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初恋の目覚めと歪んだ愛着 ③

付き合う年月が長くなるにつけ、コマドリへの執着は熱を孕んで、夜に出会うだけでは物足りなくなっていた。

日中の様子が気になって、思い当たった推測が頭から離れなくなっていく。


クロネコと違って成長していて、夜にしか現れない。

その上アレクレイドの日中の状況を知っていた。

それは国内で生活をしていないと難しい。

更に占いのような物とはいえ文字も読めるし、立ち振る舞いも美しかった。


彼の想い人である死神は、国内の貴族の娘だと考えた方が自然なのだ。


だが上流階級であれば王家が主催する会には出席している筈だが、彼女を見掛けた記憶はない。

1人だけ該当者がいた。

深窓の令嬢ラファーリア・スカーラッド。


両親の死後、引き籠った彼女の姿を見た者はいないが、年齢は15歳になるという。

どんな催しも欠席し、決して屋敷から出ない令嬢。

まもなく迎える17歳の誕生会の招待状も送っていたが欠席と返されていた。


併せて彼女から送られてきた祝いの品には、白い薔薇が添えられていた。

絹で織られたブックカバーは品があり、ちょうどアレクレイドが読んでいる本の大きさだ。

過去の誕生会でもここ数年、白い薔薇が添えられた贈り物を寄越してきていたが、どれもぴたりと彼の嗜好にはまるものだった。


ただし心が篭った贈り物では、膨らんだ気持ちは収まらない。彼女に会って話しがしたい。

遂には我慢出来ず、視察と銘打ってスカーラッド家の屋敷を訪ねる。

庭に白い薔薇の咲き乱れ、古いながら手入れがされた美しい屋敷だった。


しかし死神の目をつけているからか、アレクレイド自身が死霊魔法の使い手だからか。

種類までははっきりしないが、その敷地全体に呪いの影がぼんやりと浮かんでいた。


幼い頃からアレクレイドに付き添っている従者のナンディールと門を叩けば、やや間を空けて年老いた家令が姿を表す。

「突然押しかけて申し訳ない。私供は王家の使者だ。ラファーリア・スカーラッド嬢にお会いしたいのだが、顔を繋いで貰えるだろうか」


言い方は丁寧だが身分を盾にした脅しだ。だが家令は青ざめ深々と礼をしながらもアレクレイドの申し出を拒否した。

「お嬢様はお病気でどなたともお会い出来ません。どうかお帰りください」


「なっ、この方は第一王子アレクレイド殿下であるぞ。無礼であろう」

「ナンディール……よせ。家令、扉越しでも良いのだ。話だけでも出来ないだろうか」

懐から金貨の入った袋を取り出し家令に握らせる。大抵はそれで穏便に片がつく方法だった。

「申し訳ございません。どうか、どうかご容赦くださいませ」

だが袋をすぐに手放して、ほとんど地に付きそうな勢いで頭を下げてくる。


(この老体が。邪魔してくれるな)

毅然と断られてしまえばそれ以上、踏み込む余地はなかった。

奥歯を噛み締めて、踵を返す。

不敬でスカーレッド家を処罰するのは可能だが、事を荒立てるのはアレクレイドの望みではない。

コマドリに嫌われるような真似は取れなかった。


そうして、何度訪れても家令に阻まれる。

結局アレクレイドは今に至るまでラファーリアには会えずにいた。


王子の行動自体は色々真っ黒です。

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