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魔力吸収

 

 次の日、皆ダイニングに集まり朝食を食べている。


「どう? 眠れたかしら?」

「あぁ、何年ぶりかにぐっすり眠れたよ。改めて礼を言う」

「なら良かった、早速なまった体を動かさないとな」


 頭を下げるシュエンに、マモンが話を切り出した。


「ところでシュエンちゃん、もしかしてアナタ、魔力を吸収した後に解放出来ないの? あんな禍々しい魔力、解放しないとそりゃ自我崩壊するわよ」

「解放……? 方法が分からないんだが……そんな事が可能なのか?」

「えぇ、魔法を吸収した後に解放するでしょ?」


「……ちょっと待ってくれ。魔法も吸収できるのか?」

「え……? 呆れた。自分の能力を全く把握してないのね……分かったわ、ワタシが教えてあげるわね」

「あぁ、頼む……」

 

 

 食事を終え、冒険者ギルドに向かう。


「ここでの修練と言えばホワイトファングね。懐かしいわ」

「あぁ、絶滅するんじゃないかってほど狩ったからな。あれから数年経ってる、増えてるだろうね」


 依頼を受け、懐かしい森に向かった。



「さて、シュエンちゃんの講義を受けようかしら」

「あぁ、お前らの剣の腕は俺がどうこう言う水準じゃない。が、錬気術の精度を更にあげることで剣の斬れ味がさらに増すうえに、気力の更なる節約につかながる。仙術や魔法の威力も増すだろう」


「龍族はどんな訓練をするんだ?」

「俺は浮遊術を習得する前は空を駆けて移動していた。空を駆ける訓練が錬気術の精度を上げるのに役に立つ」

「あぁ、見たことがある。なかなかの移動速度だったな」

「空を駆けることが出来れば、浮遊術では出来ない急な方向転換が可能になる。錬気術の精度が増すうえに、空中戦で有利に戦えるようになる」

「なるほどね、早速皆の脳裏に映すわね」


 記憶を共有し、シュエンの手本を元に修練を開始した。


「これは……難易度が高いぞ……」

「そうですわね、こんな使い方した事も無いですわ」

「あぁ、普通は年単位で習得する。お前ら程の使い手ならそこまではかからないだろう。まずは地上で走って練習だ」


 難易度の高い移動法で術の精度を上げる、理にかなった方法だ。

 

 マモン達は来る日も来る日も、ホワイトファングを狩りながら森を駆け続けた。

 


 ◆◆◆

 

 

 錬気術の修練を開始して、はや半年が経った。

 シュエンの体調を考慮して休みは多く取っている為、毎日出かけている訳では無い。

 地面を掴む感じは分かってきたが、まだ空を駆ける程のレベルではない。

 

 アレクサンドはさすが千年以上生きている仙族だ。二ヶ月程で空を駆けた。


「お陰で俺の体調も戻ってきた。筋肉も戻ったな。ここ数年魔法しか使ってなかったからな。やっと剣や術の勘が取り戻せたよ」

「まさかボクが二ヶ月も駆け続けてやっと習得出来るとはね、相当難易度が高いよ。これは皆と一緒に更に修練した方が良さそうだ。確かに錬気の扱いが格段に良くなった」


 マモンとサランはまだ空を駆ける事が出来そうにない。しかし、錬気術の精度は上がっているのを感じる。


「元々魔族は気力の扱いに慣れていないんだろ? これは仕方ない、幼少期から錬気術をずっと使っている龍族ですら習得出来ない者が多い。扱いに長けた者でも習得するのに数年かかる。アレクサンドは仙術の扱いが長いからな。仙術は錬気術の扱いに通ずるものがある」

「まだ半年だものね、焦りは禁物ね」

「えぇ、急ぐことはありませんわ。格段に剣の斬れ味は増してますもの。進歩はしてますわね」

「コツを掴めば速い、それがなかなか難しいんだがな」



 後は自分で出来る修練だ。

 そろそろシュエンに魔力吸収と解放を教えよう。


「シュエンちゃんに魔力吸収の指導を始めようかしらね。サランはアレクサンドに教えて貰っててくれる?」

「分かりましたわ、行きましょアレク」

「あぁ、デートだな。楽しもう」


 アレクサンドとサランは、森の木々の間を縫うように地を駆けて行った。

 

 

「ではマモン、よろしく頼む」

「えぇ、じゃあ脳内にお邪魔するわね」


 シュエンの脳裏にマモンの記憶を映す。


「なるほどな……触れて吸収する方法だけだと思っていた」


 シュエンの飲み込みは早かった。

 能力さえあればそこまで難しい事ではない。


「吸収できるのは魔力による魔法だけよ。仙術は自然エネルギーが混ざってるから無理ね。守護術で防御しながら魔力吸収しないとダメよ」

「あぁ、分かった。これはいい、俺達に魔法は通用しないということか」

「そうね、なかなか便利な能力よ。解放するのを忘れない様にね」


 シュエンは静かに頷き、顔だけ後ろに向けた。

 

「……ところで、ずっと付いてきている奴ら、いつまで隠れている気だ?」

「やっと追いついたみたいね」


 五人の冒険者風の男達が木の影から出てきた。


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