祝勝会
王都に着いた、王城へ行こう。
「どっちの王の所に行けばいいんだ?」
「レオナードの城に世話になってるしな。そっちに行くか」
オーベルジュの城に向かった。
もう、門番は顔パスだ。
歩き慣れた城内を歩いて進む。
王の間に着いた。
「レオナード! ニーズヘッグ仕留めてきたぞ!」
「え……? マジで……?」
本当に行くとは思わなかったといった表情だ。
「わ……分かったよ……シャルロットと部下を呼ぶ」
レオナード王の指示で、部下の一人が部屋から出て行った。
「なぁ、レオナード。アタシ、敵の動きの先が視えたんだよ。まだ完璧じゃないんだけどな。そんな眼の力知らないか?」
「あぁ、それは多分『予見眼』だね。大昔に開眼した人が居たな」
「ほー、そういう能力者が居たのか。鍛えよう」
ユーゴの持つ龍眼の、先を視る能力を特化させた様な能力。剣士として相性がいい。
少しすると、女王と部下が小走りで部屋に入って来た。
「本当にあれを倒したのね……?」
「あぁ、死ぬかと思ったぞ」
戦利品をそれぞれの空間から取り出し、提出した。
「僕達の防具を作りたいので、修理用と今後の事を考えて体皮をかなり多めに頂きますね。あとは、小さい方の魔晶石を頂きます。この魔晶石はフェンリルの物です。こちらを買い取ってください」
「かしこまりました」
女王の部下は、未知の素材を前に興奮気味だ。
「シャルロット、このでっかい魔晶石はアタシ達に使い道あるのか?」
「魔族が杖に使ってたのは見たことあるょ。でも、ジュリジュリ達は杖使わないでしょ? なら使い道は無いかな。これだけでっかい魔晶石なら、この城の十年分くらいの生活魔力をまかなえそうだね。ウチらの城で買い取りたいくらいだょ」
「そうか。じゃ、売るよ」
王の部下が計算を始めた。
「端数は繰り上げましょう。全て合わせまして、3600万ブールでございます」
「3600万!?」
「小さい魔晶石の分と、体皮分の減額でございますね。本来なら4000万です」
――凄いな……。
「女性二人は手渡しでお願いします。後は振込で」
「では、お一人900万ブールですね。ランクアップの処理を致しますので、カードをお預かりしますね」
四人がカードを手渡すと、女王の部下は何やら板状の物の上にカードを置き、処理を始めた。
「いやぁ……ゴイスーだねホント」
「レオナード王、この体皮の加工と防具の作成をしたいのですが、王都で一番の防具職人を紹介して頂けませんか? 僕のこだわりを一緒に作って貰いたい」
「分かったよ。地図を書かせよう。連絡もしておく」
「ありがとうございます!」
カードが帰ってきた。
SSSランクに昇級だ。
「やったー!」
「今日は昇級祝いだよ!」
冒険者として最高ランクに達した。
四人は強い、それは間違いない。
◇◇◇
風呂に入って汗を流し、着替えて準備をする。
王都に来てから自由な時間も増えた。
四人で遊ぶことも多くなり、ユーゴとトーマスもオシャレをした方がいいという事で一緒に選んでもらった。なかなか気に入っている。
私服のズボンもやはりデニムがいい。
「祝いはやっぱり冒険野郎でしょ!」
当然満場一致だ。
冒険野郎に直行した。
「SSSランク! カンパーイ!」
『カンパーイ!』
ビールジョッキを傾け、喉を鳴らしながら一気に飲み干す。
美味い、勝利の美酒だ。
「まさかSSSがあるなんてな……他にもヤバイ奴が世界中にいるんだろうな」
「アタシの剣技はまだまだだ。修行が必要だな」
「いや、ジュリアも時間をかけて練気を纏えてたら、十分通用したはずだ。オレが良いとこ貰っただけだ。ジュリアとトーマスが相手してくれてたから、オレの剣技が生きた。これが二枚アタッカーパーティのいいとこだよな」
ジュリアは一度俯くと、神妙な面持ちで顔を上げた。
「……アタシ、ユーゴに弟子入りするよ」
「必要ねーよ! まぁ、お互い高め合おう。それよりトーマス! なんだよあの守護術!」
「いやぁ、常々守護術に防具の特性を写すことは出来ないかって考えてはいたんだよ。まさかあんなにいい場面で出来上がるとはね。上手くいって良かったよ」
「でも、一番はエミリーだよ。苦無で途絶を突き刺すとはね。快癒には助けられたし、今日のMVPだよ」
「そうだとんでもない技編み出したな。あれを止めれたら何でも止めれるぞ」
「うん! ずっと温めてたんだ! 刺さって良かった……」
「オレ達は強い、それが今日証明された!」
酒が美味い。
今日は遅くまで楽しもう。
「次はどこ行く?」
「モレクさんのとこは?」
「あぁ、いいねぇ。そうしよう」
南の繁華街へ向かって歩き、路地に入る。
モレクと合うのも魔法の圧縮を教わって以来だ。
ショーパブ・リバティ。
扉を開くと、今日も賑やかな音楽に乗せてショーが行われている。
「あ、いらっしゃいみんな!」
「久しぶり!」
「ママ〜! ユーゴ君達が来たわよ〜!」
奥からモレクが出てきた。
今日も派手な赤髪に負けない派手なメイクが決まっている。
「あら、珍しいわね四人とも」
「いい事があったんでね。飲ませてよモレクさん」
「何があったのか聞かないとね、うちで良ければ楽しんでってちょうだい 」
ステージはポールダンスショーで賑わっている。
手慣れた手つきでモレクが水割りを作り、ゆーの達の前に並べた。
「乾杯!」
ユーゴ達四人の前にはモレクを含めて三人。
七人で水割りを高く掲げた。
「で? どんないいことがあったの?」
「あぁ、ニーズヘッグを討伐して、SSSに昇級したんだよ」
「え……? あれを倒したの……? 四人で?」
「あぁ、死にかけたよホント」
「凄いわね……SSSなんて世界に数えるくらいって聞くわよ? でもあなた達ならねぇ。不思議じゃないわ」
談笑していると、化粧も女装もしてない普通の男性が席の前に立ち止まった。
「いらっしゃいませ。僕もご一緒しても宜しいですか?」
「あぁ、紹介するわね。マシューよ」
「初めまして、マシューです。よろしくお願いします」
マシューと呼ばれた男性は一礼して、端のエミリーの横に座った。
「マシューは性自認が無いの」
「はい、身体は男ってのは分かってるんですけどね。男や女ってのがどうもしっくり来なくて。僕はセクシャリティが分からないし、性的指向も分からない。悩んでたらママがここで働かせてくれたんです。ここには色んな人が働いてるし、色んな人が来るから」
自分の性が分からない。
前にモレクが言っていたのを思い出した。
「ごめんなさい。しんみりさせちゃいましたね。普通に接してくれたら嬉しいな!」
「あぁ、飲もうマシュー! アタシはジュリアだ!」
「私は……エミリー」
――ん……?
「うん、ありがとう。僕もお酒頂くね。じゃ、お隣のエミリーちゃん。乾杯」
「あっ……うん、乾杯……」
――んん〜?
エミリーが顔を赤らめて俯いている。
――これはもしや……?