旅立ち編 その1
無謀と言いますか、別作品で活躍中のココモの弟スーア君の話も公開始めます。
簡単に彼の紹介を。
彼は、人族と大差ありませんが、肌が緑がかっていて闘士型体型です。
犬歯が発達していて笑った後は、上の犬歯に唇が引っかかります。
15歳。まだまだこれからです。
髪は、自分で切っているのでぼさぼさです。
登場人物は、知り合いだったり、そうでなかったり。
スーア君の修行の旅は、長く過酷で愉快かもしれません。
かなり、亀になりそうですが、気長にお付き合い願いたいと思います。
ではでは~
朝もやの光の中に立つ影は
ハーフオークのスーア
今日、剣士として旅立つ。
「じゃあ、行ってきます」
「これからは一人だ。きつくなるぞ。だが俺の息子だ、自信は持っていい、油断するな」
「お父さんの言うことはもっともだけど。必ず帰って来なさいね」
「スーア、彼女連れて来ないと家に入れないからね」
「ねえちゃん、今それ言うの?」
「だってぇ、ボクの弟は男好きとか言われるのが嫌なんだもん」
「「ココモ、スーアをからかっちゃだめだぞ」」
「「ちゃまちゃま」」
「ああ、家内のいう通りだ」
「そうそう、男に限らず誰かが何かをしようとするときは、からかっちゃダメだ」
「「あなた、いいこと言ったから、ご褒美ちょうだい」」
良いこと言ったのに、いきなり子と孫の前でイチャイチャし始める不良中年2組がうざい。
「じゃあ、俺、そろそろ行くよ」
「ああ、ドートンのヤツに会ったら、貸しを返せと言っといてくれ」
「はい、了解です」
「生水には気を付けるんだよ」
「うん、言いつけは守るよ、母さん。じゃあ、行ってきます」
「スーア!きれいな女に気をつけろー!」
「ああ、ねえちゃん以外は信じねえよ」
「///、バカー。もげちゃえー!」
「アハハ、じゃあ!」
= = = = =
「今日はこの辺で野宿かな。路銀は節約しないとな」
スーアは、安全に眠れそうな場所を探しつつ、食料を探していた。
糧食を持ってはいるが、先は長い。
保存のきく食糧は確保しておいて、現地調達を優先する。
「ねぐらはこの辺かな?」
そこは、ちょうど寝やすそうな太い枝のある大木。その周りに枯葉が積り、歩くと音が鳴る。
「さあ、食料を探そう。できれば、木の実か根菜だな」
林の中で見つかる食料は、植物、動物、昆虫と種類は多いが、下処理、料理、味が重要になる。
そこでスーアは、そのまま食べられる木の実、根菜に的を絞った。
単なる好き嫌いで貴重な蛋白源の虫が苦手という理由もあった。
家族からはそのことを諫められることが多かったが、一人旅をいいことに逃げた。
のち、パーティーを組んだとき、そのことで苦労することはまだ知らない。
= = = = =
食料を集め、暗くなる前にするすると目星をつけておいた木に登る。
いい具合に太い枝が二又に分かれ、枝の間にロープを張るとハンモックのように身体を預けることができた。
上には葉の茂った枝があり、飛龍や翼竜から身を隠してくれるだろう。
早速、枝の間にロープを張りその上にマントを広げた。
雑納から収穫した木の実と根菜をマントの上に置いた。
小刀で木の実の殻を抉り割り中身を取り出して食べる。
火を通すと甘味が出て、ほくほくするモノだったが、ひとりなので火は起こさず、生で食べた。
「やっぱり、生だと少し渋いなぁ」
根菜に塩を振り、シャクシャクと食べた。
空腹も収まり人心地ついた。
食料が少し残ったでの雑納に入れ、マントを羽織る。
枝と身体をロープで繋いだ。
これで下まで落ちたりしない。
少し早いが枝に身体を預けて眠ることにした。
= = = = =
「くうっ、この群れは少し多いな、みんな気を抜くな!!」
「「「おう!」」」
4人の男女が、それぞれの武器を手に逃げていた。
「よし、森に入ろう。川を背にして守りやすくする。俺たちが食い止める、魔法であのいぬっころを吹っ飛ばせ」
「わかった。20だけ時間を稼いで、派手なのをお見せするから」
「そりゃ楽しみだ」
このパーティは、いわゆる冒険者。
この世界での冒険者もピンキリ。
スーアの祖父たちのように大陸に名が轟いている有名人も居れば、畑の作物を荒らす小動物を狩る仕事を請け負うものまでいる。
= = = = =
スーアは、この騒ぎで目が覚めた。
会話が聞こえたので、メンバーに魔法を使える者がいるので中レベルあたりの冒険者だと思った。
彼らを追っていたのは、大山犬の群れ。
集団で狩りをするが、鼻が利くので、獲物は慎重に選ぶ習性を持っている。
スーアの祖父たちがいれば、遠吠えの聞こえるあたりから近寄らない。
スーアの両親も揃って勇名を轟かせているレベルなので、大山犬を見るのは初めてだった。
(僕、いや、オレも駆け出し剣士だし。これが当たり前。さあ、修行開始だな)
ペロッと唇をなめると群れが通り過ぎるのを待った。
派手なのを見学してから、もし群れの生き残りがいたら、始末して、おこぼれに預かろう。
意地汚いようだが、肉にありつけるなら、致し方ない。
木の枝に旅の装備を残して、地面に降りる。
早々に剣を抜き、祖父や父に教わったように切っ先を地面を這わせるように構えると走り出す。
やがて、複数の吠える声が大きくなってきた。
近い。血の匂いに交じって、水のにおいもする。
ここがおそらく彼らの防衛線。
(まずい)
魔法使いが詠唱を終えて、魔法を放つ段階で犬たちが包囲している。
これでは、効果がない。
むしろ、物理的に牙にあらがえない魔法使いがかみ殺されかねない。
スーアは、無意識に大山犬一匹の頸を刎ねていた。
群れの殺気が仲間の死をきっかけにスーア一人に向けられる。
近くにいた個体から順に襲い掛かってゆく。
スーアはパーティから距離を取るように走り出した。
大山犬の牙と爪がスーアに届くその瞬間、閃光が大山犬の群れを貫いた。
「助かったぁ」
その場にへたり込むスーア。
「キミ、大丈夫か?」
リーダーらしい青年がスーアに声をかけてきた。
「はい、大丈夫です」
「助かったよ。群れを引き付けてくれたおかげで一掃できた」
青年は、スーアに手を差し伸べた。
いかがでしたか?
スーア君の修行が始まりです。
ここで、大山犬の説明です。
大山犬は、胴長2mほどの動物です。
雑食で群れで行動します。
肉は、癖がありますが、食料になるので
群れからはぐれた単体は、猟師が仕留めたりします。
では、次話を気長にお待ちください。