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第4話 追跡

 「これか、痕跡ってのは」


 狼を倒した場所から、走ってきた俺達はついに、その場所にたどり着いた。


 ちなみになんで走ったか。それは、前回の調査で見逃されている箇所がないかの確認のためだ。


 まあ、見落としがないかを確認しながらといっても、そんなものはないだろうが。


 なぜか。単に時間が経ってるってのもあるが、それ以上にーー優秀だからだ。それをした人間が、そんなミスをすることなんかありえないと断言できるくらいに。


 だけど一応ということで、やってみたわけだが予想通り何もなく、結局走っただけだった。


 閑話休題


 「うん、報告書にはそうあるよ」

 「ふ~ん、これはーー洞窟、だな」


 そう今、俺達の目の前にあるのは、まぎれもない洞窟だった。


 入り口の高さは、二メートル弱で横もそれくらいの比較的狭い印象を受ける。

 その付近には、草が生い茂っている。が、少し離れている所の草と比べれば若干低い上に数も少ない気がする。まあ、それが人為的なものか、自然的にそうなったのかは判断がつかないけれど。

 

 で、中を覗きこんでみれば案の定真っ暗で何も見えやしない。まっすぐ伸びているのか、くねくね曲がっているのか、それとも地下に潜っていくのか全く分からなかった。


 報告書によると、この洞窟の最深部にその〝痕跡〟があるとのこと。一部の資料は持ち出せたが、その〝痕跡〟は持ち運びが不可能で、なおかつ写真などで記録するより実際見た方が良いということらしい。


 「……しかし、よく見つけたな、こんな所にあるなんて」

 「まあ、今回は≪影狼≫さんが動いてくれてたからね。運が良かったってのもあるかな」

 「そうだな。……さてと、どっちみちここに居ても始まらないし行くか。後、ここから会話はマイクな」

 「了解」


 確認が済んだら、俺は目を閉じて魔力を練り能力を行使する。


 これから、行うのは風を用いた〝探知〟だ。風を周囲に流し、たとえ暗闇でも物体の形を知ることができる上に、声も拾う事が出来る。


 そして、今回の仕事が、俺に回ってきたこともこれに関係があるだろう。

 

 屋上では、≪音猫≫にああ言ったが、リーダーも単に面白半分で誰を向かわせるか決めているわけじゃない。

 仕事内容をキチンと把握し、何が必要かを考え適切な人員を配置できなければ、仕事を失敗するからだ。

 それが判断出来ないようなら、リーダーなんて重役務められない。

 

 そしてその判断の結果、今回はNoAの中で一番の索敵能力を持つ俺が選ばれたのだろう。


 


 そんないまいち掴みどころのないリーダーの顔を思い浮かべながら、俺は風を洞窟の中に送り込んでいく。


 (結構深いな……でも大体の地形は分かった。魔物も居ないようだな)


 [良し、進もう。俺についてきてくれ]

 [了解]


 そして、俺達は取り付け式のライトを取り出してローブの左胸部分に装着し洞窟の中に潜っていった。


~~~


 入り口から入った俺達は、ひたすら洞窟を突き進む。


 探ってみた感じ洞窟は、下に向かっているので今は完全に地下深いところに俺達はいるのだろう。

 

 そしてここまでは、順調だ。なにせ魔物も居ないし、道も幾度か分かれ道はあったが、どちらかはそう遠くない場所で途切れていたため、風ですぐに分かり迷うこともない。

 ライトを付けてはいても暗いため足元に注意する必要はあるが、魔力を用いて身体機能を高める技術〝身体強化〟を使っているためコケることもない。


 結局特に、何かがあったわけでもなく最深部までたどり着いたのだった。


~~~


 [風、中はどう?]

 

 現在、最深部までたどり着いた俺達の前には、明らかに人工物と分かるものーードアがあった。

 

 罠が無いかの確認をした後に触ってみたが、どうやらその材質は周囲の洞窟を構成する壁や地面と同じものだった。ここで、作られたのだろうか?


 ドア自体に罠がかけられていないのを確認した後は、ドアの隙間から風を侵入させ中の様子を探っていく。……どうやら、大丈夫だな。まあ、一回≪影狼≫が入ってるんだし、これも万が一に備えてにすぎない。


 [大丈夫だ。中に魔物や人間なんかはいない。入ろう]

 [OK]


 そう返事をして氷が、ドアに手を伸ばしーーその手が空を切った。


 [どうした?]

 [……いや、取っ手が見つからなくて]


そう言われて見てみれば、確かにない。暗いせいで見逃しているのかと思ったが、そういうわけでもないようだ。


 [……妙だな。≪影狼≫は、確かにこの部屋に入ったんだろう?]

 [うん。確かに、報告書には書かれて……あれっ?]

 

 再び、報告書を取り出そうとした氷から、ふいに声が上がる。


 [どうかしたか?]

 [ここ見て。これって、何かの足跡みたいじゃない(・・・・・・・・・)?]

 [!]


 そう言って指さす、氷の指の先を追ってみれば、確かに何かの足跡らしきものが。


 しかも、その数は少なくとも十人は優に超える程の(・・・・・・・・・・)……。


 [≪影狼≫の物……じゃないのは確実か。あいつは、一人だろうし。そして、恐らくこれはそんなに経っていない。どれだけ古くても2,3日前だな]

 [今回の黒幕が、動いたってこと?]

 [だろうな。ということは、もうすでに中は……]

 [もぬけの殻、だろうね]

 [……しょうがない、一応中に入ってみるか]


 とりあえず、一旦に中の様子を直に見た方が早い。風の〝探知〟も便利だが、すぐ近くなら目で直接見た方が確実だしな。


 とまあ、そういうことで取っ手を探す時間も惜しいため、少々手荒にドアを開けることにしよう。


 俺はドアの前に立って、右手を左腰に廻しそこに掲げている短刀ーー今回は、森中を想定して短いのを持ってきたーーを引き抜く。


 右手に持った抜き身の短刀に、まずは魔力を纏わせる。これにより武器の耐久力や切れ味なんかを向上させる。なお、効果は込める魔力量に比例。


 それが終わったら今度は能力を行使。使うのは、〝付与〟。自らの能力を武器に纏わすことにより、能力を武器に付与できる技術だ。俺の場合は風。


 ちなみに、この二つの作業にかかった時間は、わずか0.5秒程度。まあ、これくらい早くなけりゃ実戦では使い物にならない。


 [氷、離れてろよ]

 [了解]


 氷が離れたことを確認した俺は、素早く短刀を一閃。


 それにより、石製のドアは抵抗なく切れ地面に崩れていった。

 

 [良し、突入だ]

 [うん]


 そして、俺達は中に踏み込んだ。

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