表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

おい魔王そんな泣くなよ。

「ついたぞ勇者」

「とーちゃーく。あーと、勇者じゃねえ」

魔王に担がれ歩くこと20分。

目の前に大きな山と、その山の中心に繋がるであろう空洞。それらが待ち構える。

「ん、なんだ、結構涼しいし風が吹いてる感じするな」

ほー。と言う風切り音のようなものが聞こえ、中からは何かしらいやーな気配を感じる。

「ああ。ところで勇者」

「どーした魔王」

毎回のように勇者じゃないって突っ込むのもめんどいな。


「そろそろ降りてくれ。流石の魔王でもこれは疲れたぞ」

流石の魔王て。自分で言うか。

「しょーがない、降りますかねー」

流石の魔王でも疲れるそうなので素直に降りた。

「そんじゃ、まだ見ぬ金持ちモンスターを狩りに行きますか」


その言葉を外に置いて、俺と魔王は仄暗い洞穴へ潜っていった。



*    *    *    *



「少し薄気味悪いな・・・」

「そーか?魔王の城ほど物騒じゃねーだろ」

入って数分。ちらほら聞こえる骨みたいな音の他には特に何もなさそうなただの闇。まだ魔物と出くわしてはいない。

こんなところで薄気味悪いっていうなら歴戦の勇者の白骨がそこら辺に転がっている魔王城はどれだけ刺激的な事か。

「今の私はほとんど人間みたいなものだ。感性もそこら辺の女子と大差ない。と、思う」

やっぱ自信ないのかよ。魔王が自室で怖いから怯えてるってなんだよどこの幼女だ紹介しろ。

「とにかく、普通の敵でもいいから出くわしたいもんだな」



「おー。25ゴールドか、なかなかかもな」

更に時間を重ねること数分。

ようやく見つけた魔物を討伐する。

音の正体はコイツだったらしい。見た目はもう骨だった。

水魔法でコイツを包み、圧縮したら砕けた。

「しかし数がいないな。これでは先ほどと大差ないどころかむしろマイナスじゃないか」

魔王の言ってることは真っ当だな。探しに探してこの金額では釣り合わない。

「大物を倒して一攫千金。そこにロマンがあるんだよ魔王」

でもレアモンスターと会えたら金もらえるしなんかちょっとうれしいじゃん?

「・・・はあ」

何を呆れてるんだ魔王よ。男はこういうのが好きなんだよ許してくれよ。



「おい魔王よ」

「どうした勇者」

そしてさらに数十分。

少し魔物が湧きやすい地点を見つけ、そこで狩りをしていたら700ゴールド強と、かなり稼げてきた。

それで疲れたのだろう。なんか知らんけど口走っていた。

「そろそろ揉ませろ」

「ああ・・・。なっ?!」

魔王も魔王で空返事をしてしまうほどに退屈というか単調な作業だった。

「あー嘘。嘘ついたわ」

「な、なんなんだ急に・・・」


「ちょっとうずくめさせろ」

俺の嘘発言に胸を撫でおろし安堵していた魔王をよそに、否応なしに顔を谷間に挟む。

あー至福。

「おっ、おい勇者!」

「・・・」

無言で俺は魔王の腰に手を回し、きつく抱く。

「ゆっ、勇者、こんなところで・・・だめっ」

手をわたわたさせ、照れているのか顔を真っ赤に染め上げ、小さい声と共に温かい吐息を漏らす。

「家帰ってからって・・・んっ・・・約束したあっ・・・だろ」

魔王は甘い声で今はだめと、そう言う。

てか家に帰ったら本当にやって良かったのかよと、声には出さないが突っ込んだ。


「はー最高だった。疲れが吹き飛んだ気がするわ。さんきゅーな魔王」

「もう私たちの関係ってなんなの・・・」

一分位顔をうずめてただけなのに魔王があんあん言うから流石に色々まずくなってやめた。

火照った体の熱を逃がすようにもじもじと体を動かす魔王。

気づいてないのか魔王よ。その動き方のせいで胸がゆさゆさ揺れて俺の下腹部がモリモリしている事に。


あー。早く家帰りてえ。


そんな俺らをよそに、近くでまた骨の音が響いてきた。

今回の骨の音はなんだか高音だな、と思いつつも欠伸して戦闘隊形に入る。

「さーて、再開と行きますかー」

「勇者、次は私が倒そう」

気を取り戻したのか、ちゃんとしているときの魔王の声(甘くなってない声)で宣言する。

「おー、そっか。んじゃファイトー」

前衛後衛を入れ替える時に見た魔王の顔はまだ熱っぽかった。

・・・魔王のやつ、実はまだ平気じゃないな?

コイツ平気な振りして戦闘で紛らわせようとしてやがるな。ふっふっふ、可愛いやつめ。

後ろから少し脅かしてやるか。

音の方向に目をやってこちらの存在に気付いていない魔王。

そっと近づき・・・。


つん。

「ひゃあっ!」

首筋を人差し指つんっとしてやったらビクッてなってシュッてしゃがんでギュってした体育座りみたいになった。

やべえ語彙力ねえ。

「うっうぅ~・・・。ひぐっ。やめてってば・・・ぐすっ」

本当に驚いたのか、ガチ泣きを始めてしまった魔王。

この魔王時々女の子になるのやめてくれないかな。悪いけどめっちゃ可愛いんですが。

「悪かったって、そんな怯えなくても俺だよ。急に敵が現れたりとかしねえって」

「そういう・・・ぐすっ問題じゃ・・・ないし・・・ばか」

うーむ、怒ってしまった。こういうときどうすればいいかなんて分からんから・・・。

とりあえず撫でとこ。

「ん・・・ん」

お、気持ちよさそうにしてる。もしかしたら正解じゃね。

まあ、魔王が泣き止むまでこうしてよ。


カランカラン。



・・・あ、敵がいるの忘れてた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ