表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/16

誕生会の招待状

「お嬢様。これが今月の招待状です」

改装して執務室にした客室の椅子に座って書類に目を通していると、家令のセディが一礼をして招待状を持ってくる。


引き籠もり生活も長くなると誘いはめっきり減っていた。形式的に届く2、3通の手紙に混じって、王家の印が押された封筒が入っていた。


「アレクレイド王子の生誕を祝う祝賀会……」

この国の全ての貴族に配られているだろう、その内容は2ヶ月先の誕生会への招待状だ。

ただ封筒の中にはアレクレイドの自筆とみられるメッセージカードが一緒に添えられていた。


『君と俺の誕生会を共に祝いたい』

今までも彼に関係する催しの際には度々こういったメッセージが混ざっていた。


アレクレイドは20歳を目前にして婚約者も決まっていない。もしかしたら若い未婚の令嬢にはすべからく送っているのかもしれない。


それでもラファーリアは嬉しかった。

この屋敷から出られないラファーリアに参加の返事など出来るはずがないとしても。

彼に初めて会った時から、ラファーリアにはない決断力や揺るがない意志の強さにずっと憧れているのだ。


「……ありがとう。爺や。いつもの様に欠席のお返事をしておくわ」

「……お嬢様。お嬢様の御髪を結いたいとハンナが申しておりましたよ。呼びつけてもよろしいでしょうか?」

気落ちしているのが伝わってしまったのだろう。セディが気遣うように訊いてくる。


セディとその伴侶のハンナはラファーリアが産まれるより前からスカーラッド家に仕えている老齢の夫婦だった。

家族のいないラファーリアを肉親の様に扱ってくれるのは、もうこの2人だけだ。


「どこにも出掛けられないのに意味がないわ」

「意味などなくても。爺と婆はラファーリア様に少しでも喜んで頂ければ満足です」

「……じゃあ、久しぶりにお願いしてみようかな」

相好を崩してハンナを呼びに去ったセディを待っている間に、返事を返してしまおうとペンを取る。


『体調が優れず参加は見送らせて頂きます。アレクレイド王子が無事にお誕生を迎えられる日を楽しみにしております』


「……本当に」

アレクレイドが20歳を越えて、それをラファーリアが祝う時など来ない。来てはいけないのだ。


悲しい訳ではない。それはもうずっと前から決めている事だった。

それこそ彼と出会った6年前の頃から。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ