表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/98

第25話

 ラルクの心をつかむため、レリアが計画した食事会。いよいよそれを明日に控えるまでに至った。


「明日は楽しみだねぇレリア!食事会を心から一緒に楽しもうじゃないか!」


 いつにも増してデレデレな様子のファーラ伯爵は、隣に座っていたレリアの肩を抱き、その香りを鼻に入れ、心を躍らせる。明日の食事会、伯爵は自分とレリアの愛情表現のために行われるものだと信じて疑っていない。


「食事会の手配をしていただき、ありがとうございます。明日は私たちのラブラブ具合を、貴族の方々に見せて差し上げましょう!幸せのおすそ分けです!」


 レリアもまたその首を伯爵の胸へ預け、甘える姿勢をとる。…が、その心に思っていたのは正反対の事だった。


「(こんな気持ちの悪い伯爵に媚びを売り続けて、本当にしんどかったわ…。あなたはただの食事会だと思っているようですけれど、残念ながらそれは違います。明日、大勢の人間がいる場であなたとの関係を終わりにすると宣言してあげましょう。あなたは怒り狂うでしょうけれど、その時にはすでにラルクという人物が私に夢中になっているんですもの。力のある彼が私の隣にいるのなら、もはやあなたなんて怖くもないわ♪)」


 本心では全く伯爵の事を好きでもないレリア。今の彼女が夢中になっているのは、ただただ人々の勘違いで作り上げられたラルクの虚像にだった。


「(そして同時に、最愛のラルクを目の前で私に奪われる…。セイラも伯爵に負けないくらいの面白い反応を見せてくれるでしょうね。今まで散々かわいくない反応を見せてくれたのだから、明日は泣き出してしまうかも…(笑)。でも仕方ないわよね?寝取られる方が悪いんだから♪)」


 女としての自信に満ち溢れるレリアは、必ずラルクの心を自分のものにできると確信していた。表の表情には伯爵に甘えるかわいらしい幼馴染、裏の表情では自分の欲望のままに計画を立てるレリアのその姿は、まさに女狐と呼ぶにふさわしいものだった…。


「(食事会の後は、レリアとお楽しみタイムだな…!どこの宿で一緒に過ごすか、今から考えておかないと…♪。お父様からはまた怒られてしまうかもしれないが、レリアと愛を確かめ合うことができるのなら、別に構いはしないとも。もうじきセイラも僕のもとに泣きついてくるのだろうし、もうこれから先の事が楽しみでたまらない♪)」


 そんなレリアの本性など知る由もなく、変わらずのんきなことしか考えていない伯爵…。

 明日行われる食事会がすさまじい結末を迎えることになるとは、この時の二人は全く思ってもいないのだった…。


――――


 一方のセイラとラルク。


「ねぇお願いお願い!!!明日はこの衣装着てよセイラ!!!」


「絶対に着ません!!!!ありえませんからそんなの!!!」


 フリル付き、リボン付き、紺色の生地に香水が振られたメイド服を手に、ラルクは熱弁をふるっている。


「もしかして自分には似合わないんじゃないかと自信がないのかい??それなら心配いらない!!この僕が保証するとも!絶対に君にこの衣装は似合う!かわいい!素敵!他に形容する言葉なんて何もない!!」


「いいかげんにしないところしますよ?」


「うっ…。(し、しかし今の僕は引き下がるわけにはいかないんだ…!かならずセイラにこの衣装を着てもらって、貴族たちにそれを見せびらかしたいんだ…!)」


 ここでラルクは、これまで隠していた殺し文句を解放した。


「これはルナちゃんもかわいいといってくれた衣装なんだ!彼女だってセイラが身にまとっている姿を期待しているに決まっている!!その思いを裏切ってはならない!」


「っ!!」


 出会って以来、ルナの事を心からかわいがっているセイラにとって、その言葉は重かった…。


「な、なんと言われても着ませんから!!」


「僕は諦めないよセイラ!!」


 …結局二人は食事会の直前まで、言い争いを続けるのだった…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ