表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
123/241

剣術との出会い


 次の日からアレクサンドによる剣の指南が始まった。せっかくいい剣を手に入れた、寝かせておくのは勿体ない。


「キミの片手剣はブロードソードだ。ボクの剣と長さは変わらない。けど、両手持ちも出来るようにグリップが長めに作ってあるね」

「へぇ、どうやって持つの?」

「持ち方は色々あるが、ボクは四本指を合わせて手を広げた時に親指と人差指の間のL字になった部分で、上からグリップを自然に握り込む」


 言われた通りに握ってみるが、剣を持つのは初めてだ。まだしっくりこない。

 

「……なるほどね、とりあえずこれで振ってみるわ」

「両手剣等にはパワーで劣るけど、片手剣のいい所は半身を乗り出して振った時のリーチの長さにある。あとは盾を装備して戦える所だね。だから盾役の武器は片手剣が大多数だ」

「ワタシは魔法アタッカーだし、軽い片手剣が良いかもね」


「ボクは『仙神剣術』を使う。その名の通り仙族が編み出した剣術だ。仙王は剣聖と呼ばれる程の使い手だよ」

「へぇ、仙術の呼吸法を取り入れただけで私の魔法は変わったものね。剣術も取り入れるべきね、魔法が効かない敵もいる事だし」


 仙神剣術の基礎を教わった。

 仙術を基本とした仙族の剣術だけあって、自然エネルギーを使うようだ。


「自然エネルギーを気力と混ぜて剣に纏うんだ。風エネルギーだと斬れ味と剣速が増す。基本は風エネルギーだね。魔法を纏って放つ魔法剣とは根本的に違う」

「なるほどね、やってみるわ」


 特にいつもやっている事と変わらない。

 それを剣に纏うだけ。


「なるべく薄く纏うように意識してみてくれ」

 

 マモンは気力の操作が甘い、これで気力の使い方も練習できる。


「なかなかいいぞ、初めてにしては素晴らしい。昨日ボクが見せたソードストライクが突き技の基礎だ。そうだな……その大木に突き刺してみようか」


 基礎は学んだ。

 構えは左足を前に右足を半身引く。

 剣先を後ろに向けて下ろす構えからだと、斬るか突きか分からない。対人ではこの構えが多いらしい。

 腰の捻りから、肩、肘、腕まで力を伝え、一気に突く。


『剣技 刺突剣(ソードストライク)


 対象の木に突き刺すつもりだった。

 が、木は微塵に砕け散り、大木は音を立てて倒れた。


「え……凄いわね……」

「うん、良い突きだ。才能があるよマモン」



 剣を振るうのは意外と楽しかった。

 マモンは魔力は突出しているが、気力はそこまで多くない。ただ、魔族の中ではかなり多い方だ。仙神剣術を扱うには十分な気力量ではあるらしい。

 突きや斬撃を含む、様々な仙神剣術を学んだ。剣を振っているだけで一日が終わる。

 マモンは剣術に夢中になった。


 アレクサンドも弟子が出来た様で楽しかったのかもしれない。マモンは彼の指導で剣を振り続けた。自分でも信じられない、手の平のマメが潰れるまで振った。

 それくらい剣はマモンにピタリとハマった。



 ◆◆◆



 何ヶ月剣を振り続けただろう。

 更に守護術を学び、ギルドの依頼を剣でこなすうちに、マモンは自分の心が落ち着いている事に気がついた。


 ショーパブでショーをしている時もそうだった。何か打ち込める事があれば、それに一心不乱に取り組む。

 マモンのストレスやイライラは、単純に退屈から来るものなのかもしれない。


「マモン、だいぶ良くなったよ。キミは意外と真面目に取り組むタイプなんだね」

「えぇ、ワタシはハマったらトコトンよ、男もね。こういう時はストレスが無くなって良いわ、もっと良い剣が欲しくなってきたわね」



 

 街に戻りアレクサンドと昼食を食べていると、一人の女が近付いてきた。


「食事が終わってからでいいですわ。外で待っていますので声を掛けてくださる?」

「は? まぁもちろん外には出るからね。分かったわ」


 二人にそれだけ伝え、女は外に出て行った。


「何だ? なかなか美しいレディだったな。ボクに用かな?」

「眼が緑色だったわね、まぁ出れば分かるでしょ」


 食事を終え外に出ると、さっきの女が待っていた。


「何か用かしら?」

「残存魔力を辿ってやっと見つけましたわよ。まさか二人とはね、緑の眼とこの髪色でピンときませんこと?」


 ――髪色?


 ダークブラウンのロングヘアーだ。


「あぁ、こないだの何とかってヤツと同じ髪色だ。名前も忘れたが」

「ヒョンジュンはわたくしの兄。赤髪のあなたが殺したのね? その剣は兄の物ですわ」

「ワタシは貰っただけよ、殺したのはこっちの男」

「正直、兄の死なんてどうでもいいこと。父のラオンからあなた達を探してこいと命じられただけですの。アジトを教えてくださる?」

「アジト? そんなものはない。ボクのホテルに来るかい? キミの様な美しいレディなら大歓迎だよ」


 目の前の女は全く動じない二人に対し、怪訝な表情を向ける。


「……わたくしの部下を父の元に送りましたわ。皆が来るまで、わたくしはあなた達から離れない」

「へぇ、どうぞ好きにしてちょうだい」


 女は一定の距離を置いてついて来る。

 昇化している人族だ、かなりの使い手だろう。


「ねぇアレクサンド、お茶でもしない?」

「あぁ、いいね。キミも一緒にどうだい?」


 アレクサンドが女の方に振り返り声を掛ける。


「……はぁ? わたしは敵ですわよ?」

「いや、ボクは自分の不利益になるヤツや、直接何かをされたりしなければ、相手を敵だとは思わない。しかも、キミは美しいレディだ」

「……変な人ね。わたくしはもちろんいりませんわ。調子の狂う人達……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ