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どうしてコマドリは泣いているの? ①

「あっ……貴方がっうっひっく……持ってる死神の目……っ。返して欲しいんだって……ううっ」

次に現れた時コマドリは泣き腫らした目をして、進行形で泣いている真っ最中だった。


「なんで君は泣いているの?」

アレクレイドは記憶にある限り涙を流した経験がない。産まれた時から死を意識しすぎて、感情の起伏が薄いのかもしれなかった。


「っ私は……他の人の……うぅ。魂を奪ってきたから」

どうやらアレクレイドの前にも死神の仕事をこなして来たらしい。自分と違ってほとんどの者が、死に対して無抵抗に違いなかった。


「魂を狩る時……みんな痛いって泣いているの。鎌を振ると、その人の気持ちが流れ込んできて。…………うっ、ひっく」

こんなに涙脆くて死神をやっていけるのか甚だ疑問だった。


純粋に悲しそうな泣き方で、自分を殺した後もこんな風に泣いてくれるなら悪くはない。だがその他大勢と同じ扱いというのは気に入らなかった

「貴方はっ痛くはない……?」


涙を溜めてアレクレイドを見つめてくる蒼い瞳に、胸の高鳴りを感じた。誤魔化し混じりに慌てて答える。

「っ。どこも痛くない」

「……良かったぁ」


そんなアレクレイドにコマドリは泣きながら、ほっとしたように笑った。

ドクンと心臓を鷲掴みにされたように、動悸が胸を締め付けて痛かった。

久しぶりに憐れみのない、誰かの屈託ない笑顔を見た気がした。


「あの……アレクレイド。……王子? はどうして死神の目を?」

前に会った時に呼び捨てにするなと文句をつけたからか、呼び方に気を回しながら訊いてくる。


「さぁ? 必死だったし。あんまり覚えてないな。考えてみたら生き残ってそんなにやりたい事もないんだけど、勝手に決められて殺されるなんてまっぴら」

意地汚く生に縋っているようで、無様な姿だと自嘲する。

ただ、どうして生きたいかというより、勝手に死期を定められているのが何より我慢出来なかった。


「凄い!! 自分で決められるって凄い!! ……格好いいね」

しかしコマドリと呼ばれていた女の子はいつの間にか涙をとめて、何故かアレクレイドを尊敬しているかのように目を輝かせていた。


「アレクレイド王子なら、きっと生き残れるよっ!!」

「……死神の君に言われたくないんだけど」

「そっそうだよね。………変……だよね」

本当に可笑しな死神だった。調子が狂って仕方ない。


「君はどうなの?」

「えっ?」

「君のやりたい事はないの?」

気がつけばそんな質問を振っていた。妙にこのコマドリが気になって落ち着かなかった。


「……わっ私は……罪を償わないといけないから……」

「罪?」

虫も殺せなさそうなくせに、何の罪があると言うのだろう。


アレクレイドが首を傾げていると肩をしょんぼりと落とし、目を伏せて帰るねと呟く。スカートの裾を持ち上げ、膝を軽く曲げて一礼すると消えてしまう。

コマドリがいた空間をぼんやり眺めながら、アレクレイドは彼女の悲しそうな顔はあまりに見たくなかったなと、話を振ってしまった自分を悔やんでいた。

駆け足で書いて行きます。

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