表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
104/241

エミリーの恋


 ――マシュー君が隣に来てからすごくドキドキする……なんだろうこれ。


「エミリーちゃんはいくつなの? あ……女性に歳を聞くのは失礼かな……僕まだ慣れてなくて」

「え!? あ……いや、大丈夫だよ。19歳……」

「そうなんだ、僕とそんなに変わらないね。僕は20歳だ、エミリーちゃんの一つ上だね」


 ――笑顔がすごくいい……なにこれ、すごく胸がキュッてなる……前にジュリアもそんな事言ってたな……。


「マ……マシュー君は……あっ、マシュー君って呼んだらいいのかな? さっき、男か女か分からないって……」

「あぁ、身体的な性は男だからね、普通はそう呼ばれるね。でも、好きなように呼んでくれたらいい。歳は変わらないんだ、マシューでいいよ」

「じゃぁ……エミリーって呼んでくれる……? マ……マシュー」

「あぁ、そう呼ばせてもらうよ、エミリー」


 ――ハァッ! 何この気持ち!


「どうしたエミリー。具合悪いのか? いつもの元気がないぞ?」

「えっ? ごめん、何か気に障る事言っちゃったかな……?」

「いやいやいや! 私は元気だよ! 何言ってんのさジュリア!」

「なら良かった……変なこと言っちゃったのかと思った。元気に楽しんでくれたら嬉しいな!」


 ――ダメだ……まともに顔を見れない……。


 エミリーはマシューを直視出来ず反対側を向いた。


 ――ん……? ユーゴがこっち見てニヤニヤしてる……何あの腹立つ顔。


「ねぇ、エミリー達はすごい冒険者なんでしょ? 僕も小さい頃は冒険者に憧れてたんだ」

「そうなんだ……私はジュリアに色々教えてもらって、自然と冒険者になってたな……」

「剣と魔法は小さい頃から教えてもらってたんだけど、性自認で悩み始めてから内向的になっちゃって……ここで働き始めてから、やっと昔みたいに喋れるようになったんだ」


 ――そっか……すごく悩んでたんだね……。

 

「冒険者になりたいの……?」

「今からじゃ遅すぎるかなぁ……」

「そっ、そんな事ないよ! 遅すぎるなんてことはないよ」

「一応、剣は振り続けてるし、魔法も反復して練習してる。でも、師匠とは疎遠になっちゃったな……」

「じゃ……私で良ければ……時間のある時教えるよ……?」

「ホントに!? やった!」


 ――まともに顔も見れないのに教えられるかな……。


「今日初めて会ったのに、約束をするのは図々しいかな……?」

「いや! そんな事ないよ!」

「ホントに? じゃぁ、明後日の朝は空いてる?」

「うん、大丈夫だよ……」

「じゃ明後日の朝、南門前で待ち合わせでどう?」

「うん、わかったよ……」

「やった! 剣の手入れしとかないと!」


 ――約束しちゃった……楽しみ半分、あと半分は……何なんだろ……。

 


 

「よし、今日は帰ろうか!」

「あらそう? 楽しい時間はあっという間ね」


 ――え!? もう帰るの!?


「ん? エミリーどうした?」

「え!? い……いや、何でもないよ? 帰ろうか」



「じゃ、モレクさんありがとう。また来るよ」

「みんな、またなー!」


『ありがとうございましたぁ〜!』


 皆で外に出て城に向かって歩き始めた。

  

「エミリー、今日はなんか調子悪そうだったな。大丈夫か?」

「え!? そんな事無いって!」

「いや、オレには楽しそうに見えたけどな!」

「うん! たっ…… 楽しかったよ!」


 ――ジュリアにはいつもと違うように見えたのか。そうだよね……私もそう思うし。


 話しながら歩いてるとすぐに城に着いた。


「いい夜だったね。よく眠れそうだ」

「うん、当分ゆっくりするか! マモン達の情報は無いしな。魔都に居ると思っていいだろ」

「そうだね、王都の斥候とかがいるんでしょ? その情報を待つのが一番だね。レオナード王に情報もらうように頼んでみるのがいいかな」


「じゃ、みんな、おやすみ!」

「あぁ、おやすみ!」


(エミリー、明後日頑張れよ)

「え!?」

(あぁ、うん……)


 ――ユーゴが聞いてたのか。

 頑張る? 何を? まぁいっか。


 四人はオーベルジュ城に戻り、それぞれの部屋に帰って行った。

 

 

 ◇◇◇


 

 あれから二日後の朝。


 皆で朝食を食べている。

 エミリーはマシューに剣と魔法を教える約束をしてる。

 

 ――眠い……緊張で眠れなかった。


 今日も元気なジュリアが口を開いた。


「皆、今日は何するんだ?」

「僕は教えてもらった防具職人の所に行くよ。昨日皆に採寸させてもらったからね。いいの造るから期待しててよ」

「そりゃ楽しみだな。エミリーは何かあるのか?」

「え!? いや……うん、ちょっと外にね」

「そうか、ついて行こうか? アタシ用事ないんだよ」

「いやっ! ジュリア! オレとギルドの依頼を手伝ってくれないか?」

「ん? じゃあ、ユーゴを手伝うか。悪いなエミリー」

「いや……大丈夫だよ」


 ――あぁ、ビックリした。いや……何で隠したんだろ私……。


 エミリーは部屋に戻り、ベッドに並べた服を眺めている。

 

 ――今から剣と魔法を教えるんだもんな。可愛いワンピースで行ったらおかしいよね……。


 いつものシルクシャツに袖を通した。

 冬も近い、防寒する程でもないがストッキングを履き込んだ。


 服を選ぶのに時間を食い、いい時間になっている。南門へ向かった。

 

「あ、エミリー! おはよう!」

「おはよう、マシュー」


 ――笑顔が眩しい……。カッコいいとはまた違う。ううん! カッコいいんだよ。それだけじゃない、じゃないとこんなに緊張しない。


 エミリーの胸は二日前よりときめいている。

 顔が紅潮しているのを感じる。


 ――多分……私、マシューの事が好きになっちゃったんだ……普通に喋れないと、顔も見れずにモジモジしてたら嫌われちゃう……いつも通りにしなきゃ。


「じゃ、いこっか!」

「うん、お願いします!」


 しかし、目を見ることは出来ない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ