霊感のある子
知り合いにさ、
アタシ霊感あるんだよねー。
って言う子がいるんだよ。
ちなみにおれは霊感なんてないよ。
その方が幸せだと思うけどな。
だからそういう話は聞き流してたんだ。
興味もないし。
その子さ、
大勢の飲み会とか、初めて話す相手がいるとその話をしたがったんだよな。
それで相手の興味を引こうとでも思っているのか知らんけど。
大抵は聞き流すか、嫌がって別の話に変えようとするかだよな。
ただ、中には面白半分で話に乗っかる人もいる。
そういうときにたまたま近くの席にいたりすると、話の内容まで聞こえてきちまうだが、その子はいつも違う話をしていた。
ああ、話が食い違うって意味じゃなく、別の体験の話って意味で。
話のレパートリー多いのはすごいよな。その点は素直に感心してる。
ある飲み会でさ、女友達と話してたら、その子も近くで別の人と話してたんだよ。
また話が聞こえる距離。
相手は知らない男だった。
その男、霊感があるってことをまったく信じなくて、真っ向から否定してた。
そしたら霊感の子が不機嫌にこっちに話しかけてきたんだ。
「めっちゃ疑われるんですけどー。
ありさちゃんは信じてくれるよね、アタシの話。」
そう言った。
ありさは女友達の名前だ。
完全にとばっちりだよ。
ちらっとありさを見ると、真顔で返事をした。
「信じるわけないでしょ。」
そしておれが座っている側の窓を視線とあごで指して続けた。
「だってあんた、それ、視えてないでしょ。」
帰り道、
ありさは「あれは冗談だよ」って言って笑っていた。
だけど、あの時の冷たい目つきと声を忘れることができない。