初仕事 その5
ここまでお読みいただいてありがとうございます。
まだまだ苦難が続きそうな少女です。
ではでは~
「蜜湯飲む?喉乾いただろ」
「あ、ありがとう」
湯椀を渡され、きちんとお礼で返す少女。
スーアの外套を敷布代わりにふたりは並んで座っていた。
「あれだけ走ればね」
スーアは、笑いを堪えきれず肩が揺らす。
「あーー。ひっどーい。助けてとは言わなかったけど、笑うことないじゃない」
少女は、ポカポカとスーアの肩を叩く。
「ゴメン、ゴメン。これで許してよ」
スーアは腰の雑納から果実を取り出し少女に渡す。
「これで釣るつもりね」
「ギクッ」
「あーーー」
「ククク、嘘、嘘。俺、弁当食ったから、それしか残っていないんだよ」
スーアは、少女に睨みつけられる。
「わたしもお弁当持ってるもん」
「そうなんだ」
少女は腰のポーチから籐編みの箱を出し、蓋を開ける。
中に一目で質の良いとわかる布があり、何かを包んでいた。
布の端を摘まんで、箱から出すと腿の上において、開いた。
薄焼きパンに似た積層パンだった。
そのベッサンを剥がして分け、削いだ肉と塩茹でした野菜が挟んであった。
ベッサンは、職人しか作れず、手間がかかるため売価は高い。
挟んでいる食材も比較的高価なので、スーアは彼女の生活水準がなんとなく推測できた。
少女は、一仕事終えたこともあり、持参の弁当をおいしそうに平らげた。
「いっぱい食べちゃったの久しぶりぃ」
「え?」
(それっぽっちで足りたの?)
食べ盛りのスーアには、少女の弁当は、子供用かと思えたが違っていた。
姉もいろいろ気を付けているが少女の倍は胃袋に収めてしまう。
スーアは、人族女性の不思議に触れたような気がした。
= = = = =
「怖くないの?」
「毎回1匹づつだし、よそ見しないなら、大丈夫だよ」
「うーーーー」
「大山犬は平気だったのに?」
スーアは、おかしかった。
大山犬の群れと対峙したときの様子は、一流の冒険者のような振る舞いに見えたし、落ち着いていた。
「うーー。それを言われると自分でも情けないよぉ」
がっくりと肩を落とす少女
「へぇー」
(素直に認めるんだ)
スーアは少し少女を偉いと思った。
祖父たちや両親に言い聞かせられてきたことを思い出していた。
<自分の弱さを知っていて、それを克服しようとする人は、必ず強くなる>
「わたしね、基本は攻撃を鎧で躱して反撃する型だったの。でも、ひとりだと袋叩きになっちゃうから」
「そうだなぁ。背中を任せる人がいたら、思いっきり頑張れるもんなぁ」
少女のいうことが、理解できたスーアだった。
= = = = =
少女の食事が終わると火の始末をし、仕事の準備に入るスーア。
彼女は、まだスーアの外套に座っている。
「そろそろ、仕事したいんだけど」
「・・・」
「ちょっと、どいてくんない。座るなら、あっちに木があるし」
「・・・」
頑なに動こうとしない少女。
「お願い、手伝って。報酬は全部あげるから」
「別に報酬なんかいらないよ。基礎をしっかり身に着けるためだから」
「そ、それはわたしも同じよ」
「じゃあ、手伝いは、かえって邪魔でしょう?」
「怖いのよ。だから、慣れるまで、お願い!」
少女は、地面に膝をつき傅いた。
「しかたないなぁ。でも、ふたりでいたら、襲ってこないから、離れてるよ」
「う、わかった。絶対、助けてね。絶対よ」
「はいはい。ウサギ相手なんだから、そんなに心配いらないよ」
円盾を持ち、身をかがめ、おどおどしながら周囲を警戒している少女。
スーアは、座って眺めていた。
立っていたら、一角ウサギは襲ってこないと思ったからだ。
少女の動きが止まる。
ウサギと遭遇したのだろう。
今は、逃げずに構えている。
(おっ、頑張れよー)
≪ダムダムダム≫
「ヒッ」
一角ウサギが、後ろ足で地面を叩いて威嚇するのに、少女は怯えてしまった。
次の瞬間、ウサギは少女に角を向け跳躍した。
少女が円盾を構えなおすが間に合わない。
跳ねたウサギの首に先端に錘のついた三又の紐が巻き付き角の向きが逸れた。
≪ドサッ≫
少女の横でウサギはもがいていた。
「もうちょっと、動きを見ないと危ないよ」
「ありがと」
スーアにお礼を言う少女。
= = = = =
ウサギの角を折り、逃がしてやるふたり。
「その道具、便利ね」
「狩りの道具だからね。でも、これ使うと意味ないんだよ」
「ううっ」
少女は落ち込んだ。
いかがでしたか?
向かってくる動物は結構怖いものです。
ウチもネコが突然襲ってきてびっくりすることがあります。
次話をお待ちください。




