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初恋の目覚めと歪んだ愛着 ②

「コマドリはこれを読める?」

「テソーロモーガンの魔術の恋!? わ、わっ私は読んだけどアレクレイド王子が読んだりする本じゃ」

まさか即答されるとは考えていなかった。

街で流行っている占いのような本で、読めば片想いの相手と結ばれるという。

奨めようとしていたのに、既に誰かを想って読んだのかと想像したら面白くなかった。


「ねぇ誰を想って読んだの?」

「べッ別に誰も。ただ興味があっただけで」

ほんのり色付いた頬が艶めかしい。触れないのが狂おしいほどだった。


「お前なんかに触らせないよ」

思わず手を伸ばそうとすると、ばちっと静電気のような空気に阻まれる。

愛おしいコマドリとの時間を邪魔するのは大抵同じ奴だった。


コマドリのお目付役だというクロネコ。

真っ黒い髪に耳と尻尾と併せたのか格好まで黒い。妖しく光る金目は正に死神と言った風情だ。

3年前から髪先の一本も変わらずその姿を保っている。


「っほんとダメだなコマドリ。ターゲットと普通に会話してどうするんだよ。ほら帰るぞ」

いい雰囲気になるか、そうでなくても1時間くらい立つとふらっと現れてアレクレイドからコマドリを取り上げる。

しかもベタベタとアレクレイドより近い距離でコマドリに触って。本当に忌々しい。


「おまえはいい加減、そこら辺の奴にでも刺されて死んでおけよ」

「あいにくコマドリ以外に殺される気はなくてね。今夜は渋々でもコマドリを俺のところに連れて来たなら、もっとどこか余所にいてくれて構わないのに」

邪魔なうえに腹立たしい存在に、射殺すような視線を投げても意に介さない。それはそうだろう。


このクロネコが偶にアレクレイドに向けてくる殺気は、暗殺のために送られてくる刺客とは比べ物にならない鋭さだ。

アレクレイドが気に食わないと想う以上に、向こうも嫌っているのだろう。

彼の死神の書に名が刻まれていたら、なんの躊躇いもなく切り刻まれていたに違いない。


本来は魂を狩るまで毎日来てくれるはずのコマドリの予定を、可能な限り抑えているのも。

狩りの途中で介入するのは禁止されているのに、強引に止めに入って来るのも。

行動のいちいちが癪に触る。


何よりコマドリに対する態度だけが優しくなるのが許せない。

恐らくクロネコも同じなのだろう。

ようは同族嫌悪だ。


容姿は異なるものでも性質は近く。死が身近にありすぎるのも同じなら、心の綺麗なコマドリに惹かれているのもまた同じ。

似ているのはお互い解っているから忌み嫌うのも一緒だ。

だからアレクレイドとクロネコが話し始めると、コマドリは真っ青になるのが常だった。


そうして場を収めるために、控えめで丁寧な挨拶をして早々に立ち去ってしまうのだ。

アレクレイドに寂しさと彼女に対するより強い執着だけを残して。



意外に仲良し?

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