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第32話

「た、大変ですラルク様!!セイラ様!!とんでもない方がお越しになっています…!!」


 額に汗をだらだらと流しながら、召し使いが荒い口調でそう私たちに告げた。


「ど、どうしたんだい一体…。誰が来たというんだい?」


「騎士団の団長様と副団長様です!!!!」


「「へ??」」


 私とお兄様は事態を理解できず、完全にフリーズしてしまう。…きっと相当に間抜けな顔を浮かべていたことだろう…。


「お二人とも…。まさか騎士様に追われるような悪事を働かれてしまったのですか…。なんと、なんと悲しきことか…(泣)」


「ち、違いますから!!お兄様はともかく、私は違いますから!!」


「ひどい!!ひどいよセイラ!!!」


 私以外の二人は、分かりやすいくらいの涙目を浮かべている。


「もう!私が対応しますから、ちょっと待っててください!」


 二人の事は適当に放っておいて、屋敷の前で待っているであろう二人元へ足を進めることにした。


――――


「いらっしゃいませ、オクト様にガラル様!」


 私にとっては懐かしい光景が、そこには広がっていた。剣を腰に携える二人の姿は肖像画のように美しく、まさしく”騎士”という言葉がふさわしい。

 しかし一方の二人は、私の姿を見るやいなや…


「セ、セイラ様!?」

「え??え???ど、どうしてここに???」


 ぽかんとした表情を浮かべられ、なにがなんだかわからない様子…。けれど私は、心の中でどこか喜びを感じていた。


「(お、覚えてもらえてたんだ…。絶対忘れられちゃってると思ってたけど…)」


 それだけで特別なにかが変わるわけではないけれど、駄目だと思っていたことがそうでなかった時ほど、その反動で喜びは大きかった。


「と、ともかくここではなんですので、中へどうぞ!!」


 どこか胸の高鳴る感覚を覚えながら、私は二人を屋敷の中へと案内した。


――――


「セイラ様、さっきはみっともないところを見せてしまい、面目ない…」

「僕も同じく…。まさかこちらにいらっしゃるとは考え及ばず…」


 わかりやすいくらいにしゅんとしてしまっている二人。かつて伯爵家で会ったときの二人は、それはそれは凛々しく勇ましいたたずまいであったため、その時のギャップからか、私はどこか笑みがこぼれそうになってしまう。


「そんな、全然お気になさらないでください!あと、そもそももう私は伯爵様の婚約相手ではないので、お二人から様付けで呼ばれるような存在でもないのですし」


 私の言葉を聞いた二人は、一瞬だけどこか驚いたような表情を浮かべた。そしてなぜだかガラル様は、少しだけニヤニヤとした表情を浮かべながら隣に座るオクト様の事を肘でつついた。


「(チャンスじゃないですか団長!!!ほんとはセイラ様と結ばれたいとずっとずっと思っていたのでしょう??もういっそこの場でプロポーズでもされたらどうですか!!)」


 それに対してオクト様は、表情を一切変えずに自身のふところからタバコを取り出した。


「あ」


 彼はその手にタバコを持ったまま、私の方へと視線を向けてきた。”吸っても大丈夫か??”と目で質問してくる彼に、私は”全然大丈夫ですよ!”と目で返事を返した。


「ありがとう、助かるよ。………フーーっ」


「(ほんとに久々の再開なのかなぁ…?。息ピッタリじゃんこの二人…)」


 オクト様は普通にタバコを吸っているだけなのだけれど、なぜだかその姿をにやにやと見つめるガラル様…。やはり騎士団の団長と副団長ともなると、私なんかじゃ考えつかない境地に達するという事なのだろうか…?


「そ、それで今日はどうされたのですか?」


「あぁ、実は」「まことにもうしわけございません!!!」


 …今まで床に突っ伏していたはずのお兄様、いつの間にか起き上がって私たちの前に登場し、その勢いのままにオクト様の言葉を遮った。


「や、やはりこの僕をとらえに来られたのでしょうか…?ですが信じてください!悪いのは僕だけなのです!僕が愛するセイラは無関係なのです!」


「「あ、愛する…?」」


 …それまでにやにやとしていたガラル様は一転、敵を見るような鋭い視線をお兄様に向ける…。な、なんで……??


「よさないか、ガラル。今日我々がここに来たのは他でもない、これについてだ」


 そう言いながらオクト様が取り出した一枚の紙に、私たちは見覚えがあった。


「それは…新しい騎士の募集の紙…?」


「ああ。ラルク様、あなたの噂は聞いている。なんでも一流の騎士に引けを取らないほどの実力を兼ね備えていると」


「い、いやぁ~ばれてしまっては仕方がないですねぇ~!隠しておくつもりだったのですけれど~!」


「(さっきは自分から応募するって言ってたくせに…)」


「ぜひともその力、我が騎士団に貸してもらいたい。ラルク様の持つ力を、この目で見てみたいのだ」


「(お、お兄様が騎士団長様からじきじきにお誘いを!!??)」


 私はびっくりしてお兄様の方を見てみる。…そこには興奮からか、有頂天になっているお兄様の姿が…。


「つ、ついに夢見たこの時が…!!!まさか騎士団の団長様から話をもらえるなんて!!ついに僕の時代が訪れたというわけだ…!!」


「(…これ、一体どうなっちゃんだろうか…)」


 頭を抱える私をよそに、オクト様は詳しい話を始めるのだった。

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