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関の処遇

維心は、結界外で茫然としている関を、王の居間で見て、苦笑した。

「…義心に放り出されおったわ。ま、これでこちらに居る間は静かになろう。」

炎嘉は、むっつりと頷いた。

「義心がこちらへ那佐が放り出せと言っていると聞きに来た時は、他宮の軍神に丸投げかと思うたが、よう考えたら那佐はそれどころではないわな。手っ取り早く義心にさせようと思うても仕方がない。確かにこの方が早い。」

維心も、頷く。

「この方が簡単で良いわ。我も同じ状況ならそうしただろう。これで、あれもここからの立ち合いに集中できようしな。」と、空を見上げた。「そろそろ、我らの時間。志心、参るぞ。」

志心は、立ち上がった。

「もうそんな時間か。」と、炎嘉を見た。「主らはどうするのよ。居間の主が居らぬのにこちらに居座るのか?」

炎嘉は、億劫そうに立ち上がった。

「それでも良いが、維月が帰ってでも来たら維心が後から煩いからの。参ろう。」

駿、焔、高彰も立ち上がる。

漸と箔炎はまだこちらへ戻っていないが、あちらも恐らくは己の番が終わっても、渡の立ち合いが気になって、立ち去ろうとは思わないだろう。

六人は、訓練場へと向かって、歩き出したのだった。


一方、維月もそろそろ維心が来る頃で、渡と塔矢、仁弥などが立ち合う時間だと茶碗を置いた。

「…美穂殿。そろそろ戻りましょうか。良い具合に日も傾いて参って、そろそろ手練れの王達と渡様が立ち合われるお時間ですわ。我が王も、それを見越してこの時間に手練れの王を集めておるらしくて。貴賓席に、他の王達も集われるのではないかしら。」

美穂は、それはそれで緊張したが、しかし祖父の志心も居ると思われるので、落ち着いて頷いた。

「はい、維月様。」

維月は頷き返して、立ち上がった。

侍女達が、わらわらとやって来て維月の着物を整えて、そうして美穂も侍女の真紀子と奈美を連れて、応接間を出たのだった。


観覧席の貴賓席へと入って行くと、ちょうど維心や他の王達が入って来て、座ろうとしているところだった。

美穂は、急いで深々と頭を下げたが、維心は維月に手を差し出した。

「維月。参ったか。」

維月は、維心に頭を下げた。

「はい、王よ。」と、その手を取った。「皆様いらしたのですね。」

維心は、頷いて維月を自分の隣りへと導く。

それを見た志心が、美穂に手を差し出した。

「美穂。こちらへ参れ。」

美穂は、どこに座れば良いのだろうと困っていたので、祖父の手を見てホッとしたような顔をした。

「はい、お祖父様。」

美穂は、志心の手を取って、気を利かせた志心が、維月の隣りになるようにと自分と維月の間に座らせるのに、内心感謝してそこへと座った。

美穂は、祖父とは言っても同じ宮に住んでいる翠明とは違い、なかなか会えない志心を見つめた。

志心は、祖父だが若い姿で、それは美しいのでどこへ行っても侍女達が騒がしいのを知っている。

こうして傍に座ると、確かにそれは凛々しい様で、しかも落ち着いていて皆が騒ぐ気持ちが分かった。

だが、美穂は志心がこういう落ち着いた美しさであるので、どうしても男性として見るのは、ガッツリと少し、荒々しいと言われるような神の方が多かった。

と言っても、軍神達ぐらいしか美穂が目にする機会はこれまでなかったので、これまで眺める程度で、慕わしいとかそんな気持ちには、まだなったことはなかった。

維月が、言った。

「渡様は、全く疲れておられないようでありますわね。むしろお元気であるような。」

隣りの維心が、頷く。

「那佐がそう疲れるものか。これまで手こずることもなかったのだろう。塔矢と仁弥も楽しみであるが、翠明が立ち合うのをついぞ見ておらぬし、我はそちらも楽しみにしておるのだ。良い感じに体を動かせて、興が乗って来ておるだろうしの。」と、ふと思い出して続けた。「そういえば、あれの懸念の元であった関は、結界外へ放り出したぞ。」

え、と維月も美穂も維心を見る。

維月は、言った。

「まあ。宮へ帰るようにご説得くださったのかと思いましたけれど、放り出しましたの?」

維心は、また頷いた。

「那佐が面倒になったようで、義心に放り出してくれと言うて来たらしい。あれも、立ち合いの順もあるし、関の相手をしておる暇もないと思うたのだろう。義心が、こう言うておるがどうすると我に問合せに来たので、ならばそれでと命じた。先ほどまで入れないかと結界外で抗っておったが、諦めて帰って行ったわ。」

退去処分にされたということは、しばらくは龍の宮へと入れないだろう。

維月は、そう思って聞いていた。

志心が、美穂の向こう側から言った。

「しかし、これが続くようなら面倒であるぞ。那佐とて、宮で始終美穂を傍に置いておるわけにも行かぬし、それでは指南も進むまい。どうする?いっそ、此度の事を合わせて、どこぞの宮にしばらく行儀見習いとか言うて預からせるか。そんな基本的な事もできぬかと言えるので、そうなっても文句は言えまい。その間、美穂が宮の改革をして、終わった頃に関を宮へと帰せばどうか?」

それには、炎嘉が答えた。

「それは良い考えぞ。此度維心に咎められ、宮を追い出された実績があるのだから、それを理由にもっと礼儀を弁えた様子になるように、最上位のどこかに礼儀見習いに参るように申し渡してはどうか?そうすれば、志心が言うた通り美穂はのびのびと指南役ができるし、関の行儀も良うなろうし。」

焔が、言った。

「だが、どこの宮に行かせるのだ?行儀と言えば龍の宮だが、ここを追放されたのだしの。」

志心は、言った。

「我のところでも良いが、一番良いのは離れておる主の宮ではないか?夜中に抜け出して来られては面倒だしの。」

焔は、嫌そうな顔をした。

「我の所に?誠か。我は面倒であるから放置してしまうがのう。だったら、翠明の所は?あやつの所から美穂は来ておるのだし、交換ということで。」

箔炎が言った。

「翠明の宮など緑翠が良いように思わぬのではないのか。己の皇女が懸想されておるのだぞ?そも、美穂の母の白蘭が居るのに、今度はそっちにちょっかいを出すとかあったらどうするのよ。」

志心が、苦笑した。

「いくら何でもそれはないわ。白蘭はもう年相応で老いて来ておる。美穂はあれが400過ぎてから産んだ子であるからの。それがもう280になるのに、若いはずはあるまいが。」

言われてみたらそうだ。

皆が歳を取らないので、そんなものかと思っていたが、上位の王達は特別なのだ。

炎嘉が、言った。

「とはいえ、翠明本神がここに居らぬのに、勝手に決めて良いことでもあるまい。それに、我が思うに美穂に面倒なことを仕掛けておる男を、預かる気にはならぬと思うぞ。どうしてもなら、うちで預かっても良いがの。軍で訓練でもさせて過ごさせる。」

維心が、言った。

「全て終わってから決めようぞ。我とて、別にこちらで預かっても良いのだ。恐らく、ここへ来るのが一番気が重かろうからの。臣下も皆厳しい目で見るし、義心に訓練場で毎日こてんぱんにされて辛いことしかない。後で決めよう。」

維月は、同じ宮の中に関が居るのさえ、今は面倒だなと思っていた。

一度嫌いになると、なかなか好意的に見る事ができないのが維月の性質なので、維心が預かるとか言い出したら、外宮だけで過ごさせるように言おうと密かに思っていた。

すると、漸が言った。

「主ら、話ばかりだが那佐が翠明と立ち合うぞ?見ぬのか。」

え、と皆がフィールド上へと急いで視線をやる。

すると、そこには翠明と、渡の二人が浮いて、立ち合いを始めようとしていた。

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