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弟子達の成長


 ユーゴ達が世話になっている塔の客室に、龍族の幹部が案内された。

 

 今から食事だ。


 円卓にはユーゴ達四人と、里長、メイファ、ヤンガスとそれぞれの直属の部下が一名ずつだ。当然、皆ユーゴとも顔見知りだ。


「ジュリアは仙族の方に行かなくていいのか?」

「あぁ、今アタシはお前らの仲間だ。こっちにいるのが普通だろ?」


 それを聞いてヤンガスが前のめりに口を開いた。

 

「あんたがエミリーの恩人の仙族か! 俺の刀ぁ気に入ってくれたか?」

「あぁ、素晴らしいよあれは。今は刀を振る方が多いくらいだ。ありがとう」

「そりゃ良かった! で? この食いもんはどうやって食べるんだ?」

「あぁ、ナイフとフォークは外側から使います」

「おい、箸はねぇのか! 食いにくくて仕方ねぇ!」


 ――ヤンさん……やっぱりそうなるか……。

 

 メイファはさすがに上品だ。理解して普通に食べている。


「おいヤンガス、食わせてもらってんだ。文句を言っちゃぁいけねぇ。皆黙って食ってんだ」

「そうは言うけどよ親父、こんなもんで刺しても口に入らねぇよ」


 里長の直属の部下はヤンガスの父、シャオウ・リー。里長の昔からの側近との事だ。

 

 皆もヤンガスの様に口には出さないが、不満そうだ。食器の指導が必要だろう。

 


「美味かったが、食った気がせんかったの」

「毎日食べてれば慣れますよ。オレらもそうだった」


 食事を終え、皆で紅茶を飲んでいる。

 

「そうだ、親方。これみてくださいよ」


 トーマスはニーズヘッグの防具を広げた。

 ヤンガスが防具を手に取り、食い入るように眺めている。


「おぉ……こりゃ見事な革だな……いい職人見つけたみてぇだな、素晴らしい出来だ。この金属は何だ?」

「そうでしょ? いい職人紹介して貰えて良かったです。それは仙神国の加工金属です、軽くてかなり丈夫なんです」

「ほぉ……こりゃ俺も欲しいくれぇだ……」


 ヤンガスが感嘆するほどの防具らしい。

 確かに素晴らしい、これ以上は考えられない。


「そうだヤンさん、トーマスがとんでもない守護術を編み出しましたよ!」

「とんでもねぇ守護術だと?」

「はい、守護術に防具の特性を写したんですよ。守護術に薄くヤマタノオロチの鱗が見えてるんです」


「……なんだと? トーマス、やってみろ」

「あぁ、はい」


 トーマスはヤマタノオロチの盾を構えた。


『守護術 堅牢』


「本当だな……」

「トーマス、お主……これは凄いぞ……この様な術は聞いたこともない。能力の名をお主が付けて良いのではないか?」

「あぁ、確実に何らかの特異能力だな……いや、眼の力か。どっちにしろお前ぇ盾士として完成しつつあるな」

「ほんとですか? ありがとうございます!」


 里の皆も知らない程の凄い能力だった。

 ニーズヘッグが放つ災害級の魔法を完璧に防いだ守護術だ、当然だろう。


 ヤンガスが思い出したようにエミリーに話しかけた。

 

「そうだエミリー。頼まれてたもん作ってきたぞ! 注文通り細めに作っといた」

「ありがとうヤンさん! また取りに行こうと思ってたけど、ちょうど良かったよ。お代は?」

「要らねぇよ! 絶対ぇ受け取らねぇからな!」

「いつもすみません……」


 四本の苦無(くない)だ。

 今エミリーは二本の苦無を持っている。


「すっかり苦無使いだなエミリー」

「はい、いい武器を貰いました。ありがとうございます奥様!」

 

「エミリーは足止めの術を苦無に纏わせて、この防具の魔物に突き刺したんですよ」


「……待て、これに苦無を突き刺したのか……?」


 メイファが見たことのない顔で驚いている。

 

「はい! 刺されば動きをとめられるかなって。刺さってよかったです!」

「エミリー、ミモロ山の大蛇にも苦無を貫通させてたもんな」

「あれに貫通させたのか……? おいおい……苦無はそこまでの武器じゃないぞ……エミリー、お前まさか皮膚の弱い部分が視えてるんじゃないか?」

「視えてるというか、分かると言うか……説明が難しいけど……」


 そうエミリーが言うのを聞いて、メイファが難しい顔で考え込んでいる。

 

「……それで分かった。お前が編み出した快癒(かいゆ)だが、私が扱ってもお前程の効果を得られん。お前、然るべき患部に直接術をかけているな?」

「どうなんでしょう……自覚は無いですけど……確かに、奥様から教わった解毒も神経毒には効きにくいって言われてたけど、コカトリスの毒霧に有効でしたね」

「コカトリスの神経毒はアタシ達も苦労したな。五人がかりでやっと倒した上に、三日間寝込んだよ……あれは毒霧の厄介さでSSランクに指定されている。確かにかなり厄介だった」

 

「……そうなのか。あれ、SSだったのか……能力の相性が良かったんだな。エミリーは一瞬で解毒してたよな」

「まぁ、ユーゴが龍眼で早く気付いたってのもあるけど、すぐに動けるまでに回復してくれてたね」


「エミリー、お前は何らかの眼の力を開眼してるな。治療術師としてかなり相性のいい能力だ。しかも、苦無等の中距離攻撃とも相性がいい」

「私、強くなってるんですね!」

「いや……強くなりすぎているぞ……」


 ここ最近エミリーが術や攻撃を外したのを見たことがない。 

 師匠達がベタ褒めだ。皆が特殊能力や眼の力を得ている。

 三人はかなり強くなっている。

 

  

 ◇◇◇



「そうだ、ここは男女の風呂っていうのが、無いんですよ。混浴なんです」

「なんだと……? 大丈夫なのか……?」

「私は構わんが、見られてどうなる訳でもない」


 メイファはジュリアタイプらしい。




 皆でゾロゾロと風呂へと向かう。


「なるほど、ここで身体を洗ってから露天風呂か」


 里長は無駄のない身体をしている。しなやかな筋肉だ。


 ヤンガスは筋骨隆々だ。

 いつも槌を打っている右腕が異常発達している。


 メイファは隠そうともしない。

 人族で言うところの40代くらいだが、身体に張りがあって美しい。メイファの娘も綺麗だ。


 男たちがソワソワしている。


「おい、何だこれは。女達が堂々としすぎて儂らはどこを見れば良い……」

「まぁ、眼福ではあるけどよ……」


「次からは時間をずらしましょうか……」


 龍族の皆との王都生活が始まった。

 

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