第六話 成長率
次々と洞窟を制覇していくハルキは、現在二五層目に到達していた。どうやらこの洞窟には、下へ行く事が出来る階段があり、いくつかの階層で区切られているらしい。
その階層を下に降りる毎に魔物が強くなっていき、一つの階層分の面積も広くなっていく。そのせいで一つの階層を制覇するのに徐々に時間がかかってきていた。
一層目を制覇するのにかかった日数は三日くらいだったが、今制覇しようとしている二五層目は既に一週間は経っているのに、未だ制覇出来る気配すらしない。
一体どれぐらいの広さなのか、なんて考えたら頭が痛くなりそうだ。
だけどただ広いだけではなく、明らかに進むペースも落ちていっている。
何故なら魔物が強くなってきており、一対一でないと安定して倒せなくなっているからだ。
だが、魔物が強くなるというのは、ハルキにとっては嬉しい事。
何故なら魔物が強くなるという事は、魔物を喰う事によって、もたらされるステータス上昇値の上昇、魔物を倒す事によって獲得する経験値の増加。そして、魔物の心臓部分である魔石の良質化に繋がる。
その事から、結果的にハルキの成長速度が桁違いに跳ね上がるからだ。
魔石に関しては、ハルキの成長速度に直接関係してはいないが、近い将来必ずある武器を造る時に使う気だったので、ハルキの戦闘力には関係してくる。
「おっと、早速僕に殺られに来たか。数は──二十、いやそれ以上か。少しきついか」
トカゲみたいな魔物、いわゆるリザードマンに囲まれている事に気付いたハルキはそう呟く。
が、その数秒後、ニヤリと口元を歪めたハルキは、「ふっ。こんな事で弱音を吐いてたら、この理不尽で不平等なこの世界は生きていけねぇな」と呟き、【瞬発】で一瞬でリザードマンの懐に入る。
そして【風纏】を使って殺傷能力を上げた剣で一斬りし、また別のリザードマンを斬る。
それはもう、鬼神の如く何度も何度も何度も。だが、殺した分だけ生まれ落ちて来て、キリがない。
「くそっ! こいつらどれだけ生まれ落ちて来るんだ。この異常な速さで魔物が生まれ落ちて来るなんて、僕は魔物にも嫌われてんのかよ!」
悪態を吐きつつも、一体一体確実に仕留めて行くハルキだが、一向にリザードマンが減らない事にイライラしてきた彼は、一度動きを止め、地面に手を突く。
そして【採掘】で、ある鉱石だけを地表に出て来させ、【アイテムBOX】の中から、爆発石を取り出して、リザードマンに投げつける。
投げつけられた鉱石は、リザードマンの手前で落ちて、一秒も経たない内に爆発した。
その爆発は先ほど【採掘】で地表に出て来させておいた誘爆石で更に爆発力を増して、リザードマンを全滅させた──と思ったが、そう上手く事が進むはずもなかった。
「なんでこいつら無傷なんだよ! 爆発力が足りなかったわけじゃないはずだ。何故だ?」
頭を悩ませているハルキは、リザードマンを剣で斬り、絶命させながら考える。
(魔物を倒せていた時はどうしていた?)
(──殺傷能力を上げていた剣で斬っていた)
(さっきの爆発で攻撃を与えられなかった部分は?)
(──体の内部だろう)
(この魔物の特性は?)
(──皮膚が分厚い上に、硬い鱗で守られている)
「……そういう事かよ。もし僕の予想が正しければ、リザードマンを一掃する事は不可能。つまり、この泥沼状態を脱するには、逃げるしかない!」
爆発ではリザードマンの心臓部分である魔石にはダメージが与えられない。
が、【風纏】で殺傷能力を上げていた剣の直接攻撃では分厚い皮膚と硬い鱗を斬り、魔石に直接攻撃を与えられていた事に気付いたハルキは、未だに増え続けているリザードマンに背を向け、走り出した。
逃げる事でしか、この泥沼状態から抜け出せないと知ったハルキは逃げる。逃げないとダメなんだと自分に言い訳をし、無様に敵である魔物に背を向けて、逃げた。
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しばらくして、リザードマンの気配を感じなくなって逃げる事をやめたハルキは、逃げていた最中に偶然見つけた下へ降りる階段に座っている。
階層と階層の間に位置する階段には、魔物が近づかない事に気付いていたハルキは、今日はここで休む事にした。
山から持って来ていた木の枝と乾いた草に、【採掘】で採った火打石で火をつける。
明かりを確保したハルキは【アイテムBOX】の中から魔物を取り出して、それを火で焼き始める。そして焼き終わった魔物を山から持って来ていた大きな葉っぱの上に置き、食べ始めた。
〜今日の晩ご飯のメニュー〜
カメレオンもどきの丸焼き
熊もどきの丸焼き
リザードマンの丸焼き
それからしばらくして、魔物を喰い終わったハルキは、毎日の日課となっていた『ステータスプレート』を見るという行動をとった。
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横山 ハルキ 15歳 Lv 65
《種族》 人間族(89%)
《天職》 採掘師
《ステータス》
【HP 6500/6500】 【MP 7000/7000】
【筋力】 6800 【耐性】 6700 【敏捷】 700
【魔力】 6500 【魔耐】 6600
《スキル》 【言語理解:Lv-】 【採掘:Lv10】
[+採掘速度上昇][+採掘範囲上昇]
[+鉱物鑑定][+鉱物感知]
【アイテムBOX:Lv7】 【状態異常軽減:Lv6】
【自動回復:Lv7】 【魔力操作:Lv1】 【瞬発:Lv8】 【天歩:Lv5】 【暗視:Lv4】 【風纏:Lv3】
【魔力感知:Lv2】 【空間把握:Lv3】
【魔力放出:Lv1】 【気配遮断:Lv1】【威圧:Lv1】 【硬化:Lv1】
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物凄い成長率だ。魔物も強くなってきているから、これからもステータスの上昇幅も大きくなっていくはずだが、人間部分が減少するのはこれまでと同じで一種類につき、1パーセント。
多分これはこれからも変わる事はないだろう。変わる事はないが、これからもこうして魔物を喰ってステータスを上げる。
それだけでいいんだろうか。この山から降りたら魔物を喰わないと誓っているハルキは強くなっていけるのだろうか。
強くなるどころか、衰退していくだけではないだろうか。
このままステータスに頼っているだけでいいんだろうか。
さっきのリザードマンと戦っている時みたいな状況に陥った時、今のままでその状況を打破出来るのだろうか。
また逃げるんじゃないか。このような事がハルキの頭に過ぎったが、彼はそれを否定するように頭を横に振り、眠りについた。