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第28話

 レリアが向かった先、それは他でもない、自分が直接招待した二人の兄妹のもとだった。たった今伯爵との関係を切り捨てた彼女がこれから何と言うのか、皆の注目が集まる…。


「ラルク様、どうして私がこんなにも派手に、自分に正直な行動がとれたか、お分かりですか?」


「さ、さぁ…?なぜですか??」


「それは…。私があなたに夢中だからです♪」


 レリアはそう言うと、自身の体をラルクにすりよせていき、誘惑を図る。


「私の心はほかでもない、あなたのものなのです。あなたのためであれば、私は自分の心臓を差し出すことだってできます…。それほどに私はあなたに…♪」


 それまでいろいろな男性を悩殺させてきたテクニックをフルに活用させ、ラルクの心をつかみにかかる。


「な、なんだなんだ??突然の逆プロポーズか!?」

「い、一体どうなってるんだ今日のパーティーは…」

「…けど、あんなに自信満々に言い寄るって事は、相当自信があるのでしょうね…」

「いやもしかしたら、ここまで全部演出なんじゃないのか…?」

「かもしれないな…。まさかここからフラれるような展開があるとも思えないし…」


 貴族たちの反応には目もくれず、レリアは自分の言葉を続けていく。


「…こんな地味で魅力のないセイラなんかよりも、私と結ばれるほうがずっとずっと幸せに、そして快感を得られる事と思いますよ?」


 ついさっきラルクからかけられた言葉をそのまま鵜呑みにしたためか、ラルクは自分の事を好いているに違いないと確信している様子のレリア…。ラルクは会う女性会う女性全員に同じことを言っているというのに…。


「えっと…。レリア?悪い事は言わないから、もうやめておいた方が…」


 これ以上続けたら伯爵に続き、レリアもまた大きな辱めを受けることになる…。彼女への優しさからそうアドバイスを送ったセイラだったものの、もはやレリアの耳に届きはしなかった。


「あらあら、焦っているの??まぁ無理もないわよねぇ~、せっかく見つけた魅力的な恋人を、目の前で私に奪われるだなんて、耐えられないわよねぇ~♪。けれど、それが現実なの。もうラルク様は私に夢中なのだから♪」


「(だめだ…。全然言いたいことが伝わってないや…)」


 レリアはラルクの目をまっすぐ見つめながら、締めの言葉を発した。


「ラルク様、この私とお付き合いしていただきたいのです。今、この場でお返事をいただきたく思います♪」


「構いませんとも!僕の返事はすでに決まっていますから!」


「まぁ、それはうれしいですわ!それじゃあ早速今後の予定を」「付き合いません!」





「…………は?」




「……え?聞こえませんでしたか…?僕はあなたとは付き合いませんので、そういう事で♪」


 普段のように陽気な口調でそう返事をするラルク。…しかし彼とセイラ以外の人々の時は、すっかり固まってしまっている…。

 いくばくかの沈黙の時間を経て、観衆となった貴族家の人々は各々言葉を発し始めた。


「……え??もしかして彼女もフラれたの???」

「あんなに自信満々に言っておいて、サプライズまで仕掛けてこれって…(笑)」

「も、もう…。あんまり言ったら可哀そうよ?失敗は誰にだってあるんだから」

「どうなってるんだよこの貴族家は…。そろいもそろってみんなダメじゃないか」


 次第に周囲からの反応が沸き起こってくる。レリアは自分の失態に恥ずかしさを隠せないだろうが、ここまで来て引き返すことはできない…。


「ご、ご冗談でしょう??こ、この私が直接お誘いしているのですよ?断る理由などないでしょう??そ、それともまさか、こんな女に私は劣るとでも???」


「まず、大切な妹であるセイラの事をこんな女などと言う相手と、仲良くなどなれるはずがないでしょう?僕はこれでもお人好しな性格ですが、未来永劫あなたの事を好きになることはないでしょうね」


「は、はぁ!?い、いもうと…!?!?ま、間違いでしょう…!?!?」


「(はぁ~…。だからやめておいた方が良いって言ったのに…)」


 あきれるほど恥ずかしい勘違いをしていたという事に、ようやく気付かされるレリア…。


「(ど、どういうことよ!?この二人は恋人じゃなくて兄妹だってこと!?そ、そんなのありえない!じゃ、じゃあ私はなんのために伯爵を切り捨てたっていうのよ!!今までなんのために我慢してきたのよ!!あ、ありえない…!)」


 すべての計画が音を立てて崩れていく。周囲からうっすらとした笑い声が聞こえてくるほどのその状況に、レリアは耐えられるはずもなかった。


「っ!!??」


 彼女はその場から立ち上がると、一目散にその場から逃げ出していった…。


「あんな苦しそうな表情を浮かべて…。そんなにもこの僕の事を好きでいてくれただなんて…。あぁ、彼女の健気さの前には涙が出そうだ…!」


「相変わらずおめでたいですねぇ、お兄様は…」

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