ランクアップ
「ほらよ、Aランクおめでとう。報酬は90万ブールだ。まさか三体も倒してくるとはな」
「ありがとうございます!」
もう少し鍛えればSランクもすぐだろう。
ランクアップ試験は終わった。
ボロボロのマシューをエミリーが快癒で全快させる。
「おぉ……傷が綺麗に消えた……すごいね……」
体の傷は綺麗に治ったが、防具の傷を直すことは出来ない。ボロボロの革鎧を着たままの足で武器屋の方面に歩き始めた。
「レトルコメルスでは二級品の上位で120万、下位で60万だったな」
「上位は無理か……」
主人に聞いてみよう。
「すみません、刀は基本的にリーベン島の品ですか?」
「いや、そんな事はないよ。刀の需要はあるからね、王都で作られた刀は比較的安価だね」
確かに、同じ等級でも開きがある。
「この120万前後の刀がリーベン島の品ですか?」
「そうだね。同じ二級品上位でも、王都の品は90万前後で出している」
見比べて練気を纏ってみる。
全く違う、王都製のものは刀じゃない。別の武器と言っていい。
「エミリー、王都の刀を持ってみてくれ」
「ん? ……あぁ、こんなの刀じゃないよ。これはダメだ」
「そうだよな。マシュー、高くてもリーベン島の刀を買った方が良い。全くの別物だ」
「じゃ、二級品下位の63万かな?」
「いや、オレに選ばせてくれ」
――これがいい。明らかに輝きが違う。
練気の乗りもいい。
「これはヤンガス・リー作ですね?」
「そうだね。刻印も見ずに良く分かったね」
二級品の上位で123万ブールだ。
「オレはこの刀をマシューに持たせたい。足りない分はオレかエミリーが出す。ユニコーン一体分だ。あとで返してくれたらいい。それでいいなエミリー?」
「うん、もちろんだよ! 何なら私が全部出してもいいけど……」
「いや、それはダメだ。必ず返す、貸してくれるかい?」
「うん、いいよ! ユーゴ、私が出す。よく会うのは私だからね」
「ありがとう!」
マシューは二級品の所持者になった。
それに見合う剣士になるはずだ。
「ユーゴ君、エミリー、今日はありがとう! もし良かったらディナーに行かないか? ごちそうさせて欲しい」
「あぁ、ごめんよマシュー。オレ今から約束があるんだよ……お礼はエミリーにしてやってくれ」
「そうか……それは残念だね……またご飯行こうよ! エミリーは大丈夫?」
「え!? あぁ……私は大丈夫だよ!」
二人と別れた。
用事など無いのだが、エミリーの為に嘘をついた。
さて、帰ろう。
何処かで夕食を済ませて帰ろうかと思ったが、二人と鉢合わせる可能性を考え真っ直ぐに帰ることにした。
――ん? あれは。
「リナさん!」
「あ……ユーゴ様!」
「今日は休みですか?」
「はい、お休みを頂いたのでショッピングをしてました」
――メイド姿はもちろんいいけど、私服も可愛いなぁ……。
「朝見なかったもんね。今から帰るんですか?」
「はい、何か食べて帰ろうかなぁって思ってたんですが、決められなくて……」
「リナさんはお酒は飲むの?」
「はい、そこまで強くはありませんけど……」
「じゃ、オレ達の行きつけに行かない?」
「本当ですか? 行ってみたいです!」
もちろん冒険野郎だ。
「リナさん何飲む?」
「じゃあ、ビールを頂きましょうかね」
ビールを二つ頼む。
『カンパーイ!』
二人はジョッキを傾け、勢い良く喉を鳴らす。リナはジョッキ半分以上を一気に飲んだ。意外に酒は強そうだ。
「はぁ……美味しい」
「いやぁ、ちょうどリナさんがいて良かった」
「私もです! 一人でお酒飲めないもので……」
「オレも、みんなとじゃないと行かないかなぁ……」
胸元にチラリと見覚えのある物が見えた。
「あ、ペンダント着けてくれてるんだ」
「あぁ、はい。すっごく気に入ってるんです。大事にしますね!」
「嬉しいなぁ。プレゼントってこっちまで嬉しくなるね」
リナとお酒を楽しんだ。
リナは明るく気さくな女性だ。メイドという仕事柄、気も利く。
「いゃあ、食った飲んだ……」
「本当ですね……久しぶりにこんなに飲みました。こんなに笑ったの久しぶりです。ありがとうございました!」
「うん、オレも楽しかったです。また行かない?」
「本当ですか!? また是非!」
「じゃ、おやすみなさい! 今日はお風呂で会わないように直ぐに済ませるよ……」
「いえ、私は全然大丈夫ですが……やっぱり恥ずかしいですね……」
――楽しかったなぁ。またエマとデートしに行かないとな、忘れられてしまう……。
ほろ酔いのままオーベルジュ城へ。
風呂を軽く済ませ、床に就いた。
 




