表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/241


「分かった? アナタの中には面白そうなヤツが居るみたいね」

 

 ――オレの中に……魔神が……?


 今も夢に見るあの光景。

 母親の悲鳴だと思っていた。しかし、あれは母親が魔神を封印する叫びだったらしい。


 母ソフィアがユーゴの中で魔神を抑えている。それでたまに夢に出てくるのだろう。

 いや、あれは夢ではなかったという事だ。


 ソフィアの目は青紫色だった。何故忘れてたのだろう。

 そして、ユーゴは人族との子では無いらしい。


 ――オレは龍族と何族との子なんだ。

 

 シュエンの魔力障害は、ユーゴから漏れ出た魔神の魔力によるものらしい。

 

 シュエンは治せる。

 ソフィアも一応は生きている。

 


「ユーゴ……大丈夫かい?」

「あぁ、大丈夫だ。皆には後で話す」


 ユーゴが何者かなど、皆は気にしない。

 彼等の絆はそんなものではない。


「マモン、礼を言うよ」

「良いわよ、これから聞くことに繋がるからね。気持ち良く喋ってちょうだいよ」

「あぁ、知ってることなら話すよ」


 マモンは軽く笑みを浮かべ、ユーゴに質問を投げた。


「アナタの母親は封印術に長けてたみたいね」

「あぁ、そうみたいだな」

「ワタシ達が鬼人シュテンを解放した時、そこには黄と紅の宝玉があったの。シュエンちゃんの話では、リーベン島にはとんでもない化物(バケモノ)がいたそうね」

「ヤマタノオロチの事だな?」

「そう、それを龍王が封印したと」


 ――何が聞きたいんだ。


「その化物を、(すい)の宝玉で封印したんでしょ? 龍族の元の土地にあるなんて嘘ね。かなりの無駄足を運ばされたわ。少し怒ってるのよ? まぁ、いい掘り出し物があったのは事実だけどね」


「……あぁ、嘘だ。オレが持っている」

「え!?」

「ユーゴが持ってるの!?」


 トーマスとエミリーは驚き、ユーゴに目を向けた。


「……仲間も知らなかったようね」


 ユーゴは淡々と言葉を続ける。

 

「オレのこの目は何か分からないが、空間魔法が使えるようになった、その中に入れている。オレは誰とも()()していない。アレクサンドにはこの意味が分かるな?」


 それを聞いたアレクサンドは、片眉を下げて不快な表情を浮かべた。


「……あぁ、キミを殺せば諸共消えるな」

「なるほどね、力ずくで奪うのは無理って事ね」


「……なぜ宝玉を集める?」

「宝玉には強力な封印術式が組み込まれてる。封印術の勉強をしてみたの。宝玉を四つ集めると、封印術式が反転する可能性がある。アナタの中の魔神を復活させる鍵があるとすれば、宝玉以外に考えられないと思わない? アナタを殺しても出てくるかもしれないけど、魔神は霊体みたいだし。封印の術式によっては一緒に消えてしまう可能性もある。しかも宝玉までとなるとアナタは殺せないわ」

 

「……おい、復活させようとしてるのか? どうなるか分かってるのか?」

「面白そうじゃない? ワタシ達より強いヤツだったら喜んで従おうと思ってるわ。その時はアナタ達に宣戦布告ね」


「宝玉を集めた所で、何も起きない可能性もあるぞ?」

「そうね。その時は別の方法を考えるわ。ワタシ達は気が長いの」


 シュエンとソフィアが必死に封印した奴だ。復活などとんでもない。

 シュエンもそれに加担しているという事は、かなり重度の魔力障害だ。シュエンの良心はもう無いと見ていい。


(あお)の宝玉は仙王の空間魔法の中かしらね?」

「さぁな、その可能性が高いんじゃないか? オレは当然知らない。()(あか)はアレクサンドの空間の中だろ?」

「そりゃそうね」

「あぁ、ボクが持っている。もちろん契約は解除してるぞ」

 


 マモンは少し考え、アレクサンドと小声で喋り始めた。

 話を終えると、ユーゴに向き直り口を開いた。


「提案があるわ」

「なんだ」

「そこの二人はワタシ達に恨みがあるのよね? 戦ってあげても良いわよ? 殺されても文句は言わないわ。ワタシ達は半殺しにはしても、殺さないであげる」

「で? こっちが負けたら宝玉を寄越せと?」

「理解が早くて助かるわ」


 ユーゴはトーマスとエミリーの方を向いた。


「私は今すぐにでもあのクズに斬りかかりたいよ。でも、そんな事を勝手に決められる立場じゃない」

「僕も同じ意見だ。その宝玉の価値は知らないけど、勝手に賭けていい代物じゃない事は分かる」


「まぁそうね、相談するといいわ。ワタシ達は魔都のシルヴァニア城にいる、返事はいつでも良いわよ。ワタシはウソが大っ嫌い、ここを攻める気がないのは本当よ」

「分かった……お前らは本当に暇潰しで行動してるんだな……」

「あら、悪い事じゃないでしょ? ワタシ達は寿命が長いの、楽しく生きなきゃ。じゃあね」


 そう言い残して、マモンとアレクサンドは帰って行った。


 


「ユーゴ、平気な顔して嘘つくんだね……空間魔法の契約はしていないなんて」

「あぁ、里長を見習って表情に出さずに嘘をついてみた、上手くいったな」

「そうだよ。里長さん嘘ついてたのね、上手すぎるでしょ。あれは奥さんに相当嘘ついてるよ」


 ――そうかもしれない……。


「よし、皆の所に戻るか」

「あぁ、心配してるだろうな」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ