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自己研鑽 その5

ここまでお読みいただいてありがとうございます。


宿泊所の夜の営業が判ってしまったふたり。

そういうお年頃です。



ではでは~

「っふぁーーーー」

朝もやの中、大きなあくびをしながら大剣を振るハーフオークの少年が居た。


昨日の女給の服とリミスの姿や声を思い出し、寝付けなかった。

結局、夜の開ける半刻前にやっと眠りかけたのだった。


困ったことに一番馬車の出発時刻まで時間がない。

眠るのは、馬車に揺られている間にと先延ばしできる。

その前に身体を温めておくことにしたのだ。

獲物は一角ウサギだが、油断と慢心は思わぬミスを招く。

父親と旅をしているときに叩き込まれ、身に染み込んでいた。


ちょうど身体が温まったころ、後ろから声がした。

「お、お、お、おはよー!」

少し顔が赤い少女が立っていた。

軽武装であるにもかかわらず、その佇まいは、かわいらしくもあった。

「おはよー、リミス。顔赤いよ、大丈夫?」

スーアは、心配そうに少女の顔を覗き込む。


「にゃ、にゃんでもないよ。スーア君こそ、目が赤い」

「あ、ああ。なんとなく寝付けなくって」

「そ、そう」

「・・・・」

「・・・・」

ふたりは、会話が続かなくなってしまった。

結局、この後、放牧地で昼食を摂るまで会話はなかった。


 = = = = =


この日の駆除は、主に少女が行った。

どちらかというと少女の訓練をスーアが手伝ったような形だった。

少女の後ろからスーアが助言する。

決して行動を指示しない。

「(ウサギは、)身を屈めている」

「狙われてる」

とか、その先、何をするかを決して口にしなかった。

スーアに判らなかったわけじゃなく、リミスが何をしないといけないか答えを出すように仕向けていた。


「今日は、わたしぃ、がんばったぞー!!」

リミスは、両拳で天を突き、少女ではあるが雄たけびを挙げていた。


「お疲れさま。午後はどうする?」

スーアは、昼食の用意をしながら、鼻息の荒い少女に尋ねた。

「午後も頑張るよ。これでも、持久力はあるんだもん」

ふんすと鼻息に勢いがあった。


その姿を見たスーアは、どういうわけか和んでしまった。

懐かしいような見慣れているような不思議な感覚だった。


 = = = = =


「さすがは、スーア様ーー!」

イシュグダさん、またも90度立ち上がりのハイテンション。

斡旋フロアに響き渡る黄色い声。


「もしもし。あのう、今日の成果は、リミスの分なので」

スーアは、窓口嬢の高揚に冷や水をぶっかけた。


スーアは、一切手伝わなかった。

収穫の荷物運びだけだった。


「申し訳ございません。確認いたします」

「お願いします」

彼女は、おもむろに成果を見定める。

事務的にテキパキと角を確認する。

「確認しました」

そして事務的に答える。


言葉の一つ一つに、なぜか棘があった。

角を数えているからではない。


リミスは報酬を受け取る。

14羽分、112リクン(約112,000円)。


一人の仕事なら、決して少なくない数だ。


駆除の仕事は、腕が立つからといって、数が増えるものではない。

対象がいないことには駆除のしようがないからだ。


不思議だった。

徒歩で歩き回る範囲はたかが知れている。

その範囲に14羽は多い。

増えすぎたにしても、家畜の餌があったとしても不思議としか言いようがなかった。

野生動物は縄張り持つことで、健全な種の存続を図りながら生きていく。

それなのに、移動もせず、居座り続けるには、何か原因があるのかもしれない。

スーアは、父親に教わった思考の手法に従って、自分なりの疑問にたどり着いていた。

この時点で、何かを感じていたのは、駆除に携わっていたスーアだけだった。


 = = = = =


「「「カンパーイ」」」

リミスはすこぶる上機嫌で祝杯を空にした。

「プッハー、おいひぃー。じゃんじゃん注文してね!」

同席しているスーアとイシュグダ。

「すみません。お招きいただいた上にウチの近所で」

シャーデ町の大衆酒場で3人、リミスの奢りでささやかな宴会を開いていた。


今日もラヒトの家で食卓を囲む予定だったが、スーアがリミスの大成果を祝おうと言い出した。

工房に戻ってラヒトをヴェルンを誘ったが、ニコニコと笑顔で断られた。


「俺が祝おうと言い出したんだし、金は俺が払うから」

「いーの、スーア君のおかげなんだし。イシュグダさんの分は、案内料だから」

「それでは報酬が釣り合いませんから自分の分は「いーの!」」

恐縮する窓口嬢の言葉は、上機嫌の冒険者の一言でかき消された。


「・・・・ごめんなさい。でね、聞いてほしいの」

謝罪の言葉を口にして少し萎んだリミス。

「初めてなの。こんな風に酒場で見知った人とお酒を飲んだりするの」

彼女の言葉は半分嘘で半分本当だった。

スーアは知らなかったが、イシュグダは嘘だと思った。

リミスは言葉を続けた。

「パーティに入っていたのはスーア君も知ってるよね」

「あ、あぁ」

スーアは大山犬の一件が出会いだった思い出していた。


「パーティは解散なさいましたね・・・・」

イシュグダは鎧を着た彼女が衝撃に近い印象だったのとリーダーも容姿が申し分なくついつい注目していた。


「解散してたんだ・・・・」

リミスはリーダー投げ飛ばした後、気まずくて連絡を取っていなかった。

解散していたことは初めて知った。

「みんなはどうしていますか?」

「帝国に向かわれたり、商隊の護衛になったりですね。あと・・・・」

動向を説明していたイシュグダの視線は1点に注がれ言葉が止まった。


「やあ、イシュグダ、君も飲みに来てたんだね」

リミスの後ろから声がした。

そしてリミスはその声を知っていた。


「ルント、久しぶり。髪型を変えたんだね、似合ってるよ」

元リーダーはリミスの肩に手を置いた。

リミスにはそれが挑発だとすぐにわかったが今の時間を台無しにしたくなかったので我慢した。


「おや、君はあの時の。ラヒト工房の娘さんはいないのかい?」

元リーダーは、同じテーブルで一番体格のいいハーフオークに最後に気が付いた。

いかがでしたか。


リミスが進歩しました。

元リーダーの再登場です。

波乱の予感。



次話をお待ちください。

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