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魔都の町 ヴェネシテラ

 

 一週間後。

 もうジョカルドに戻る気は無い、各々荷物をまとめた。野営が主になる為、下着等は多めに買い込んでいる。シュエンのこだわりで調理器具なども新調した。

 シュエンはアレクサンドに、マモンはサランにそれぞれ荷物を預け、屋敷を後にした。


「さて、出発するか」

「サラン、名残惜しくない?」

「いいえ、全くですわ」

「なら良かった、行きましょ」



 移動速度が飛躍的に上がった彼等の脚では野営の必要すら無かった。


「日は沈んだけど、一日で着いたわね。とりあえずお腹が空いたわ」

「ノースラインと言えばスパイス料理だな、渇いた身体にビールを頂こう」

「チキンをスパイスに漬け込んで焼いた料理が美味かった記憶があるな、楽しみだ」



 美味しいスパイス料理をビールで流し込む。


 アレクサンドが一番ウェザブール王国内から出るのを惜しんでいるのかもしれない。女漁りに出かけた。


「あいつも好きだな」

「シュエンちゃんはついて行かないの? アナタならすぐ釣れそうだけど」

「俺には一生を捧げた女がいる、興味が無いな」

「ホントいい男ねアナタは」


 一番親しかったはずの妻には憎悪の念は向いていないらしい。愛が勝っているのかもしれない。息子に対する愛情とはまた種類が違うのかもしれない。



 次の日、朝食を済ませてホテルのロビーに集まった。


「アレクサンド、最後の女漁りは楽しめた?」

「いや、あまりにも釣れないから前に抱いたレディの所に行ったよ」

「あら、そう。まぁ空振りよりは良いじゃない」

「魔都のレディを楽しむよ」

「魔族の女は情熱的よ、刺されないようにしないとね」

「あぁ、刺されてもサランに治してもらうよ」 


 そんな他愛もない話をしながら北に飛び立った。


「まっすぐ北に進めば町に当たるわ。モレクとコンパスを辿って真南に進んだから間違いないわよ」

「魔物が強くなるな、いてもSランクほどだが」

「寝るにも交代で見張りをつけないとね」



 山岳地帯を飛んで移動する。

 飛行する魔物を見かけはするが、わざわざ相手をすることは無い。倒しても金にならない上に、修練にもならない。

 日が暮れる前に野営の準備をして食事を摂る。薪はエビルトレントから調達している。トレントの上位種だが、ただ大型になっただけだ。薪が多く取れていい。



 三日後にようやく山を抜け、魔都の町『ヴェネシテラ』に到着した。

 マモンは15歳の時に寄って以来だ。懐かしさで心が踊る。


「四日かかったな、長旅だったよ」

「早い方だわ。ワタシが出た時はノースラインまで半月近くかかったから」

「割と栄えた町だな、ジョカルド程では無いが。他種族の俺達が立ち入っても問題ないのか?」

「えぇ、魔族も王都にいたでしょ? 問題ないんじゃない? シルヴァニア城下では警戒されるでしょうけどね。とりあえず一週間くらい滞在しましょ」 


 宝石を売りに出し魔都の貨幣に替え、ホテルにチェックインした。


「生活レベルはウェザブール国内と変わらないな」

「そうね、魔族にも天才はいるのよ。魔石を動力にって所は同じね。でも、ウェザブール王都の方が断然進んでるわ」

 

「さて、遅めの昼食だ、魔族の料理を楽しもうか」

「魔族の料理はダイナミックよ、ビールやウイスキーが合うわね」


 ホテルおすすめのレストランに向かい、中に入る。昼食には遅い時間だが、割と繁盛している。異種族はかなり目立つ、注目を浴びたが絡まれる事は無かった。時折冒険者等の訪問はあるようだ。


「こんなに赤毛が並ぶと迫力が凄いな」

「えぇ、ワタシも久々に見る光景だわ」


 席に着きメニューを広げる。


「ステーキか、確かにダイナミックだな」

「適当に人気メニューから食べましょうか」


 テーブルに料理が並んだ。


「ステーキ、思ったより大きいな……」

「ピッツァも他のところのとはちょっと違うでしょ? ワタシ達はピザと呼んでるわ。皆で分けて楽しむの」

「すでに切り分けられてますわね、大きいし」

「ローストチキンも美味いな。ステーキもシンプルだからこそ、このソースがいい仕事をする。野営で大活躍しそうなソースだ」

「フライドポテト……止まらないな……ビールが進みすぎるぞ」


 マモンにとっては久しぶりの故郷の料理。

 皆も満足気だ。


「ふぅ……美味かったな。ボリュームが凄いな」

「あぁ、昼からビールを頼んでしまったな」


「今からメイドさんに会いに行きますの?」

「場所は分かるのか?」

「えぇ、エナリアのベルゴール家はこの町の領主一族よ、聞けば誰もが知ってるわ。今日は取次ぎだけかもね、門衛に手紙を渡しときましょ。ホテルの名前も書いとかないとね」

「なら話は早いな」


 食後のコーヒーを飲みながらエナリア宛の手紙を書き上げる。会計時に店員にベルゴール家の屋敷の場所を聞き、店を後にした。


「聞くまでもなかったな、既に見えてる」

「そうね、行きましょ」


 門衛に話を通す。


「こんにちは、ワタシはシルヴァニア家から来たの。この手紙をエナリアに取り次いでちょうだい。マモンが訪ねてきたと言えば伝わるわ」

「マモン・シルヴァニア様ですか……お預かりいたします」



 今日の用事は終わった。

 夜はまた酒と共にディナーを楽しむ予定だ。


「さて、ディナーまで部屋で寛ぐことにしましょ」

「後ほどロビーに集合ですわね。シャワーを浴びてゆっくりしておきますわ」


 シャワーを浴びて部屋で寛ごう。

 

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