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軍事演習


 風呂から上がり部屋でゆっくりしていると、ドアをノックされた。


 コンコン


「ユーゴ様、お食事のお時間です」

「あぁ、リナさんありがとう。そうだ。これ、いつもお世話になってるから」


 レトルコメルスで綺麗な宝石のペンダントを買ってきた。無難に一番人気の宝石を選んだ。


「え!? こんな高価なもの頂けません!」

「いいよいいよ、いつも良くしてくれてるから。お休みの日にでも付けてみてください」

「本当ですか……お返ししたらユーゴ様に恥をかかせてしまいますね……ありがとうございます! 大切にしますね!」


 リナはペンダントを受け取り、深々と礼をして下がっていった。

 ペンダントと言えば、エマのベルフォールのペンダントの片割れはユーゴがまだ付けている。割と気に入っている。エマとお揃いというのも良い。


 夕飯を頂きに行こう。

 

 

 皆は既に円卓を囲んでいた。


「では、いただきます!」


 次々とコース料理が運ばれてくる。

 今日もリナは笑顔を忘れず、テキパキと仕事をこなしている。


 難解な料理にも慣れてきた。騒いで酒を飲むだけが食事ではない。

 

 とは言うものの、少し物足りない。

 部屋でゆっくりしよう。



  

 明日から軍事演習まで、あまり体を動かさないな。今日も移動しただけだ。

 寝るには早すぎる。城の外に出て、魔法でも放って魔力を消費しようと思い立った。


 門を通るまでもない。部屋の窓からそのまま飛び出て西門を抜け、山脈に連なる山の麓まで全力で飛んだ。

 山肌に向け純粋な魔力で魔法を放ち続けた。

 

 ――ふぅ……だいぶ魔力を消費したな。

 

 ユーゴは魔力が多すぎる。昔からのシュエンの教えもあるが、消費しないと落ち着かない。


 いい汗もかいた、風呂入ったのは昼だった。二回目の風呂に入ろう。



 脱衣所に着いた。


 ――あら、一人入ってるな。お客さんがいるのか。


 シャワーで汗を流し、露天風呂に向かう。湯けむりの上の星空が美しい。この時間に入る風呂も良い。

 一人脚を浸けて縁に座っている。


 ユーゴが露天風呂に浸かると、先客と目が合った。


「え、リナさん……?」

「あ、ユーゴ様……」


 思いきりリナの裸を見てしまった。急いで目を逸らす。リナも急いでタオルで胸を隠した。


 ――なんと美しい……これ以上の直視はマズい……。


「すみません、もう皆様お風呂を済まされたと思い……」

「いや、ごめんなさい。少し外で汗を流してきたので……」


 ――気まずい……。


「いつもこの風呂に入ってるんですか?」

「はい、皆様のお世話をさせていただくのに、近い部屋に居たほうがいいので。本来の部屋は別の塔です」

「なんかすみません……オレ達のせいで……」

「とんでもないです! 皆様良くしてくださるので、本当に有り難いんです。ユーゴ様に至っては……プレゼントまで……」 


 リナも湯に浸かり、会話を続けた。


「リナさんはここに住み込みで働いてるんですね」

「はい、ここのメイドのほとんどは住み込みです。私はゴルドホークの出身なので、住み込みは有り難いです」

「え、そうなんですか! オレもゴルドホーク出身です。ジュリア以外の三人は、ゴルドホークで出会って旅に出たんですよ」

「そうなんですね! 懐かしいなぁ。すぐに帰れる距離じゃないですからね……」

「だったら混浴の文化は無いですよね……」

「そうですね、裸を見られてドキドキしてます……恥ずかしくて逃げるのも失礼ですし……」


 まさかの同郷だった。

 街道が整備されているとはいえ、町を移動するのは大変だ。普通は集団で護衛にお金を払って移動するようだ。


「では、私はお先に上がりますね。おやすみなさい、ユーゴ様。ペンダント本当にありがとうございました、凄く嬉しいです」

「あぁ、おやすみなさい。また明日ね、リナさん」


 綺麗なお尻を眺めて見送る。

 今更ユーゴの股間がムクムクと元気になっている。


 ――少し浸かっておかないと……。

 


 部屋に戻るといい時間になっていた。 

 軍事演習までゆっくりしよう。



 ◇◇◇

 

 

 数日後の午後。

 

 軍事演習の為、北門から少し離れた演習場にいる。

 広い演習場に途轍もない数の兵士が整列している。最前列はロンが憧れる騎士団だ。


「みんな! 今日もキレイに整列できてるね! 今日は新しい戦闘法を修練してもらうょ!」

「これを覚えたら、昇化(カーショー)してない者も仙術(ジュツセン)が使えるようになっちゃうかもよ!」


 予め、午前中にそれぞれの部隊長クラスを招集し、練気術と魔族の戦闘法を習得してもらっている。ただ、龍族の名前は出さないようにお願いしている。 

 部隊長ともなると、昇化した者ばかりだ。

 

 王都は実力主義だ。

 文武に秀でていれば誰にでも出世の機会がある。

 


 その後、部隊長達は隊員に指導を始めた。

 高いところから見ていると一兵卒でも浮いてる者がいる。


「ちょっと別れて見に行ってこようか」

「そうだね。そうしよう」

「ちゃんボク達も行ってこようかな」


 見回ってみると、皆魔法を使える為、練気術の習得は早いようだ。

 

 問題はその先。

 練気術を体内から出すのが難しい。ユーゴ達もだいぶ手こずったからな。

 やはり人族でも仙術に精通している者は習得が早かった。普通は数ヶ月から年単位で習得するものだ。


 これを皆が習得すれば、王都の軍事力は倍増する。

 

「そうだ、レオナード王。西の山脈に『ニーズヘッグ』ってのがいると思うんですけど、あれはヤバそうですか?」

「ヤバいなんてもんじゃないよユーゴちゃん。あんなもん軍で対処(ショータイ)するような奴だよ」

「討伐しても大丈夫ですか?」

「え……あんなのと戦おうとしてるの!? 構わないけど、SSS(トリプルエス)の魔物だょ? 死んじゃうょ……?」

「SSSなんてあるんだ……」 


  

 今回の軍事演習は、主に練気術の習得で終わった。


「よし、練気術の習得はできたね! それを応用するのが難しいょね! 基礎は今日学んだとおりだょ、各自持ち帰って修練を積むように!」


 一日で修得して使いこなすジュリアの様な者が異常なだけだ。皆焦らず持ち帰って修練すればいい。



 ユーゴ達はその後、ギルドの依頼などをこなしながら術の精度を上げる為に修練した。

 四人でアドバイスをし合いながら、自分の得意は更に伸ばしつつ皆の得意分野を自分に吸収した。


「ツヴァイハンダーはもちろんお気に入りの武器だけど、一対一では『風切(かぜきり)』を使った方が良さそうだな」


 ジュリアは刀に『風切』と名を付けた。

 由来は、振った時の風切り音が心地良かったから。実に単純でジュリアらしい。

 

「そうだな、多人数戦はツヴァイハンダーがいいと思う。破壊力が違う」

 

 四人の連携も良くなった。

 

 トーマスの盾は鉄壁だ。

 ユーゴは二刀流で攻防一体。

 ジュリアは超攻撃型。

 エミリーは皆に継続再生をかけつつ、苦無と遁術を駆使して中距離で戦う。


 四人は相当強いパーティーなのは間違いない。


 

 ◇◇◇


 

 二ヶ月が経ち、冬はすぐそこだ。

 

 マモン達の噂は、昔の事しか聞く事は出来なかった。王都には帰って来ていないと見る他ない。

 王都は商人や冒険者が多い、他の町から流れてくる者たちに聞いても古い情報だった。王国を出て魔都に滞在していると見ていいだろう。だとすれば、まず情報が入るのはここだ。未だ王都に滞在しているのはそういう理由からだ。


  

 ジュリアはもう錬気術で空を駆け回っている。流石は仙族が誇る天才、習得が早い。


「オレ達もう、ニーズヘッグ倒せるんじゃないか?」

「どんなやつかも分からないけど、どうなんだろうね……」

「行ってみるか?」

「ヤバかったら逃げればいいしね!」


 皆の武具の整備をトーマスに任せて、二日後にドラゴン討伐に行くことにした。

 

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