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王都の厳戒態勢


 冬が終わり、春が来た。

 ユーゴ達四人は二人の王に呼び出されている。


「珍しいな、なんだろう」

「そろそろ出ていけとか……?」

「とりあえず、レオナードの所に来いってことだ」


 王の間に向かう。

 扉を開けると、玉座の隣の部屋に案内された。二人は紅茶をすすっている。しかし、その表情は固い。


「あぁ、来たね。うちの(ローシー)住み心地(ゴコチスミ)はどうだい?」

「おはようございます。すみませんレオナード王、長いこと居座ってしまって……」

「いや、いいよ全然! うちに来いって言ったのはちゃんボクだからね」


「で、何か用があるんだろ?」

「まぁ、とりあえず座ってよ」


 皆の前に紅茶が置かれるのを確認した後、レオナード王が静かに口を開いた。


「鬼国ソウジャが落ちたよ」

「え……?」

「例の魔人達が、鬼王イバラキを討った」

「たったの三人でですか……?」

「いや、鬼人の封印を解いたらしい」


 レオナード王が普通に喋っている。

 それだけで事の重大さが分かるほどに部屋の空気は張り詰めている。


「鬼国は魔人達に(くだ)った。残った鬼族は魔人達の傘下にあるってことだ」

「これから奴らは、本格的に動き始める可能性があるね。みんながウチの軍隊を鍛えてくれてて良かったょ」

「そうだね、部隊長を中心に相当戦力が上がっているよ。練気術は人族の戦闘を変えたね。今じゃ普通に仙術を使っている。もちろん、ちゃんボク達も習得したよ」


 ドアが開いた。

 入って来た人物の派手な赤髪に目がいった。


「あれ? モレクさん?」

「失礼するわね」

「あぁ、ウチが呼んだんだょ。モレクは対魔族の戦闘指南をしてくれてるょ」

「えぇ、マモンを止めたいの。その為なら協力は惜しまないわ」


 モレクにとって、マモンは我が子のような存在だ。協力を願い出ていたらしい。


「ラファさんも呼んでいるよ。数日すれば着くだろう。龍族にもラファさんから連絡してもらった」


 里長の所にも連絡が行っているらしい。精鋭をよこすだろう。持って行った通信機が早速役に立った。

 

「マモンはこの勢いで魔都シルヴァニアも落とす可能性があるわね。母親である魔王リリスには憎悪の念を抱いてるから」

「そうなれば、相当な戦力になりますね。素直に従えばの話ですけど」

「リリスは強いけど、どうしようもない暗君よ。マモンがそれを討ったら皆が従う可能性は高いわね」 


「レオナード、アタシ達はどうすればいい?」

「そうだな、有事の際には手を貸してほしいな」

「あぁ、もちろんだ」

「あのニーズヘッグを倒すようなパーティーがいると、ウチらも心強いょ」

 

 この日から、王都には厳戒態勢が敷かれた。



 ◇◇◇

 

  

 五日後、仙王と仙族の精鋭が到着した。

 

 その次の日には、里長率いる龍族の精鋭が到着した。


「里長自ら来られたんですね」

「うむ、里の守りはカイエンとコウエン達で事足りる。それ程までに仙術を取り入れた儂らは強くなった」


「奥様! 長旅お疲れ様でした!」

「あぁ、久しぶりに島を出たよ」

「おぅ、トーマス。久しぶりじゃねぇか!」

「親方も! お久しぶりです!」


  

 二つの城の間にあるホールの小部屋。いや、小部屋と言っても大ホールと比べればの話だ。王都の幹部と仙族、龍族が集まる中、ユーゴ達四人も招かれた。

  

「まず、龍王よ、遠路はるばる来てもらって悪かった。礼を言う」

「何を言う、そちらの有事の際には手を貸すという約束だ」


 仙王は里長に一礼し、話を始めた。

 

「皆に集まってもらったのは、例の魔人達の動向について知ってもらう為だ。奴らは鬼国を落とした。その勢いで、今は魔都シルヴァニアを落とそうとしている」

「お主はそれが()()()のであったな」

「あぁ、そうだ。この中でそれを知っている者は僅かだが、この際言うても構わんだろう。我は『千里眼(せんりがん)』と呼んでいる眼の力がある。同族の青い目を通してその視界を視る事ができる」


 ――どういう事……?

 

 周りを見渡すと、ユーゴと同じ反応を見せる者が多かった。この中の半分以上は知らない事らしい。


「説明が必要か? 魔人の元にはアレクサンドがいる。我は、奴の視界を共有して視る事ができる。アレクサンドはこの事を知らん。奴らは今魔都シルヴァニアの方面に進んでいる。声などは聞くことが出来んのが残念ではあるがな」


 という事は、ジュリアやエミリーの視界も視る事ができるのだろう。仙王はまるで自分で見たように話すことがあるが、話を聞き納得した。

 ユーゴ達が仙王初めて会った時、何かを言いかけてやめた事があったが、あれは恐らくアレクサンド達の居場所だろう。三人はまだ敵わないと口を噤んだに違いない。ユーゴは納得した。


「魔都を落として何をしようとしているのかは分からん。ただ、ここに攻め入る可能性がある故、皆に集まってもらった」

「ラファちゃん、ユーゴ達の指導でウチの軍隊は相当強くなったょ。そして、数ではウチが圧倒してる。人族までが仙術を駆使して戦うからね」

「そうか、軍の士気も上げておかねばな。また何かあればすぐに連絡する。それまではこの城でゆっくりしてくれ」


 仙王からの現状報告が終わり、解散した。


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