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3年後の二人

異動した先輩、大沢元と後輩の松丘美幸の3年後

あれから、3年が過ぎた。


あの夜。

先輩…大沢さんからの返信を読んで、体から力が抜けてしまった。

本当は分かってた。

受け入れてくれないだろうって。

でも、もしいいよって言ってくれていたら。


彼に彼女がいた時から好きだったの。

分かりきってる片思いなのに、諦めきれなくて。

結婚すると聞いて、もう想っていてはいけないんだと、悲しかった。

でも、その後異動が原因で別れたと聞いてしまった。

ものすごく自分勝手だけど、希望の光が見えたと思ったの。

もしかしたら、受け入れて貰えるかもしれないって。

だから最後に会いにいった。

だけど、始まる前にドアは閉じてしまった。

もう、開かないんだ。


同期に誘われて合コンして。

彼に似てない人と付き合った。

好きになったつもりだった。

「俺のことほんとに好きなの」って、冷たい目で言われてサヨナラした…

そう、彼に似てない人は彼じゃない。

似てる人だって彼じゃない。

ただ、似てる人なだけ。

私は、何をやっているんだろう。

こんな重い女、彼じゃなくても嫌がられるに決まってる。

慰めてくれようとして飲みに誘ってくれた同期にも、もう、オトコなんていらないと、管を巻いて呆れさせちゃった。


大沢さんが行ってしまって、2年が過ぎた頃。

もう、彼を忘れようとするのに疲れて来ちゃった。

無理に誰か探したり、忘れたりしなくてもいいかなって、ようやく思えるようになった。

そう思えたら、あんまり思い出さなくなって。

仕事頑張ろうと決めて、とにかく仕事に打ち込んできた。

契約を取れることも、お客様とお話することも、地味な事務の仕事も。

やりがいがあって楽しかった。


そんな日常が普通になって、もう彼のことを忘れられるかなってぼんやりと思ってた。

…なのに。

戻ってくるって、噂話を聞いた。

ただの噂話じゃないの、どうなのって人事の友達に聞いたら、本当らしい。

どうしよう。

どんな顔をしたらいいんだろう。

それよりも、彼と顔を合わせたらまた好きの気持ちが、燻ってしまう。

気持ちの整理がつかないまま、彼が戻ってくる当日になった。

もうすぐ、あのドアを開けて彼が入って来る。




あれから、3年がたった。


慣れない土地での営業の仕事は、精神的にキツかった。

仕事で無理やり饒舌になっているからだろうか、終わると無口になってしまう。

環境が変わったのに気持ちが追い付かなくて、余裕がなかった。


あんな返事をしたくせに、後輩の彼女のことはよく思い出していた。

新人の頃研修で外回りをしていて、四六時中一緒にいた。

よく、彼女の目がすがるように追いかけて来るのには、気づいていた。

一生懸命で芯が強い彼女の目を受け止めたら、きっと俺は彼女に気持ちが向いてしまう。

いつ頃からかそれは分かってたけれど、気づかないふりをしていた。

結婚を約束した、同期の美香がいたからだ。


異動の話が決まった時、結婚して一緒に行こう、と美香に伝えた。

結婚するつもりなんだから、当たり前だと。

でも、美香は悲しげな顔で言ったのだ。

「連れて行きたいのは、私じゃないでしょう」

「え…」

美香からそんなことを言われるなんて。

いきなりだったから、狼狽えてしまった。

「俺はお前に結婚しようって言っただろ」

「前にね。でも今は違う。私、知ってるよ。あなたは、後輩の彼女の気持ちに応えたいはず」

「後輩の…」

「分かってるでしょ。私は別の人を想ってるあなたと、知らない土地に行く気はないよ。」

「なんで、今そんなことを?いきなりなんだな」

「いきなりじゃない。あなたは彼女の研修を担当してから、気持ちが変わったんだから」


結局、美香とは別れてこの土地に来た。

…アイツの言うことはもっともだ。

あのときもう、気持ちは後輩の彼女に向いていた。

でも。

だからと言って、すぐに受け入れるなんて出来ない。

二人の距離が離れて、もう俺を忘れてしまうかもしれない。

それはそれで、しょうがない。

そう思っていた。

そこへ、後輩の彼女からのメール…

自分の気持ちは分かってるのに、拒絶した。

こんな優柔不断な男は、彼女には似合わない。


仕事に慣れ、土地にも慣れて来てもうすぐ3年。

慣れてくるにつれこの土地が好きになってきた。

遠い先にあるだろう、転勤も無ければいいなあと思っていた。

その、矢先。

まさかの出戻り。

前にいた課の管理職が退職して、押せ押せで主任の席が空いた。

そこへ入れと言うのだ。

…何のために異動させたんだ。

イラついたけれど、どうしようもない。


気になるのは、彼女のこと。

あんなこと言っておいて、また会うはめになるなんて。

どんな顔をすればいいのか。

あまり近寄らない方がいいのか、何もなかった振りで以前の様に接すればいいのか。

ぐるぐると考えているうちに、再びの異動日が来てしまった。

あのドアを開けたら、彼女がいる部屋。

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