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自己研鑽 その6

イケメン来襲


一気に寒くなる席

「僕も同席していいかな?」

元リーダーは当然のように席に着こうとしたその瞬間。


「ごめんなさい。仕事の打ち上げなので遠慮してください」

「わたくしも今はプライベートなのでご遠慮ください」

揃って拒否する女性陣。


「冷たいなぁ。僕も仕事でつながってるじゃないか」

元リーダーが意に介さずそのまま座った。


「なっ「ちょっと格好悪いです」」

スーアが年上の青年を諫めるように言った。

最初スーアはリミスが自分に遠慮して言ったと思った。

元リーダーが席に着いた時、リミスの眼が見開かれ瞳孔が絞られるのを見て悟った。

事情は知らないがリミスはパーティを組んでいたこの男を嫌っていると。


「君は礼儀を知らないようだな」

元リーダーは悪感情を隠さなかった。

「でしょうね。俺は、あなたのいう礼儀は知らないし、知りたいとも思いませんよ」

スーアは珍しく不愉快だった。

なぜここまで不愉快になったのか自分でも変だと思った。


「ほぉ、オークの身分で僕に意見するとはね」

元リーダーは呆れたように吐き捨てた。


「俺がオークであることとあなたが格好悪いのは関係ありませんよ。彼女たちが同席を望んでいないなら、やめてください」

スーアはリミスとイシュグダの目を見て確認した。

ふたりはスーアに頷いた。


「いいのかい、オークごときがこの僕に」

元リーダーは半ば脅嚇するように睨みつける。


「いいですよ。どうあがいてもハーフオークですから」

スーアの言葉にふたりの女性は寂しさが含まれているように感じた。


「あ、あの。スーア君、わたしスーア君は・・・・、友達って思ってるから」

リミスは一瞬イシュグダの眼を見た後、顔を真っ赤にして俯いた。


「スーア様、わたしも私的には・・友達だと思っていただけると嬉しいです」

イシュグダはなぜか俯くリミスを愛おしそうに眺めて言った。


「ふたりともどうしたんだい。僕が声をかけているんだよ」

元リーダーが声を荒げ始めた。


「それが格好悪いと言ってるんですけど」

スーアのその声は、少し低かった。

「何だってぇ」

元リーダーが剣の柄に手をかけた。

≪ザワッ≫

酒場の雰囲気が冷たくなった。


『おいおい、あのスーアに剣を向けるバカがいるんだな』

『貴族のお坊ちゃまじゃ、スーアを素性を知らないのも当然か』

『今までの流れでだいたい判るんじゃねえか』

周りがヒソヒソと話しながら二人の男のやり取りを見守っていた。


「何だ何だ、酒場ってのはもっと朗らかな雰囲気じゃねえといい酒が飲めねえだろ」

「そうやよ。ねぇねぇ、イスーの旦那。あそこにスーア君がいるから同席しよ」

「えー、俺がいきなりいいのか?」

「その心配はいりませんよ。ヴェルンとスーア様は古くからのご友人。あら、恋仲でしたかしら」

「リンカさん、そんなことはないわー。ウチは旦那一筋やから」

「さぁさぁ、今日は無礼講や。たっぷり飲むぞー」

「リフィはそのサイズで飲んだら、大公都の酒が無くなっちまうんじゃねえか」

「えー、ひっどいー。だいたいタコーが滅多に帰ってこないからダメなんじゃなーい」

中年男と若い娘3人が緊張した酒場をその迫力で覆いつくした。


中年男は人数分の椅子を頼むと元リーダーの隣に座った。

娘たちはヴェルンがイシュグダの隣に座るとリンカと呼ばれた娘がリミスの隣に座った。

リフィと呼ばれたエルフの娘は元リーダーと中年男の間に無理やり入り込んだ。

「リフィはやっぱりイケメン好きだな」

「イケメン?」

「ああ、見た目が優れている人物のことだ」

「ふーん」

中年男の言葉にエルフの反応は薄かった。


「美男子さんよ、物騒なモノから手を放して座れや。周りの美女を困らせるなよ」

中年男は軽口をたたくと酒と料理を注文した。


「えーっとスーア君だよな。今更だが合い席いいかな? 連れが知り合いのいるところがいいというもんだから」

中年男はヴェルンを見た後スーアに視線を移した。


「俺はふたりがいいなら依存有りません」

スーアはちょっと居づらくなった。

目の前に居る中年男とリンカと呼ばれた女性とエルフに圧倒されている自分に気がついたからだ。


(何だろう、何かとんでもないことが起きているような気がするけどそれが何かわからない)

イシュクダはかなり焦っていた。

ギルドで何回か見かけた中年男は憶えていた。

おそらくは北方の民族で大公都で見かけることは少ない。

ただ、先の大戦(おおいくさ)で大公国に勝利をもたらしたと噂された守護戦聖の特徴に近い気がしていた。


(何だろう、わたくし、この方とお会いしたことがあるんじゃなくって?)

リミスは記憶をひっくり返していた。

隣に座ったリンカと呼ばれた女性とどこかであったことがあった。

そしてそれを確認しようものなら、とても大事に発展しかねないと直感していた。


 = = = = =


≪カンパーイ≫

何度目かの乾杯だった。


その言葉の後で元リーダーは酔いつぶれた。


「ング、ング、プッハーッ。おいしー」

「やっぱり君の飲みっぷりはリフィ以上だな」

ヴェルンを眺めて中年男は炙った腸詰を齧っていた。

「ひどい言われようね。私の場合、酒精は関係ないだけよ」

エルフは普通に拗ねていた。

「こんなの初めてです。楽しいですね」

リンカは楽しそうに中年男に話しかけていた。


「スーア君、やっぱり部外者いると乳繰り合うのに邪魔か?」

中年男はスーアに話しかけた。

「い、いえ、そんなんじゃありません。彼女たちは大切な・・その友達なだけで、すみません」

なぜか最後に謝るスーアだった。


「ほほー。謝るくらいなら、遠慮するなよ。そうだ、手相を観てやろう」

中年男はスーアに両手のひらを見せるように促した。

「あ、あの、これで何が判るんですか?」

「ヒトの可能性が見えるんだよ。理由は聞くなよ、俺も読めるだけで原理は知らん」

中年男はスーアにいくつかの質問をしその答えを聞いて彼の過去を言い当てた。


 = = = = =


「旦那ー!凄いじゃないですか!」

「声が大きいぞ」

はしゃぐヴェルンを抑える中年男。

「ウチも、ウチも」

「あ、あのよろしければわたくしも」

ヴェルンとリンカが申し込む。


下唇をかみしめるリミスとイシュグダがいた。


酒場はやや騒然としていた。

聞いたこともない占い師が目の前にいる。


巷に居る占い師は、意味不明な言葉しか残さない。

どうとでも解釈できることだけ。

勇者や英雄に対してはそういう言葉になるだろうがここでは違う。

スーアの年齢ごとに彼しか知らないことを言い当てた。

それはスーア本人が一番驚いていた。


「あー、そこのふたりのお嬢さん」

中年男が手招きしたのは、リミスとイシュグダだった。


しばらくふたりの手相を眺めて中年男は言った。

「自分と誰かをしっかり信じて疑わず行けば、振り返ってよかったって思えるよ。あんまりはっきり言うと人生面白みが半減するから、今はここまで。誰かを信じるんだぞ、その誰かを失望させないようにしっかり生きてね」

優しく微笑む中年男。


「あー旦那ー!浮気モノー」

「リンカも齧りなさい」

「え、あ、はい。タコー様、痛かったら言ってくださいね」

中年男は3人の娘からしばらく齧られていた。


そのあと、占いコーナーはその日限定で、肴を奢ると占ってもらうことになった。

某キャラ登場。

出番はこれだけ。


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