旅立ち編 その2
次話投稿!
意味ありげな出会いでした。
どうなるのでしょう?
ではでは~
「助かったよ」
「ありがとう」
戦士らしき男と魔法使いの女性が謝意を表した。
「すごいね。あれだけの大山犬怖くなかったの?」
スーアと歳が近そうな少女が興味津々スーアに尋ねた。
「うーん、不思議と怖いとは思わなかった」
「へー、ほんとにぃ?」
「ほ、ほんとだよ。そうじゃなかったら、一頭目の頸を刎ねたりしないさ」
「君は、どこで剣の修行をしたんだい?」
リーダーの青年が尋ねた。
「じぃ、祖父や父に仕込まれました」
「ほう、オークのなのに」
青年の言葉にスーアは、チリっと不愉快感が混じったような気がした。
(ああ、この人は【人族】なんだ)
「おかしいですよね。祖父達は人族だから、剣技ばっかり。俺は戦斧の方がいいかなぁと思うんですけど」
「そうか。君のお爺さんは、人族なのか」
青年の言葉に薄い驚きが混じる。
(わかるかなぁ?祖父さん達って有名人なんだけど、祖母ちゃん達がオークって人族では知られてなかったりするんだよな)
「キミ、キミ。お爺さま達って、どこかに仕官していたりするの?」
「昔、誘われたけど断ったって」
「ふーん。そっか」
年の割に重装の少女はつまらなさそうに感想を漏らした。
「君はこれからどうするんだい?」
青年が尋ねる。
「犬を捌いて食料にします」
「そうか、我々は先を急ぐので、ここでお別れだ」
青年は、そう言い終るかどうかでスタスタ歩き始めた。
「そうですか。道中、お気をつけて」
「「「君も気を付けて」」」
ほかの3人もリーダーについていく。
少し離れると少女は振り向いて手を振って、別れの合図を送ってきた。
スーアは気が付いて、剣を軽々と振ってそれに応えた。
やがて、パーティの影が森の木々に隠れて見えなくなった。
= = = = =
スーアは、ゴロゴロ転がる大山犬の死骸を木の枝に逆さに吊るし、血抜きをしながらどんどん解体していった。
ちょうど川の近所なので、処理は捗った。
最初の頃の死骸は、内臓が傷み始めていた。
大急ぎで内臓を外に出し、心臓や肝臓など食べられそうな部位から食べ始めた。
火をおこし、調理する。
ただ、焼くだけだが、肉が新鮮なので、美味い。
毛皮を丁寧に剥いで裏返して木にひっかけて干した。
ある程度乾いたら、まとめて途中の村で物々交換をしよう。
閃光魔法でコンガリ焼かれた犬の毛皮は、ダメだった。
どこかで鞣しを頼んで、旅装束の補強に使えるかもしれない。
ただ、関所で税金を払わなければならないので、多くを持ち歩けない。
程度のいい数枚を持っていくことにした。
各部位の肉は、切り分けて燻す。
「塩が無いけどだいじょうぶかなぁ。保存できれば味は我慢するんだけど」
そうこうしているうちに陽が傾き始めた。
「ふえー。今日は、これで終わりかぁ。ひとりだし仕方ないか」
スーアは、ほかの食材を探して、周辺を歩き回った。
野草や根菜を見つけ川から水を汲んできた。
火のところに戻ってくると見知らぬ男たちが居た。
「えーと、こんにちわ」
「・・・」
「・・・」
「おう」
「肉、食いませんか?食いきれなくて」
「い、いいのか」
「お、おい」
「ボウズ、お前がこれを仕留めたのか?」
「俺は斬ったのは2、3匹です。焦げてるのは、魔法使いです」
「そ、そうか、すげえな」
「で、その魔法使いは?」
「・・・」
「ああ、食料探しに行ってますよ。ほかに戦士と剣士もいます。俺が食事係なんです」
「お、おう、がんばれよ」
「俺たちは行くわ」
「じゃあな」
(ふー、いかがわしい連中か)
「あ、ちょっと待ってください。これ、食べてください」
スーアは、人の頭くらいの大きさの肉を手渡した。
「いいのか?」
「はい、俺が頸を刎ねたヤツの肉なんで、気にしないでください」
男たちは、肉を抱えて足早に立ち去った。
スーアはそれを見送りながら男たちに忠告した。
「生肉だとー、翼竜が飛んできますからー、気を付けてー」
= = = = =
スーアは、日が明るい内に夕食を済ませることにした。
今日は、盛大に燻しているため、動物や虫、周辺に生息している翼竜達も近寄ってこない。
土を掘って、新しくかまどを作り、鍋でスープを作り始めた。
昨日と違って、盛大に火を起こし、調理を始める。
とはいっても、食材を葉で包んで蒸し焼きにするだけで大したことはできない。
それでも昨日と違って温かい食事は、スーアを元気にした。
スープも作り満足したので、ぐっすり眠れそうだ。
即製の燻し器に砕片をたっぷり補充し、火の近所で眠りについた。
いかがでしたか?
あっさり別れてしまいました。
スーアは、一路ビリオネリラント大公国の大公都に向かいます。
次話をお待ちください。