死神の仕事 ③
案の定。ジョゼが彼女の隣に戻るとラファーリアは泣き腫らした目をしていた。
「期待を裏切らないっていうか。っほんとに」
事切れた青年の隣から、ラファーリアを強引に引き剥がす。
「泣いたって生き返るわけじゃない。そもそもコマドリのせいじゃないだろ」
見えないところまで連れていって行き、なだめすかして漸く泣き止む。
いつものように抱きつくと、嗅ぎなれない香りが鼻を掠めた。
「あ~コマドリ、僕がいない間にあいつに会ったでしょ」
「……あいつ? アレクレイド王子かな? 良くわかるね」
「はぁ…………気づいてないんだな。発動条件があるからか?」
呪いじみた術を掛けられているのだが、本人は気づいていないようだった。
「もっと用心しなよ。……食われちゃうぞ?」
「食べられちゃうって? アレクレイド王子は人間だよ。ジョゼみたく猫じゃないんだし」
きょとんして、全く危機感が無いところが恐ろしい。
ジョゼからして見たら、アレクレイドのところにコマドリを赴かせる時は、どちらが狩人なのかと疑わしくなるくらいだった。
「あいつは猫なんて可愛いもんじゃすまないだろっ」
ラファーリアのまえでは猫を被っていても、中身は獰猛な獣のようなものだ。
「だけどアレクレイド王子は優しいよ?」
「おまえ限定だけどな。あいつの裏の顔は知らない方が幸せかも」
おまけに誰も首に鎖をつけられず、野放し状態という達の悪さだ。だからラファーリアが勘違いするのだ。
「…………決断力もあるし」
「ああいうの独善的っていうか、我儘って言うんだぜ」
「………………凄い魔術も使えるんだから」
「禄な魔法の使い方をしていないけどな」
ラファーリアお決まりのアレクレイドの長所に対する感想を返してやると、ぐっと言葉を飲み込む。
「それでも……」
「ラファーリアはあのいかれ王子贔屓だよな」
贔屓なんてものではない。
もっと露骨な好意が見え隠れしているのには、あえて触れないでおく。
「っ違うわ。ただずっと魂を狩り続けているから知る機会が多いだけで」
「あ~はいはい」
胡乱な眼差しを向け、ぎゅっと回した腕の力を強める。
「ちゃんとあいつの魂を狩れよ、ラファーリア。……情なんてかけないで」
「……もうすぐだよ。安心して」
どんなに抱き締めたって霊体では暖かくならない。
「ジョゼ、心配してくれてありがとう。ジョゼがお目付け役で良かった」
だけどラファーリアの側にいると、何となく暖かくなるような気がするのだ。
「……うん。僕はラファーリアのお目付け役で大変だよ。だって僕がいないと駄目なんだから」
だからずっと側にいる。
いつものように頬を擦り寄せるとラファーリアが控えめに、ジョゼの頭を撫でた。
ちょっと苦労人のジョゼ。




