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誤字の報告ありがとうございました。
大変助かりましたm(_ _)m
読んで下さりありがとうございます( ´∀`)
「全ては、アンリシェル様のお隣に並ぶ為に!」
私は右手を振り上げて、毎朝自分自身へ掛け声をかける。
あんなに嫌だと思っていた勉強も、始めてみればなんの問題もなく、ただただ新しい知識を知ることに新鮮さを覚えた。
ただ時間が足りない。
読んでも読んでも、暗記することがあるのだ。
これはマリーさんに習った勉強法だが、イメージの中で体の各部分に引き出しを作って、そこに覚えた知識を入れるように考えると、整理がしやすいそうだ。
一番大事な知識は、アンリシェル様のことだ。
と言うことで手始めに、心臓の引き出しにアンリシェル様との出会いを入れる。
勿論、あの時の笑顔も。
香りや揺れる髪の感触も。
胸に手を当てれば思い出すわ。
こういう感じで良いのかしら?
うん、何かやれそうな気がする。
得意の算術(出来るのが算術しかないとも言う)は、左腕に入れていく。
古いものは下に、新しいものは上に積み重ねていく。
所々、大事な部分に色つきの付箋を付けるイメージもしながら。
時間がないので、夕食後も机に向かう。
片っ端から暗記物を読み漁り、イメージの机に整理し午前2時には就寝する。
本当はもっとやりたいのだが、初日の夜にマリーさんに怒られてしまったのだ。
「まあ。なんてことなの、こんな遅くまで。 若さに甘えちゃだめよ。 目の下にクマが・・・ なんてことなの! クマは血流が悪くて、老廃物が溜まっている証拠。 血流の乱れは全身の乱れ。 肌荒れのみならず、便秘や皮膚の修復にも影響が。 嫁入り前のお嬢さんを預かっている私が・・・あぁ」と言って、膝からゆっくりと倒れ込む。
あ、なんかこれ。 歌劇っぽいわ。 やりたかったのかな?
黙っているとマリーさんが、ジィーと見てくる。
目を合わせ、二人で吹き出す。
「ふふふっ。 あははっ。」
「もう。勉強止めなさいよ、ああ恥ずかしい」と、マリーさんは口に手を当てて、笑いながら喋り出す。
私も堪えきれず「だって気持ち良さそうに、演劇のように動き回って話してるから、止められませんでした」と返すと、
またマリーさんが「そうよね。 ごめんなさいね」と言ってまた笑うので、私も貰い笑いしてしまう。
そのうちに、我慢できなくなったクラヴィデス様が「もう、何時だと思ってんの? 早く寝ろよ」と目を擦りながら怒っている。
「ごめんなさい。 寝ます」と私とマリーさんは同時に謝った。
「本当に頼むよ。 明日は体術の授業あるんだから」はあぁと、手で欠伸を軽く隠しながら去っていく。
また顔を合わせて、今度は声を出さないように口に手を強く当てて「クププッ」と笑い、頷きあってマリーさんも去っていった。
クラヴィデス様怒ってたなぁ、でもパジャマ姿弟みたいで幼い感じがした。 いつも上から目線で、薄ら笑いしか見てなかったのでなんだかちょっと安心した。
「今日はもう寝よう。明日謝らないと」と思っているうちに朝が来てしまった。
朝食の時に謝ろうと思ったが、既に朝食を済ませて学園に出発していたようだ。
この日はマリーさんと二人で朝食だ。
「おはようございますマリーさん」挨拶してカーテシーをし、席に着く。
「おはようジュディ。 昨日はごめんなさいね。 眠れたかしら」頬に右手を当て、俯いて話されている。
「こちらこそ、すいません。 心配してくださったのに、笑っちゃって。 クラヴィデス様にもご迷惑おかけしました」そう言って頭を下げる。
右掌を胸の前で何度も振って「違うの違うの。 あの子はどうでも良いのよ。 歌劇のノリが止まらなくて、つい調子に乗っちゃったのは私よ。 貴女の反応がまた良いから。ごめんなさいね」マリーさんはしゅんとして俯きぱなしである。
私はおずおずと「私も楽しかったです。 また見たいです。 あ、でも何の原題か解らずに語るのは失礼ですよね。 神話か文学作品かに区別もつけられずに語るなんて」ぼそぼそと呟くと、マリーさんが目を輝かせている。
「ええ。 良いの、またしても。 じゃなくて興味ある感じかしら。 嬉しいわ。 あ、私のはフィガロの結婚からの旋律よ」ふふっと本当に嬉しそうに語る夫人は可愛いらしい。
マリーさんの推しは歌劇なのねとほっこり。
聞けば、最近伯爵は多忙で帰りが遅く、歌劇について砕けて話せる方も少ないという。
うん、でもあの情熱をぶつけると、相当歌劇が好きな方でないと、後々の付き合いで何か言われかねないわね。
探すといると思うんだけど、身分があるから難しいか?
一番は、歌劇好きな伯爵と盛り上がることだけど、責任のあるお仕事だから時間を取るのは大変だよね。
そう言うことなら「私で良ければ教えてください」
そう伝えるとマリーさんは、ぱあっと明るい顔をして「ええええ、勿論よ!」と喜んでくれた。
その後は座学の授業を午前中受け、昼食で食事マナーのチェックを受け、また座学を受け、15時からお茶会をして、夕食まで部屋で自己学習し、夕食でマナーチェックを受け、入浴してから机に向かう。
マリーさんとの、午前2時までには就寝する約束は守っている。
それ以降でマリーさんに見つかれば、歌劇+クラヴィデス様のお怒り(もある可能性)が待つこととなる。
もうご迷惑をおかけしないためにも、約束は守ろうと思う。
アンリシェル様とは、細々と手紙のやり取りを続けていただいている。
たくさん書きたいことはあるのだが、そのまま書いてしまうと恋文のようになるので、しっかり考えマリーさんにチェックをして貰って出すので、1回/週程度となっている。
マリーさんからは、返信が来るまでは出さないように言われている。
それは相手の状況もあるし、相手からの手紙をじっくりと堪能する風情も大切だからだそうだ。
こんな風に手紙をやり取りするのは、初めてなので勉強になります。
お茶会で聞くと、マリーさんの体験談も混ざっているとのこと。
ほぼ毎日、手紙で思いを送り続けてしまい、伯爵(学生の時はブルガリア様)に直接、手紙が多くて返事が追い付かないと言われたそうだ。
伯爵はこの押しの強さに(嫌じゃなかったから)やられた訳だが、これも人によるわと、反省と共にしみじみ言われていた。
なるほど。 恋文の話のようだが、自分にしっくりくる。
ありがたいです、マリーさん。
そして「明日のお茶会にアンリシェルさん来るから、楽しみにしててね。 お肌荒れるから、今日は早く寝るのよ」としれっと言うマリーさん。
「え~~~~~」と大きな声で叫んでしまう私。
もっとちゃんとしてからと思っていたのに。
でも嬉しい。どうしよう!と言いながら、表情筋が緩みっぱなしの私でした。




