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呪いの鎖

ちゅんちゅんと窓の外で雀が鳴いている。

目覚めの朝は辛いだけだ。

鏡に写るラファーリアは、翼が背中にない以外は死神の時と同じだった。


但しこちらは生身の身体だ。昨晩アレクレイドが触れようとした頬を自分の指でつねっても、ちゃんと痛い。

夜寝ている時だけ魂が霊体として死神になっているラファーリアの、紛れもない本来の姿だった。


一応でなくても由緒あるスカーラッド侯爵家の令嬢で、使用人を除けば広い屋敷に独りで住んでいた。

衣装箪笥から適当な衣装を選んで身に纏う。

どうせ使用人しか観ないのだから、自分で着れる軽装を揃えていた。


両親は当に他界していなかった。

というよりその両親が残した財産も負債も継いで、彼女はこの屋敷に縫い付けられているのだった。


もう8年も前だ。両親が死霊魔法を発動して亡くなったのは。

アレクレイドと違い、天才ではなかった両親の選択は愚かでしかない。


「お父様とお母様が長生きしてくれた方が嬉しかったのに」

重い病に侵されて余命幾ばくもない最愛の娘、ラファーリアのためにこの屋敷で禁呪を使った。


結果的に術は成功しラファーリアは元気になった。両親を含む領地の666人の命と引き換えにして。


幸いにして禁呪の存在は明るみにならず、両親や領民の死は稀な疫病が流行ったせいだと片付けられた。

領土も両親から引き継ぎ、屋敷の中で報告を元に何とか管理して数年。


「このところ税収は安定してる。そろそろ次の計画に進めるかな。人手が足りないな。もっと空き家の移住も薦めないと」

ラファーリアを愛していた両親を責める気には全くなれなかったが、両親が冒した罪の大きさに咽び泣いたのは一度ではない。

10歳の時に亡くなってしまった両親に代わり呪いを受けて、失った命を償えと死神見習いにさせられて8年。


650人ほどの魂を狩り終わり、残り16人。

全ての罪から解放される日はもうすぐだと自分を励ます。


「ラファーリアお嬢様、朝食の支度が出来ております」

「すぐに行くわ爺や」

そうして寝室を出るために歩くと、ジャラと鎖が揺れる。


足に繋がれた16本の鎖は普通の人間には見えないものだった。

ラファーリアも自分に掛かっている呪いだから見えているのだ。死神の目を掛けていなければただの人だった。


最初は600本以上あった呪いの鎖も16までに減った。死神として魂を狩る度に鎖は減り、全て消滅すれば晴れて自由の身になれる。

それまでは屋敷の中を動き回るのが精々で、それより先は進もうとしても鎖に引っ張られて動かなかった。


両親の死後にそれがショックで引き篭ってしまった、深窓の令嬢ラファーリア・スカーラッド。

それが昼間の彼女の姿だった。




深窓の令嬢って響きにトキメキます。

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