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マシューの成長


 二週間後。

 ユーゴ達はトーマスの部屋に呼ばれている。


「みんな、見てよ。凄いのが出来たよ」


 テーブルに革鎧、篭手、脛当てが並んでいる。ニーズヘッグの革の防具だ。

 ダークグレーの龍鱗が美しい。


「カッコいいなこれ!」

「わぁ! すっごくいいよ!」

「おぉ、仙神国の金属を使ってるんだな。やっとアタシも皆とお揃いか!」


「なかなかいいでしょ? 職人さんが凄くセンスのいい人で、デザインにまでこだわってくれたんだ。柔らかく(なめ)したから動きやすいけど、驚くほど丈夫なんだ。文句なしの特級品だよ!」


 持ってみると驚く程に軽い。伸縮性もあり、窮屈さがないのもいい。胸辺りは革が重なる様に造形され、動きにくさがない。肩まで守られた素晴らしい革鎧だ。

 篭手で肘から手の甲まで覆い、脛当ては膝まで守られているが全く関節の動きを邪魔しない。 


「篭手には魔晶石だ。このサイズでこれ以上の魔晶石は無いだろうね」

「いやぁ、気に入った。凄いぞこれは」

「トーマスの盾はそのまま?」


 トーマスは、ヤンガスからヤマタノオロチの革盾を貰っている。


「あぁ、ヤマタノオロチもニーズヘッグも一長一短あるんだよね。だから作った。その時に合わせて使い分けるよ」


 装備はこれで固まった。これ以上は無いだろう。

 

「トーマス、ありがとな! コカトリスの防具も一応持っとくかな」

「いやいや、防具作成凄く楽しかったよ。いずれ親方に弟子入りしたいな」


「無性に動きたくなってきたな!」

「そうだね、依頼こなしに行こうよ!」


 四人はSSランクの依頼を受け、魔物の討伐に向かった。


 守護術が変わった。

 強化術はもちろん、防具にも練気を纏い防御力を強化しているが練気の乗りが違う。

 使っていくうちに、更に馴染んでくるだろう。



 ◇◇◇



 更に四ヶ月が経った。

 すっかり冬だ。


 ユーゴはエミリーの頼みで、マシューの修行に付き合うことになった。

 二人は更に仲良くなり、たまに遊びに行っているようだ。


「うぅ……寒い……ジャケットが無いときついな。エミリーの脚見てるだけで寒い」

「ミオンさんのストッキング、すっごく温かいんだよ! すごく丈夫だからホントに助かるんだ」


 シルクシャツの上に厚手の防寒着を羽織っている。防具は付けていないが、完全防備でここまで寒いという事は、今年の冬はかなり厳しいらしい。王都の冬が特別厳しいという話も聞かない。

 エミリーは年中ショートパンツだ。冬はギュウキの糸で作られたストッキングで防寒している。

 

 マシューとは南のギルドで待ち合わせしているらしい。入口扉を押し開けて、エミリーが中を見渡す。


「あ、いた。マシュー!」

「あ! エミリーとユーゴ君! わざわざ来てもらってありがとう」

「いいよいいよ、オレに出来ることなら何なりと」


 ギルドに入る。

 冷えた体が徐々に温められていくのが分かる。

 

「で? 今日は何するんだ?」

「剣に練気を纏える様になったんだ!」

「ほー! 四ヶ月ちょいだっけ? 大したもんだな」

「それで、Aランクの試験がてらユーゴにアドバイスを貰おうと思ってね!」

「そうか、練気を纏えたらAランクは問題ないだろうな。仙術も修得できるだろうし」


 Aランクだとユニコーンあたりが良いだろう。討伐依頼書を持ってカウンターへ。いつもの初老の男に声を掛ける。


「またあんたらか。ワイバーン絶滅させる気か? まぁそうしてくれれば有難いが」

「いや、今日はオレ達は付き添いだよ。こっちのマシューのランクアップ試験だ」

「そうそう、私達は手を出さないよ!」

「あぁ、そうか、あんたらが教えるなら強くなるわな。頑張ってくれ」

 


 南門から出て、森に向かう。


「少し遠いな、とりあえずオレにつかまってくれ」


 マシューを背中に乗せ飛び立った。


「速ーっ! すごいな二人共!」

「帰りは飛べるようになるかもね!」


 森にはすぐについた。


「さすが……二人はレベルが違うね……」

「いや、練気を剣に纏えるようになったら後は早い。早速見せてくれるか?」

「うん!」


 マシューは両手剣を正面に構え、練気を剣にゆっくりと注いだ。


「いいね。流石に斬撃を飛ばすのは無理か?」

「うん、剣風はまだ教えてないね」

「魔法剣は放てるんだろ? 同じ要領でやってみようか」

「魔法剣と同じ要領か……」


『剣技 剣風』


 剣風が前方の木を斬った。


「飛んだ!」

「うん、センスがいいな。マシューは回復術や守護術は使えるのか?」

「うん、基礎はエミリーに教わったんだ」

「そうか、基礎でも十分だろ」

「じゃ、次は仙術だね!」


 仙術の呼吸法を教えた。

 マシューは魔法が得意だ、問題なく自然エネルギーを体内に取り込んだ。


「よし、練気を練る要領で自然エネルギーを練気に練り込むんだ。それを魔力と共に放つ」


 マシューは風属性の仙術を放った。


「おぉ、魔法とは威力が全然違うね……」

「それを浮力に使えば浮遊術だ」

「なるほど」


 マシューはエミリーから回復術と補助術、守護術の基礎を叩き込まれている。錬気術を剣に纏えるようになった事で、その基礎は人族のレベルではなくなっているだろう。


「よし、サクッとユニコーンを倒して帰るか!」


 マシューは自身に剛、堅、速の補助術をかけた。


「マシューはもう錬気の扱いは問題ないな。それはもう補助術じゃない、強化術だ。更に修練が必要なレベルではあるけどな」

「うん、頑張るよ!」


 前方にはユニコーンだ。

 風魔法が来る、どうする。


 自分の守護術を過信したマシューは守護術を突破され傷を負った。ただ、寸前で上手く致命傷は避けている。


 その後はユニコーンの風魔法を傷つきながらも巧みに避け、剣風も交えながら近づいている。


『剣技 撫斬(なでぎ)り!』


 間合いに入ると、強く地を蹴りユニコーンを袈裟斬りにした。


「お見事!」

「やった!」

「いい判断だったよ!」

 

「こいつを楽に倒せればSランク相当だな」

「僕もSランクを目指せるんだ……でも、こんなにボロボロになってちゃダメだね……頑張るよ!」


 角と体皮をマシューが採取する。

 倒した当日のみにはなるが、肉も食用としていい値で売れる。ユーゴは口を出すだけだ、エミリーにその知識は無い。マシューもある程度はギルドから手解きを受けており、手つきはなかなかだ。


「マシューの剣は思い入れのある品なのか?」

「いや、Cランク試験の報酬で買った四級品だよ」

「そうか、両手剣にこだわりがあるのか? 練気術を修得したなら刀をおすすめするけど」

「ユーゴ君もエミリーも刀だよね、いいなぁとは思ってるけど、流石に買えないよ……」

 

「あとユニコーンを二体も狩れば二級品の下位くらいなら買えるぞ?」

「あ、そっか!」

「オレの刀を使ってみるといい」

「ホントに!? ありがとう!」


 春雪を渡した。武器を貸すのはランクアップ試験の規定違反にはならない。

 強化術をかけ直して、マシューは苦戦しつつも二体目、三体目のユニコーンを斬った。休憩を入れつつとはいえ、三体も相手にすればボロボロだ。

 

 ユーゴ達があまりにも軽々と倒しているが、ユニコーンはAランクの魔物だ、本来弱い魔物ではない。それを一人で倒すマシューは相当強くなっている。やはり練気術は人族との相性がいい戦闘法だ。


 マシューは自分で治療術を施した。


「ハァ……ハァ……凄く斬れるね……ますます刀が欲しくなった」

「相当強くなったねマシュー!」

「あぁ、アタッカーにしては守護術も治療術も良いレベルだ。もっと修練したら確実にSランクだな」


 これはお世辞ではない。

 魔法と魔法剣の知識と技術があったとはいえ、よく四ヶ月程でここまで成長出来たものだ。毎日真面目に修練したに違いない。

 龍族がまず習得する基礎の基礎ではあるが、仙術の呼吸まで取り入れたマシューはもう人族のレベルじゃない。


「よし、マシューも浮遊術で帰るか!」

「うん!」


 ある程度のスピードでついて来ている。

 あとはエミリーの指導でいい剣士になれるはずだ。


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