5 もう冬ですが、秋お茶会の続きなのです。
人数分の小皿にスウィートポテトが3個づつ分けられ、紅茶の入ったカップと共に配られていきます。
大きさは2×3cmのミニサイズです。
円卓テーブルに中央には、小さなクッキーがたくさん入ったバスケットも置かれていました。
肌寒くなった体に、さつまいも紅茶がじんわり染み込んで暖まります。
「美味しいです、ジュディ様。 貴女は料理がお得意なのですね。 羨ましいです」
キラキラした目で、私を見つめてくださるアンリシェル様。
幸せすぎて鼻血出そうだが踏ん張れ私。
「ありがとうございます。 光栄です」
そう言って笑顔で、座ったまま軽く会釈します。
「まぁ。 とても優雅です。 見違えました」
と、美しい笑顔でお褒めの言葉が降ってきました。
「わわ、ありがとうございます。 アンリシェル様に褒めていただけて嬉しすぎです」
頬を真っ赤に染めて騒ぐ私。
「まあまあ、せっかく褒められたのに興奮してちゃいつも通りじゃない。 ジュディ」
マリーさんに言われてはっとした。
すぐボロがでてしまうわ。
付け焼き刃な私。
シュンとしていると、マリーさんから提案が上がりました。
「ジュディは本当に頑張ってるのよ。 私とクラヴィデスの前なら食事のマナーは、いつも合格点だもの。 よっぽど貴女に褒められて嬉しかったみたいね。 もう今日は無礼講でいきましょう。 お堅いマナーは抜きにして。 そうじゃないと楽しく演劇の話も出来なさそうだし」
どうかしら?とマリーさんは言います。
私はマリーさんにフォローを入れられつつ、無礼講のお誘いにワクワクしました。
でもアンリシェル様はどう思うかしら?
返答を待つと
「ジュディ様は、クラヴィデス様とお食事をしても緊張しないのかしら?」
そわそわした様子で私を見てくるアンリシェル様。
速答で「はい」と答える私。
どうしてそんなことを聞くのかしら?
あ、そうだわ。
アンリシェル様は、クラヴィデス様の婚約者でした。
全く緊張しないと言うのは、アンリシェル様の婚約者様なのに失礼かしら?
それとも私が、クラヴィデス様と仲が良くなって緊張しないと思われているかしら?
出会った時のアンリシェル様は、私をクラヴィデス様の浮気相手と誤解していました。
きっと正解はこうね。
「アンリシェル様。 私は顔の綺麗な男の人は苦手です。 クラヴィデス様に緊張しないのは、マリーさんの御子息様だからですわ。 マリーさんとクラヴィデス様のやり取りを見ていれば、憧れからは遠ざかるかと・・・・・ 私もアンリシェル様もクラヴィデス様も同じ13才ですが、ここでのクラヴィデス様を見ていると失礼ですが実家の弟と変わらない感じなんです。 絶対アンリシェル様のお邪魔をしないと誓いますわ」
一気に捲し立てて伝えてしまいましたが、どうでしょうか?
アンリシェル様を見ると、安堵の笑みを浮かべています。
これで正解だったようです。
好きな順位と言えば、アンリシェルが断トツ1位ですから。
私なんかに余計な気遣いは無用ですわ。
貴女が望むなら、浮気相手を絞めてきますから。
おおっと、素が出てしまいました。
危ない危ない。
悪い顔をしてしまってないかしら。
思わず強めに頬に触れ、顔を整える私。
マリーさんは楽しそうに私達を見ています。
「さあ、スウィートポテトも食べましょう。 甘い香りが堪らないわ」
そう言って手で摘まみ、ポイッと口に放り込みました。
「うん。 美味美味。 この大きさなら切らずに食べた方が美味しいわよ。 食べて見て!」
言われて私も口に入れます。
うん成功、美味しく出来てます。
アンリシェル様にも食べて欲しいな。
アンリシェル様を見ると、一口でいくかどうしようかを迷っているようです。
無理せず好きに召し上がって下さい。
生粋のお嬢様にはハードルが高いですよね。
食べて下さるだけで、私としては至福です。
私の作ったお菓子が、アンリシェル様の栄養になる。
最高です。
アンリシェル様を見つめていると、おもむろにスウィートポテトをつかんでいるのが見えました。
おおっ!そのままお口に運ばれています。
「美味しい! ジュディ様すごいわ。 今まで食べたスウィートポテトの中で1番美味しいです」
満面の笑顔で伝えられ、全力でにやけてしまいます。
「ありがとうございます。 食べて下さって嬉しいです」
幸せを噛み締めていると、クラヴィデス様がこちらに向かってきました。
「なんか腹減ったから、1つ頂戴」
そう言うと、マリーさんのスウィートポテトを口に放り込んでました。
「あ、いも良いね。 うまいよ、ご馳走さん」
挨拶もせず去っていくクラヴィデス様。
呆気にとられていると、マリーさんが慌てて謝ります。
「あの子はもう。 本当に挨拶もしないで、ごめんなさいね」
私もアンリシェル様も頷き、何ともないと伝えました。
「仕切り直ししましょうか。 そろそろ寒くなってきたし、続きは談話室でね。 その為にクッキーたくさん焼いてもらったの。 たっぷり歌劇の良さを語るわよ。 アンリシェル嬢は今日泊まれるの? 長い夜になるわよ」
フンフンフーと、鼻歌しながらお茶をセットしているマリーさん。
「あの。今日は泊まるつもりで来なかったので、何もないのです」
アンリシェル様がおずおずと答えると、
「そんなの家で用意するから大丈夫よ。 ジュディのじゃ、う~ん、ちょっと胸が苦しそうだもんね。 客人用のも、私のもあるし心配ないわよ。 じゃあ泊まるのね。 お家には連絡するから」
てきぱきと事が進んでいく。
1つ確かなことは、一晩中アンリシェル様と一緒ということだ。
神様ありがとうございます。
私は手を組んで、神に祈りを捧げたのでした。




