明日からどうする?」
「とりあえず俺は鬼族達の町の整備に付き合うかな、テンの魔力の問題もある。お前の兄達と鬼族達の関係も整理しとかないとな」
「あ、兄達に練気術と仙術の指南も頼めない?」
「あぁ、分かった」
「わたくしはマモンの部屋の改修に立ち会おうと思いますわ。半端な物にされたら困りますもの」
そこまでしなくてもいいが。
サランならマモンの好みに合わせて仕上げてくれそうだ。
――シュエンちゃんと別行動か……なら。
「じゃあアレクサンド、ワタシ達はウェザブール王都に行って魔王と鬼王の就任報告でもしてきましょうか。あそこの王は仙王の部下なんでしょ?」
「あぁ、そうだな。あと久々に人族のレディを抱きたいな……鬼族のレディにはボクの魅力が伝わらなかった様だからね……」
「まぁ、好きにしなさい……王都に入るのは無理だろうから違う町に寄ってあげるわ。あぁ、レトルコメルスに行ってヴァロンティーヌ達を勧誘してこようかしら。サラン、兄さん達にそう伝えといてくれる?」
「えぇ、分かりましたわ」
「ヴァロンティーヌか、彼女に会う前に事を済ませないとな……我慢できずに襲ってしまいそうだ、嫌われてしまう」
「心配しなくてもワタシが止めるわよ」
王都では誰がマモン達の相手をするかは分からないが、下っ端は出てこないだろう。宝玉の事を聞けるなら誰でもいい。
ただ、マモンとアレクサンドに因縁があるシュエンの息子達が出てくる気がする。なら話がスムーズなのだが。
――まぁ、考えても無駄ね。ゆっくり休んで明日出発しようかしら。
◆◆◆
久々の故郷で迎える朝。
憎きリリスも居ない、最高の朝だ。
ダイニングで朝食を頂く、顔見知りのメイド達の顔も晴れやかだ。偉そうに振る舞い難癖をつけてくる魔王はもう居ない。
「さぁアレクサンド、出発しようかしらね」
「あぁ、行こう。人族のレディ達が待っている」
アレクサンドは上機嫌だ、久しぶりに女が抱けると顔が緩んでいる。
割と正確な地図がある、目指すは一直線にウェザブール王都だ。昼夜二食分を準備し全力で王都を目指す。
「ねぇ、宝玉は龍王が持っていると見て良いわよね? 蒼は仙王の空間内でしょうね」
「そうだろうね、表情を変えずにあれだけ瞬時にウソをつけるとは凄い芸当だよ。ボクも見習わないとね、ボクのウソはレディにすぐにバレる」
「ウソつく様なことしなきゃ良いのに……宝玉の所在が分かればそれに合わせてプランを組みましょ」
「あぁ、気長に行こう」
一週間近くかかるだろうか。
アレクサンドとの野営も慣れたものだ。
五日後、もうすぐウェザブール王都だ。
「どうする? お昼前だけどランチを済ませておく?」
「いや、さっさと王都で用を済ませてレトルコメルスに行こう。昼食は移動しながら干し肉で良い」
アレクサンドの下半身はもう限界だ。そのまま王都へ飛ぶ。
ウェザブール王都の北門を背に軍が配備されているのが見える。その前に四人並んでいる。
「あら、シュエンちゃんの息子達だわ」
「ボク達が来るのが分かっていたのか? ずっといる訳じゃ無いだろうしね。かなり警戒しているようだ」
「そういう能力者がいると見て良いわね。ワタシ達が次にここを攻めるとでも思ったのかしら……まぁでも、あの子達がいるなら話が早いわ。シュエンちゃんの事を聞いてくるだろうしね、それならあの記憶を見せてやればいい。行きましょうか」
王都の騎士達を背に待ち構えていたユーゴ達に声を掛ける。
「あら、わざわざお出迎えとはね。久しぶりに王都を観光しようと思ったのに」
「鬼国や魔都を落とすような危ないヤツらを入れるわけないだろ」
「情報は持ってるのね、なら話が早いわ。そういう能力者がいると思って良いわね」
「さぁ、どうかな」
「ユーゴちゃん、アナタも右眼が青紫に変わったのね」
「あなたも? 何か知ってるのか?」
「いいえ、詳しくは知らないわ」
シュエンの妻と同じだ。
何らかの能力を開眼していると見ていい。いや、片目だけという事は開眼しかけているという事か。
「おいおい、ジュリエット。キミがなんでコイツらといる?」
「アタシは今こいつらの仲間だよ。お祖父ちゃんからアンタがオイタしたらお仕置きしてやるように言われてる」
「キミごときがボクを? 冗談はよしてくれよ」
「相変わらず人を舐めてかかるヤツだ。いつか痛い目を見ればいい」
青い眼に金髪、仙王の孫という事はアレクサンドの妹か。彼等は仙族の戦闘法を取り入れてるという事だ。アレクサンドの妹も練気術を使うと見ていい。
「アレクサンド、話は終わった?」
「あぁ、娘のエミリーも気になる所だが、まぁいい」
「そう、話を進めるわね。ここの王二人は、仙王の部下なんでしょ?」
「あぁ、元々はな」
「じゃあ、伝言を頼まれてちょうだい」
「内容による」
「ワタシ達は鬼人を復活させたの。そして鬼王を討った」
「知っている」
「ワタシは魔人、魔王を討った。今までこの世界にはずっと王が四人居たものね。これを崩す訳にはいかないと思ったの」
何をしに来たのか理解出来ていないといった表情だ。ユーゴは怪訝な表情でマモンを睨みつけている。




