銘々の選択 その2
多少、行き違いがあったようです。
「スーア君、もう一度言ってみて」
「そうだね、相談していないから納得できないよな」
「そうじゃない」
「何が?」
少女は状況が飲み込めないでいた。
少年は彼女の考えが判らなかった。
「だから、ようやくウサギくらいならどうにか相手になれるようになったくらいだよ」
「うん、そうだね」
「まだまだ未熟って自分でもわかってるんだよ」
「ゴメン」
「ふー、判ってくれたらならいいわ」
「で、出発はいつ頃なら大丈夫?」
「わかってなーーーーい!!」
= = = = =
「リミス殿、スーア君と一緒の仕事ではないことを不満に感じているのはわかります」
「い、いえ。そういうことでは」
「スー坊はまだまだ子供だから、先は長いですぜ」
「あのー、揶揄っています?」
「大事なのはお互いの気持ちだから、心配しなくても大丈夫」
「ですな、副長の言う通りです」
「な!」
= = = = =
ヒソヒソ
ヒソヒソ
「おい、あの膳卓の女二人って」
「ああ、元【混成遊撃】の副長と鬼長だ、一度魔獣駆除で仕事したから覚えてるぜ」
ヒソヒソ
ヒソヒソ
「混成遊撃隊って解体されたんじゃなかったか?」
「なんでも解体後に傭兵稼業を始めようとしたとか」
「聞いたことあるぜ、周辺国が抱き込もうと躍起になったとか」
「隊長が里帰りしてから冒険者を始めたってな」
ヒソヒソ
ヒソヒソ
「構成者が得意分野なら金剛級とか噂があるよな」
「なんでも階級が上がりすぎるとクエストの義務が発生するとかで避けてるとか」
「だろうよ、連中なら国盗りだって簡単だろう」
「面倒くさいって愚痴ったやつがいたとかな」
「なんだよ、その面倒くさいって」
「国民の面倒みるとか戦争で指揮するだけとかつまらんそうだ」
「まるで蛮族だな」
ヒソヒソ
ヒソヒソ
= = = = =
「副長、散々な言われようですぜ」
「先任、口調をなんとかしないか、リミス殿の御前だぞ」
「おお、失礼いたしました。お嬢、平にご容赦を」
「あ、あのわたしはただの冒険者見習いなので」
「そうおっしゃいますな、スーア君からの依頼ですので、同じ卓に居りますが正直居心地はよくありません」
「スーア君、いい加減説明してよね」
「リミスはこれからもしばらくは冒険者するんだよね」
「そう・・・よ」
「だったら、俺が信頼できる女性たちと修行するのがいいと思ったんだよ」
「で、我々が参上したということです」
「スー坊に頼まれちゃ断れねえですから」
「で、でもわたしなんかは」
「大丈夫です、スーア君に同行できたという事実があります」
「全部スーア君のおかげで」
「【全部】というのなら、なおさらですな」
「さすがはお嬢と言ったところでしょうな」
リミスには副長、先任と呼び合う女性たちの言葉が理解できなかった。
スーアは黙っていつの間にか注文していた根菜を挟んだチョイベスを頬張っていた。
リミスは思い切って自分の弱さについて告白しよう思った。
「わたしは鎧で身を守っていないと怖くて仕方ありません」
副長と先任は顔を見合わせ表情を崩した。
「我々も同様です」
「仲間に守ってもらえねえと怖いもんです」
「鎧を纏って動けるなら充分です」
「その鎧の陰から打って出るのが自分たちの役目ですからな」
リミスは二人の言葉を納得できないまでも理解した。
= = = = =
「どうしてわたしを鍛える方向になっているのです?」
「それはスーア君の依頼ですからな」
「そうです、スー坊は滅多なことじゃ頼み事をしませんぜ」
「そういうのは黙っていてくれたらいいんです」
スーアは気恥ずかしかった。
母の部下、姉のような女性たちに頼みごとをするのはいいものかどうか悩んでもいる。
「大丈夫、1年もしたら隊長も心配しない程度には仕上がっているさ」
「スー坊、危ないことはさせないから心配無用だぞ」
「本当にお願いしますよ」
「スーア君、わたしの意思は気にしないんだね」
リミスは自分のことなのにほったらかしなのが気に入らなかった。
この日、大公国いや大陸屈指の冒険者集団に少女が入団することが決まった。
通り名【お二方家臣団】【黒龍食い】【国潰し】




