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プロローグ

初めての小説です!

 生きる希望を失い、何も残っていない横山よこやま ハルキは赤いドラゴンの圧倒的握力の前では、無力でしかない。


 ハルキは現在、クラスメイトに囮として利用され、この赤いドラゴンの餌として後ろ足にガッチリ掴まれ、巣へと連れて行かれている途中である。


 ──違った。

 ハルキはどうやら餌だと認められなかったようだ。ハルキは現在、空を物凄い速度で落下している。


 しかし、ハルキは空を飛ぶ術など持ち合わせていないので、ただただ落下するだけ。彼は、自分の絶叫とゴゥゴゥという風の音を聞きながら走馬灯を見た。


日本人である前に、唯のデブでオタクな自分が、どうしてこんなに夢と希望がたくさん詰まっているファンタジー世界にやって来てからも散々味わってきた不平等と、現在自分の身に降りかかっている不幸までの経緯を。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 学校。それは、この世で最も残酷な場所。

 最も残酷な場所だというのは、既に横山よこやま ハルキが実証済みだ。


 唯でさえ残酷な場所なのに、今日は月曜日。

 月曜日は、一週間の中で最も憂鬱な日だ。多分、殆どの人がこれから始まる一週間を前に、溜め息をつく事だろう。前日までの天国を想いながら。


 勿論、それはハルキにとっても例外ではない。但し、ハルキの場合、単に面倒だという理由だけではなく、彼を取り巻く環境がそれを更に憂鬱にさせている。


 ハルキは百キロを越える巨体をズルズルと引きずらせながら、登校時間の遅刻ギリギリの時間に教室の扉を開けた。


 その瞬間、教室の殆どの人から汚物を見るような視線と舌打ちを、一斉にハルキは頂戴する。


 ハルキは極力無視しようとするのだが、「よう、オデブ!」といつものように声をかけられる。ちなみにこのオデブはオタクとデブを組み合わせた言葉だ。


 そのたった数文字の言葉をキッカケに、「また学校に来たのかよ。お前は、一生家でエロゲでもしとけばいいんだよ」「マジかよ。こいつ、エロゲしてんのかよ。キモすぎだろ」などの言葉がかけられる。


 こんな事を言って、一体何が面白いのか全く僕には理解出来ない。が、クラスメイト達が面白がっているなら、それでいいとハルキは思っている。


 確かにハルキはデブでオタクだという事は認めよう。だが、これだけは言っておきたい事がある。

 ハルキはエロゲをプレイしていないという事を。


 クラスメイト達の中では、デブでオタクというのは、必ずエロゲをしているものなのだと、何が根拠でそう思っているのか理解出来ないけど、それが周知の事実となっている。


 デブでオタクというだけでクラスの中、いや学校中で最底辺へと成り下がる。


 そして、デブでオタクとは正反対のイケメンや美少女は、学校中の頂点へと成り上がってしまう。何ともまぁ、不平等で理不尽何だろうか、この世界は。


 まだ汚物を見るような視線を向けたり、悪口を言われるのはまだいい。


 ハルキが嫌なのは、現在彼の周りにいる二人の男子と二人の女子で構成されているグループがかけてくる言葉だ。


「気にするなよ、ハル。お前の事は、幼馴染である俺達がよく分かってるから」


「そうだよ。横山君は、何も悪くないよ」


「はぁ。横山も痩せれば、こんな事言われなくても済むのに」


「ハルキも、俺みたいにマッチョを目指さないか?」


 このような事を言って来るのが、このクラスの頂点であり、幼馴染でもある神代かみしろ 勇気ゆうき河上かわかみ 沙織さおり天宮寺てんぐうじ しずく柴田しばた 龍馬りょうまの四名だ。


 幼馴染達は悪い人達ではない。悪い人達では無いのだけど、この人達の存在が、言葉が、ハルキの立場を更に悪化させている。


 幼馴染達は、みんなハルキと幼稚園からの付き合いで、いつもいじめられている彼を庇い、守ってくれている存在だ。


 それは今も変わらない。


 勇気は高身長で頭脳明晰、眉目秀麗の黒髪のイケメン。

 沙織は容姿端麗で肌が白く、艶やかな黒髪ロングの美少女。

 雫は沙織と仲良しで、剣道の才能がある黒髪ポニーテールの体育会系女子。

 龍馬はこの幼馴染の中で、最も温厚で優しいが、その性格からは考えられないほどのマッチョの男子。


 「ありがとう。でも、僕の事はさ、放っておいてくれないかな? 僕と神代君達では、釣り合わないよ」


 そう断っても、「気にするなって。俺達とお前は小さい頃からの友人だろ?」といった、周りから見たらとてもいい言葉をかけてくる。


 だが実際は、その言葉はハルキの立場や、幼馴染達の立場を悪化させる言葉でしか無い。


 幼馴染達はハルキの事を、気を遣って言ってくれているのだろうけど、そんな事をしたら幼馴染達がいじめられてしまう。


 ハルキはそんな優しい幼馴染を、自分みたいな奴から遠ざける為に、引き離そうとしている。そうすれば、彼は一人でいじめを受ける事が出来る。


 そう、これは幼馴染達を守る行為。決して、ハルキへの風当たりを緩和する行為では無い。


 「じゃあ、また後でな」


 「またね、横山君」


 「元気出しなよ、横山」


 「ハルキ、元気出せよ」


 幼馴染達はそう言い残し、自分達の席へと座る。ハルキもそんな幼馴染達が座り終えた後に、歩き出し、一番左の隅っこにある自分の席に座った。


 そこで、ようやくこのクラスの担任である、小岩井こいわい すず先生が来て、HRが始まる──かと思ったが、急に教室の床に魔法陣が現れたのだ。


 その魔法陣を皆数秒間だけ注視するが、魔法陣の輝きが拡がって行くのを見た事で、驚きと混乱でこの教室を一杯にした。


 だが、鈴先生が「皆、急いで外へ!」と言ってしまった事で、皆は更に焦り、教室から出る為に教室の扉を開けようとする。


 しかし、教室の扉はコンクリートで固められたのかと思うくらいビクともしなかった。

 その時の生徒の顔は、どんな顔だったのかは、未だ席に座っていたハルキには分からない。


 その間にも、魔法陣の輝きは徐々に増して行き、教室全体を輝きで満たす程大きくなり、その魔法陣の輝きが爆発したかのようにピカッと光ったのは、ハルキが目を閉じたのと同時だった。


 数秒、数分、数時間、どれぐらいの時間がかかったかは分かるはずもないが、白で埋め尽くされていた教室が、再び色を取り戻した時、その教室には誰も居なかった。


その教室にあったのは教卓や机、椅子などはそのままで、その場に居た人間だけが消えていた。










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