表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

日だまりの魔王と夜闇の魔王

今ではない時


此処ではない場所



二匹のキツネの……



哀しい物語――




陽だまりの魔王

夜闇の魔王




ある世界に、二匹の狐がいました。


一匹は金色の毛並みのキツネ。


もう一匹は銀色の毛並みのキツネ。


 世界には、二匹の他に茶色い大地と真っ黒な海しかありませんでした。

二匹のキツネは、このままだと寂しいので、大地と海以外の何かを作ることにしました。



――金色のキツネは、日だまりの空を。



――銀色のキツネは、月の瞬く空を。



 それぞれ精一杯の優しさと、愛を込めて作りました。


 すると、世界は輝きだし、茶色い大地はみずみずしい緑に包まれ、真っ黒な海はきらきらと輝く青に変わり、いままでに存在しなかったものが次々と生まれました。


――空を飛ぶ鳥。


――海を泳ぐ魚。


――大地を駆ける動物。


 たくさんのものが生まれ、人間と呼ばれるものも生まれました。

でも、せっかく生まれたのに、みんなすぐに消えて無くなってしまいます。

それでも、またすぐに形の違う新しいものが生まれて……、消えて……。


 世界はどんどん変化して……。


変わらないのは、二匹のキツネと、二匹が造った空の色だけ……。



 ある時、人間たちはふと思いました。


「なぜあの二匹のキツネだけはずっと変わらないのだろう?」


みんな、かわっていくのに。


「おかしい」


「おかしい」


 人間たちは急に二匹のキツネのことがこわくなったのです。

彼らはいつまでも姿が変わらないこの二匹のキツネを『魔王』と名付け恐れ始めました。


 ある日、人間たちは真っ暗な夜になったあと、二匹のキツネが住んでいる森の中へと向かいました。

木々に囲まれひっそりと建つ塔の中、二匹のキツネがぐっすりと眠っているはずです。


人間たちは、その塔に大きい鎖をぐるぐると巻き付けて、二度とキツネが起きることのないよう魔法をかけました。

そして、その塔をどこか違う空間に移動させたのです。



 夜が明けて、びっくりしたのは銀色のキツネ。

夜空の下を散歩して帰ってきたら、帰るはずの塔がありません。

金色のキツネも見当たりませんでした。

銀色のキツネは人間たちに聞きました。


「金色のキツネと、お家はどこにいったの?」


人間たちは苦い顔をして何も答えてくれません。


 銀色のキツネにはなんとなく解りました、この人間たちが自分の大切なモノを隠したことが……。

それでも、銀色のキツネは人間たちを責めたりはしませんでした。

キツネはこの世界に存在するものすべてを愛していたからです。


 銀色のキツネは金色のキツネを探す旅に出ました。


……でも、何処を探しても見つかりません。



 何年も、何年も、銀色のキツネは金色のキツネを探し続けました。


……それでも、やっぱり見つかりません。



 銀色のキツネはあきらめずに探し続けます。



何年も……何十年も、……何千年も。



 銀色のキツネの体は疲れてどんどん小さくなっていきます。



それでも、それでも、さがしつづけました。



……。


…………。


――…………。



 もうどのくらい時が流れたのか、銀色のキツネにもわかりません。



キツネの体はてのひらくらいに小さくなり、……やがて青い石になってしまいました。




 それでも、キツネは探し続けています、大切な、大切な……ともだちを。


石になっても探し続けているのです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ