自己研鑽 その4
ここまでお読みいただいてありがとうございます。
ここで少し解説。
宿泊所には、昼と夜の営業があります。
宿泊客の要望に沿うサービスを提供する宿は少なくありません。
リピーターを掴んでおくのに大事なことですので。
ではでは~
「スーア君、いやらしい目」
(えぇぇぇーーー!女給さんのスカートってあんなんじゃなかったよぉ)
少女は、深夜のラウンジを訪れたのは、今回が初めてだった。
朝食と夕食で利用していた。
その時、女給のロングスカートにはスリットは無い。
生地も身体の輪郭が判る程度のカチッとしていた、はず。
混乱してしまった。
明らかにいかがわしい服装だ。
= = = = =
女給がテーブルの上にカクテルを置く。
上半身を折ったとき、スカートのスリットせり上がり、脚の付け根あたりまで露になった。
見てしまったと思って、【しまった!】と思った。
真向かえの少女が微笑んでいた。
スーアは、父に連れられて手負い竜を退治したときより身の危険を感じてしまった。
「いいのよ、わたしのことは気にしなくて」
スーアは、その声に心臓を握りつぶされる錯覚に包まれる。
スーアが、他のテーブルに飲み物が運ばれてくるのを何気なく眺めていた時に起きた惨劇。
ハーフオークの少年が、【人族】が一番危険な生き物だと悟った瞬間だった。
祖父たちがデタラメに強いのは、【人族】だからだと。
= = = = =
(スーア君に変なところに誘ったって思われちゃう)
ちらりとスーアの方を見ると目が釘付けになっている。
その姿を見て、何か外れた。
やっぱりオークは危険だわ。
気を許したら、襲われてしまうに違いない。
まだ心の準備がーー
スーア君が、こっちを見た!
「いいのよ、わたしのことは気にしなくて」
考えろー、考えろ、わたし。
わたしを【女】として意識させちゃダメ。
わたしは、微笑みを顔に貼り付け必死に考えていた。
= = = = =
「お待たせしました」
女給がお辞儀をして、テーブルに注文の品を置く。
「果実茶でございます。白湯でございます。お熱いのでお気を付けください」
「「ありがとう」」
湯気の立つ白湯に添えるように小皿を置く。
「薬草です。白湯に浮かべて召し上がってください」
女給は、微笑み浅くお辞儀をして、ラウンジの奥に戻って行った。
スーアは薬草を摘まんで白湯に浮かべて、気まずいのをやり過ごす。
沈黙が続く。
「あ、あのさ」
「ひゃい!」
スーアが話し掛けると慌てる少女。
「ごめん。俺、田舎者で、こういうところ、初めてだから」
「だから、何?」
「色っぽいっていうのかな。見慣れてなくて」
「ふ、ふーん。そ、そうなの」
(ホントなの? 騙そうとしてない)
「ちゃま、祖母たちはオークでさ、冬でもへそ出してるくらい暑がりなんで、冬以外は胸と尻以外に服着てないよ」
「冬以外!?」
「ねえちゃんも年中へそ出して着ないなあ。服着るのって母さんだけだな。でも森に入ったときの小さいケガ防止が理由なんだけどね」
少女の驚きを他所に話し続けるスーア。
「じゃあ、女の人の、その、あ、は、裸とかどう思う?」
(ひーーーん、わたしったら、何聞いてるのぉー!)
「そりゃ、興味はあるよ。でも、好きになった後になるかな?」
「ど、どうして後なのかな?」
(信じていいの? それとも罠)
「自分でも不思議なんだけど、好きでもない人だと興味が湧かないなぁ」
「で、でも、女給さん見てたじゃない」
「あ、あれは、その、服にびっくりしたんだよ。少し見えるだけなのにドキッてしたから」
「へー。じゃあ、わたしが着てもドキッてす・・・」
(わたしったら、何を口走ったのぉーーーー!)
スーアは真っ赤になって慌てて白湯を飲む。
「ブッファ!!あちちち!」
白湯はまだ充分に熱かった。
慌ててあおった白湯が唇に降りかかった熱さで吹いてしまった。
「ぷっ。スーア君、あわてんぼさん」
「ごめん」
「ふふふ」
「ははは」
若者は同じ時間を過ごしていた。
= = = = =
「リミス」
「え、何?」
「わたしの名前」
「え、ああー、そういえば聞いてなかったんだ」
「ヒドーイ。わたしのこと、気にならなかったのー?」
「そんなことないよ。リミス、綺麗だから」
「にゃ!」
リミスは、スーアに褒められた直後俯いてしまった。
「リミス?具合悪いのか?」
「スーア君、揶揄ってるでしょ」
「なんで?」
リミスは俯いたままだった。
「じゃあ、本当に綺麗って思ってる?」
「うん。ヴェルンやイシュグダさんより上品だし」
リミスは弾けるようの顔を上げた。
「ど、どうして、今、ほかの女の名前が出てくるのよ!」
「え、え、どうしたの、急に」
リミスの態度がスーアを困惑させる。
ふたりは図らずも見つめ合うことになった。
((目を逸らした方が負けだ))
見つめ合うふたり。
なぜかふたりの距離は縮まっていく。
『ハッン、ゥン、ア、ア』
静かになったラウンジの奥から、かすかに声がする。
ふたりは気が付いてしまった。
慌てて離れるふたり。
「お、俺、帰る」
「う、うん。また、明日もいいかな?」
「ああ、今日と同じ時刻で」
「判った。じゃあ、・・・スーア君、おやすみ」
「おやすみ」
スーアが宿から出ていく。
その後ろ姿を見えなくなるまで見送るリミスだった。
いかがでしたか。
リミスが一歩リードでしょうか?
スーア素質充分なので、どうなるかは筆者にもわかりません。
次話をお待ちください。




