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第17話

 余裕綽々といった様子でセイラを連れ戻す作戦にかかっていた三人のメンタルは、彼女一人に信じられないほど楽々と返り討ちにあった事で、見るに堪えないほどにズタボロにされていた…。


「あ、ありえない…。この俺が…あんな女一人に負けるなんて…」


「ブルームちゃんのせいでしょ全部…。一人勝手に先走って行っちゃったんだから…」


「お前だってセイラに跳ね飛ばされてただろうが!それでも全部俺のせいにするのか!」


「なによなによ!最初あんなに偉そうにしてたくせに!!」


 傷だらけの状態ながら、再び取っ組み合いを始める二人。しかし今回は、無言のガーナーに間に入られて止められた。


「…まったく。このことをレーチスちゃんにどう報告すればいいって言うのよ…」


「お、おいまさかありのまま知らせるわけじゃないだろうな!俺たち3人があんな軟弱だって有名なセイラ一人に返り討ちにあったなどと!」


「…さぁ、どうしようかしらね?」


「ふ、ふざけるな!ただ淡々と仕事をこなすのが俺たちの存在価値だというのに、こんな話が出回ってしまったら、恥ずかしくてもう外を歩くこともできなくなるじゃないか!!」


 仕事ができなくなる、というのはただの建前だった。プライドの高いブルームが最も恐れていたのは、さんざん見下していたセイラを相手に手も足も出ず、一方的に負けてしまったという事実を知られてしまうことなのだから。


「それじゃあどうするのよ。誤魔化すことなんてできないと思うわよ?」


「し、仕方がない…。二人とも俺につじつまを合わせろ、レーチスにはこう言うんだ…」


 3人は互いに考えを共有し、完璧な言い訳を完成させるべく頭を回転させるのだった…。


――――


 そしてそのままレーチスの元へと知らせに戻った3人。もちろんそこにセイラの姿がない事に、レーチスは不満をあらわにする。


「お、おいまさか失敗したのか!?あんな女をひとりさらってくるなど簡単な事だと言ったのはお前たちの方だろう!!」


「あ、あぁ確かに言ったとも…。しかし当日になって、予期せぬ事態が起きてしまったんだ…」

「そ、そうなのよ…。私たちも想像だにしていなかったってわけ…」

「…」


「よ、予期せぬ事態だと??いったいどういう事だ…?」


 ここからが、3人が考え出した最も合理的な言い訳…。


「セ、セイラの隣にいた男が信じられない強さだったんだ…。それはもう、今までに見たことがないくらいにな…」

「あんな男がこの国にいたなんてねぇ…。私もびっくりしちゃった…」

「…」


 …争い事に経験豊富な三人が、気弱で軟弱だと見下していたセイラ一人に完膚なきまでに叩きのめされた、などとは口が裂けても言えないために、一緒にいた男にやられたという事にしたのだった。


「な、なんだと!?そ、それじゃあセイラにはそれほど強大な力を持つ男が味方をしているというのか…!?」


 知らせを聞いたレーチスは一段とその顔色を悪くする。


「そ、そういう事だ…。わ、悪いが俺たちはもうこの件から手を引かせてもらう…。あんな男を相手にするのは、とても無理なんでな…」

「わ、私も同じ思い…。これ以上戦ったって無駄だし、お肌が汚れちゃうだけだし…」

「…」


 今までに見たことがないほど憔悴しきっている3人の姿を見て、レーチスはこの話が真実なのだろうと受け止めた。


「(ど、どういうことだ…!セイラは短い時間だけここからいなくなったのではなかったのか!?それほどに強力な何者かが、彼女の背後には控えているという事なのか…!?)」


 いまだにセイラの家出の一件を教えてもらえていないレーチス。彼の勘違いはますますあらぬ方向へと進んでいき…。


「(はっ!も、もしやセイラは正体が女王だとでもいうのか!?彼女を守るために騎士か誰かがその力を見せつけたとでも言うのか!?そ、それくらいでなければこれほどの力を手にすることなどできるはずもない…!あの3人がこうも簡単に負けてしまうほどの実力者…!いったい誰がセイラに味方を…!)」


 セイラの正体が実は王国の女王かもしれない。そんな可能性まで考えてしまい、頭を抱えてその場にうずくまるレーチス…。

 そんな彼に元に、一人の使用人がある知らせを持ち込んだ。


「レーチス様、ライオネル様がお呼びでございます」


「ラ…ライオネル…様が?」


 この上ない程絶望的なタイミング…。何を言われるかはレーチスが一番よく分かっていた。


「わ、分かった…。すぐに向かうと伝えてくれ…」

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