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第八話 天翼族と悪魔族

アザゼルが放った【暗黒炎弾】は、ハルキの【神速】によって、躱──せなかった。何故なら【暗黒炎弾】は、名前の通り黒い炎の弾だったが、それは最初だけで、途中で見えなくなったからだ。それだけなら、【危機察知】を使用して躱す事も出来た。が、【暗黒炎弾】は速かったのだ。だから【危機察知】と【瞬発】の派生スキルである、【神速】でも躱す事が出来なかった。


たった数秒で分かったが、六天魔の一人に数えられているアザゼルと、落ちこぼれだったハルキとの差は歴然だった。それほどまでに呆気ない。


直撃した【暗黒炎弾】によるダメージは咄嗟に使用した【硬化】によって軽減出来たが、完全には防ぎきれなかった。


「弱いねぇ、君。これじゃあ、すぐに死んじゃうよ?」

「確かに僕は弱い。だけど、僕は一人じゃない。シルさんがいる。だから、負ける気がしない! ふぅー。シルさん! 僕は前に出るから、後衛よろしくお願いします!」

「仕方ないわね。私が撃った魔法に当たらないでよね!」


ハルキが前衛で、シルが後衛。このフォーメーションは最強だ。そう信じてハルキは、アザゼルに向かって走る。剣を抜き、【硬化】の派生スキルである【硬化付与】と、【風纏ふうらい】で、硬さと斬れ味を上げ、アザゼルに向かって、斬り上げ、斬り下げ、水平斬り。


「【暗黒炎剣】」


黒い炎の剣を作ったアザゼルは、ハルキの攻撃を簡単に捌き、後ろに飛んで、距離を取ってから反撃をする。


「【暗黒炎斬】」


黒い炎の剣、すなわち黒炎剣から、黒い炎の斬撃をアザゼルは飛ばして来たが、ハルキはそれを躱さず突っ込む。何故なら、シルが防いでくれるのを信じているから。


「【光壁】! 【能力強化】!」


無詠唱で発動した【光壁】は、【暗黒炎斬】を相殺し、【能力強化】でハルキのステータスを上昇させる。


【能力強化】は、【身体強化】と違って、自分以外のステータスを上昇させる魔法。上昇倍率は、3倍。つまり、ハルキのステータスは今、30000オーバーとなっている。効果時間は、約3分。この3分間でどうにか勝負を決めたい。その理由は後ほど。


【神速】と【気配遮断】を使用したハルキは、一気に畳み掛ける。ステータス30000オーバーで使用したスキルは、普段の時とは、効果が違い過ぎた。六天魔に数えられているアザゼルですら、反応出来ていない。


「【神聖光線】! 【閃光波】!」


アザゼルの体には、ハルキの攻撃によっと、切り傷が次々と刻まれ、シルの【神聖光線】で皮膚を焼かれ、【閃光波】で右腕を切り落とされる。血を撒き散らすアザゼルに、最後の一撃を入れて決着をつけようとしたハルキは後ろに飛んで、アザゼルと距離を取った。


アザゼルの体はボロボロで、満身創痍で動く事もままならないはずなのに、ハルキは【危機察知】で自分の身に降りかかろうとしている危機を察知したのだ。


それもそのはず、彼は、アザゼルはまだ、本気を出してすらいなかったのだから。黒いツノを二本と、黒い翼を肩甲骨辺りから生やし、黒くて禍々しい霧に包まれた。


それからしばらくして、その霧は晴れ、姿を一変させたアザゼルが姿を現わす。ハルキに負わされた無数の切り傷、そしてシルに焼かれた皮膚と切られた右腕を再生させ現わしたアザゼルは、口を開いた。


「ふはははははっ! これで終わりと思ったか、雑魚が。貴様らに本気を出さねばならんとはな! それじゃあ、死んでください!」


……終わったな。アザゼルが本気を出したのにも関わらず、【能力強化】の効果が切れた。……やべぇ。それからシルの魔力が一気に削られてしまった。【能力強化】は、自分以外の人のステータスを3倍上昇させるのはいい。が、その反面、効果が切れた時の魔力の消費量がハンパなく多いのだ。だから効果が切れるまでの3分間で勝負を決めたかった。


「どうしよう。こうなったら、『あれ』を使うか? いやでも、『あれ』を使ったら──」

「何をブツブツ言ってるんですか!」


そう言ったアザゼルは、たった数コンマで30メートル以上離れていたハルキとの距離を詰め、蹴り飛ばされる。


ブチブチだか、バキバキだかよく分からない音が、蹴り飛ばされたハルキの体から発せられ、そして、ハルキの口からは血が吐き出され、そのまま壁に衝突した。


バン! という壁に衝突した音と同時に、ハルキの肺から空気が漏れる。空気を取り込むために只々必死に喘ぎ、空気を全身に巡らそうとするが、ハルキは気づいてしまった。


ハルキのお腹から背中にかけて、風穴が空いている事に。それに気づいたハルキを支配したのは、たった一つの言葉だった。


──痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。


そうそれは、痛いという三文字の言葉だ。血液がお腹から、背中から噴き出され、ハルキの命を散らしていく。


──ヤバい。死ぬ。えっ? 死ぬ? 誰が? 僕が? 何のために? 何で? 意味が分からない? 分かるわけがない?


『じゃあ、死ねよ』


そう誰かに言われたような気がして、ハルキは意識を失った。


「くっ、ははははは! 雑魚が調子に乗ってるからこうなるんだよ! 人間風情が、悪魔である私に刃向かうから、無様に命を散らするんだよ」

「貴様っ! ……お前の狙いは、私じゃなかったのか!」

「確かに私の狙いはあなたです。ですが、あの人間は刃向かったのです! なら、私も彼を敵とみなし、戦わなければならない。……弱い者は、強い者に殺される。それは、当たり前の事。ですよね、天翼族フリューゲルの王女様?」

「……何故、その事を知っているのかは分かりませんが、私も本気を出さねばならないようですね?」


天翼族の王女様であるシルはそう言うと、光のオーラに包まれて、姿形が変わっていく。体の内にしまっていた白い翼が姿を現し、体中には、白色の電撃が走り、頭の上にはクラウンが、右手には白と水色の杖が生成された。


「おぉ! これは凄い魔力だ。最初から本気を出していれば、彼は死ななくて済んだかもですね」


「黙れ。ハルキは、後から私がどうにかする。取り敢えず貴様は、殺す。【閃光神波】!」

「ふっ、遅い。私とあなたでは相性が悪すぎる。今から、あなたを彼と同じところに送ってあげますよ。【魔神剣】」


シルが発動した魔法を軽々躱したアザゼルは黒い剣を創り出し、シルの懐に入り一閃。だが、その行動はシルには読まれているだけでなく、利用された。


シルが創り出していた杖、【シルフィード】は剣にもなるハイブリッド構造。剣モードに変形させた【シルフィード】は、アザゼルの右肩から左脇腹を目掛けて一閃。流石のアザゼルも、それには反応出来なかったのか、シルの攻撃をまともに食らった。


シルの攻撃を食らったアザゼルの右肩から左脇腹は、血液を噴き出しているが、痛くないのか平然としている。それだけではなく、アザゼルは口を開いて、こう言った。


「痛いじゃないですか。まさか、その杖が剣にもなるとは思いませんでしたよ。ですが、この勝負私の勝ちです」


未だに血液を噴き出しているアザゼルは、ニヤリと不敵な笑みを浮かべる。その笑みを見たシルは、突然苦しみ始めた。


「ゔっ。はぁ、はぁ。き、貴様、私に何をした」

「何をしたんでしょうね」

「黙って答えろ」

「怖い、怖い。せっかくの美しい顔が台無しですよ」

「教えろって言ってるんですよ」

「 ……はぁ、仕方ないですね。もうすぐ死ぬあなたには特別に教えてあげましょう。まず、私はあなたを斬ろうとして、懐に入ったわけじゃないんです。私は、あなたを呪う為に懐に入ったんです。あなたの左胸を見てください」


シルはアザゼルに言われた通り、左胸に視線を落とす。そこには、確かに呪いを帯びた黒い刻印が刻まれていた。だけど、シルにはそれがいつ刻まれたものなのか分からない。


「いつ刻まれたのか分からないのは当たり前ですよ。その黒い刻印を刻んだのは、私ですが、私ではないし、その私は、あなたには見えていないのですから」

「……そういう事ですか。私は勘違いをしていました。あなたの六天魔としての権能は、【不可視】だと思っていましたが、本当は【平行時空】。それであってますね?」


【平行時空】は、平行世界、つまりはパラレルワールドを創り出す能力。だけど、アザゼルが創り出すパラレルワールドは、唯のパラレルワールドではない。本来のパラレルワールドは、こことは違う世界には干渉出来ない。だが、アザゼルが創り出すパラレルワールドは、アザゼルだけは、こことは違う世界に干渉出来る。つまり、シルに呪いをかけたのは、こことは違う世界のアザゼルという事だ。


「はい、正解です。よく、この短時間でそこまで考えついたものですね。賞賛に値します。ですが、あなたはもうすぐ死ぬ」

「認めたくはないがそのよう──ね? え? 何? この魔力。今まで感じた事のない魔力。だけど、この魔力は……」

「ふっ、ふははははは。彼はやはり面白い。薄々は感じていたが、まさか彼がそうだったとは」


青と黒の電撃を体に纏わらせているハルキは、心の中でこう呟く。(常に5パーセント、魔人の力を今、安全に解放出来る限界許容範囲は5パーセントだ。それ以上は、体がもたない)と。それからハルキは、こう歩きながら言った。


「おい、アザゼル。あまり調子に乗んなよ。シル、少しだけ待ってろ。俺が今すぐこいつを殺すから」と。






















明日も投稿します! よければ、感想、ブクマよろしくお願いします!

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