魔王が可愛すぎて辛いんだが。
「はーいとうちゃーく」
「ようやくか・・・。もう私疲れて動けない・・・」
二日歩きに歩いてようやく我が家に到着。
相変わらず家には誰もいない。まぁ、自分で稼いで建てた家だし、中に誰もいなくて当たり前だけど。
「お、動けないのか?夜が楽しみだな」
「な、なにするつもりだ!ばか!へんたい!」
自分の肩を抱いて、俺を睨めつける魔王。なんだ、そんなに胸を寄せて。揉んでほしいのかこいつは。
手をわきわきしながらその双丘に目を凝らして近づいていく。
「来るなばかもの!触るなへんたい!」
魔王は涙目になりながらも必死に抵抗してくる。
そんなに抵抗されたら流石に善人な俺はやめますよ。
「あーもうわーったよ。・・・でも、馬鹿って言ったからお仕置きはしないとなぁ?」
「そ、それは不可抗力で・・・あっ・・・ん・・・っ!だ・・・めっ・・・っ」
うーん。お仕置きは大事だね。
* * * *
「・・・魔王よ」
「なんだへんたい」
翌日。
昨日はマラソンランナーも驚愕な距離を歩いてきたから二人ともベッドにつくや否やすぐに寝てしまった。
もちろんベッドは同じ。いやはや、すぐ寝てしまうなんてなんてもったいないことを。
まあいい、チャンスならいくらでもあるからな。
「変態とは何事だ。私は実に遺憾であります・・・」
「胸に顔をうずくめながら何を言っても説得力はないぞ勇者」
魔王と出会ってからもう何回もハニーなトラップを仕掛けてる甲斐があったか、もうこの程度では騒ぎもしなくなった魔王。いやはや、慣れとは怖いものだな。
・・・あーふわっふわのもっちもち。
「それは仕方ない。目の前に果実があればかぶりつきたくなるものだよ・・・。あと、俺は勇者じゃないってーの」
そろそろ魔王が逃げちゃうかもしれないし、そろそろ顔を上げますかね・・・と。
谷間からぬぽっと顔を抜き出し魔王の顔を見ると、目を背け、頬を朱に染め上げ体をよじらせもじもじしていた。
はっはーん。さては魔王平気な振りして実はこの状況にドキドキしてたな?
俺がニヤニヤしながら魔王を見ていると
「こっち・・・みないで・・・ばか」
と、小声で言ってきた。
ガチ照れしてたのかよ魔王。
「それでだな魔王よ」
リビングにて魔王が作ってくれた朝ごはんを食べながら会話を始める。
今日の朝メニューは焼き魚に味噌汁、根菜海藻の入ったサラダ、手作り野菜ジュースだ。
焼き魚は小骨の一つ一つまで丁寧に取られていて口内に骨が刺さらない。味噌汁は味付けがあっさりしていて落ち着く。野菜ジュースは俺の苦手な野菜も入っているのにぐいぐい飲めるほど美味しい。
・・・魔王って何なんだろうな。
「どうした・・・。おい、口にご飯粒がついてるぞ・・・」
反対側のテーブルから体を伸ばし、俺の口についていたというご飯粒を取る。
はぁ~、ここから見える景色は絶景ですな。
袖の間から覗く白く綺麗な腋。
重力で垂れ下がった服の隙間に見え隠れする谷間。
それに一切気づかず俺のほっぺたあたりを触る魔王の顔ったら。
・・・非常にかわいいではないか。
「んお、さんきゅー。で、話の続きなんだが」
いけない。確かに魔王は素晴らしく可憐な美少女だ。だが俺が彼女に見とれてしまってどうする。
「お金がないから稼ぐぞ」
「そうか。それで、何をする予定なんだ」
「魔物を狩るのが一番楽じゃないかなー」
魔王が魔物を倒すなんて変な話はないかもだけどな。
「でも、今の私じゃそんなに貢献できないかもしれないぞ?」
案外魔物を倒すことに否定はしないんだな。
「へー。今ってどんくらいの力あんの?」
流石にそこら辺の雑魚は倒せてくれないと将来的にも困るんだが。
「さあな。以前戦った事のある勇者と比べて・・・その40倍位かそこらだと思う」
馬鹿かおめー。それを最も強いと書いて最強と呼ぶんだよ。
「ならなんも問題はないな。今日は面倒だし明日から戦いに行くか」
「ああ。分かった」
「それじゃ明日になるまで楽しもうか魔王よ」
「なっ!?」
今後の予定。
とりあえず金貯めて、引っ越そう。
そしてここを借家にして収入源にする。
それから行ったことのない南のほうへ冒険しよう。
魔王といっても全世界を掌握してるわけじゃない。魔王の知らない敵とも戦っていこう。
そして、目標は俺が全世界最強の存在になる。
とまあ、ここまでが最初の目標ってわけでいいかな。