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初恋の目覚めと歪んだ愛着 ①

コマドリと過ごす時間はあっという間に過ぎてしまう。

クロネコを伴って、彼女は必ず夜にだけ現れた。

毎夜彼女を待ち、次に話す時を待ち侘びる。


元々夜の眠りは浅かったが、昼夜を逆転させて昼に眠るようにした。

体調が悪いせいで眠れないのだと勝手に憐れんでくる臣下はもちろん、誰にも口は挟ませない。


3年も過ぎればアレクレイドは少年から青年に近い体躯になり、あの子も少女から花が綻ぶように成長していた。


「ねぇコマドリ。君の本当の名前はなんて言うの? 俺と君との仲なら教えてくれても良いだろう?」

「っ。どんな仲です!? 夜にきちんと寝ないから落馬して怪我をするのよ? 寝ていてくれれば魂も取りやすいのに!!」

週に数回気まぐれに出現する彼女は、鎌を振るフリを少しだけした後は魂を狩る素振りをみせない。


口調だけは虚勢を張っているところが、また可愛くて仕方がなかった。

「だって夜に寝てしまったら可愛いコマドリに会えないでしょう? それにしても、この怪我の原因なんてよく知ってるね」

左手で右手の包帯を指差す。日中の狩猟の際に珍しく失敗して負った怪我だった。


「街ではその怪我が基で王子が亡くなるんじゃないかって噂で持ちきりですって。情報が出回るのが早いもんだわ」

「こんな怪我で大げさだよね」

どれほど街の噂とは当てにならないものなのか。失笑しながら首を傾げる。


「思っていたより軽症で…………安心した」

コマドリは包帯が巻かれた右手を痛ましそうにみて、安堵の息を吐いた。その仕種に口元を緩める。


「ふふ。死神に怪我の心配をされるなんて俺だけの特権だね」

「そういうわけじゃ!! とにかくしっかり休んで治すのが大事なんだからね」

頬を紅く染めて誤魔化すのが可愛い。


可哀想という感情はあっという間に可愛いになり、可愛いが愛おしいに変わるまで、さして時間は掛からなかった。


「愛しているよ。コマドリ」

実体のない自分の魂を狩るために現れる、彼女だけがアレクレイドの琴線を震わせた。


16歳まで生きたアレクレイドの周りには、それなりに婚約者候補となる令嬢も置かれていた。

実際に婚約の話も何度か持ち込まれているが、死期が短いとされているため弟よりも頻度は少なく興味もなかった。当然、その全て断っている。


王位継承権を持っているアレクレイドがここまで自由に振る舞えるのは20歳までに死ぬという予言のおかげだ。

コマドリに出逢わせて、アレクレイドに自由を与えた。

その予言を今なら祝言と言い換えてやってもよい。


そのせいで弟に王位継承権を移そうと、アレクレイドの暗殺を試みる輩が後を絶たないなど瑣末な事だ。

落馬の一件も命が狙われていたのは間違いない。仕掛けた奴を弓の的にしたら泣いて許しを乞うていた。

中にはアレクレイドに慕情を持っているフリをして、毒を盛った令嬢もいた。その毒を本人に飲ませて処罰すれば、同じ轍を踏む者は出てきていない。


彼等ごときにアレクレイドの命を指一本触らせる気はなかった。それは目の前のコマドリだけに与えた権利だ。

「コマドリは可愛いな。俺は君だけ居てくれればいい」

コマドリになら殺されてもよい。

そんな想いを込めて、アレクレイドは幸せそうに愛を囁いた。


歪んでますね。書く中でも結構、アレクレイドは病んでる方です。

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