第二部‐部員
僕は僕の求めた居場所を見つけたことによって、すこしずつ心を放すことが出来た・。しかし、活動時間、僕の【ケイ】でいられる時間は二時間と校則で決められている。
それでも僕は嬉しかった。僕がそっと戸を開け、中に一歩入っただけで、部員は僕を取り囲む。まるで新しい兄弟が生まれた時のように・。新入生が来たときみたいに・。
僕らは直ぐに打ち解けた。彼らは何の警戒心も、何の恐怖も持たない、子供のようだった・。
今は僕は安心して周りを見渡せた。
ほら・。恐くない・・。
カナエ【ケイって、中学ん時、何部だったの?】
カナエはジャージがとても似合う女だった。付け睫毛のせいか、それの上にたっぷりと付着したラメという発光物体のせいか、彼女は目力が強かった・。
僕は蛇に睨まれた蛙状態になる・。彼女の怒りは無だということに気付きながらも、僕は半分目を反らしながら答える。
【工芸部。】
カナエは吹き出した・。
カナエ【工芸・・ダッサ。】僕は地味に傷つき、視線を更に下に向ける。
ノリ【面白そうですね。どういった活動をしていたのですか?】
冷静にフォローを入れるのは、一見美人な髪の短い女だった。しかし声を掛けにくいタイプではあった。
シンゴ【お手玉とかでぁそんでたんじゃね?】
彼は自分で言った後、笑いだした・。まるで渋谷によくいそうなチャラ男だった。
イチゴ【お手玉かぁ。おばあちゃんから教えてもらったぁ。】
寒がりな彼女は首にヒョウ柄のマフラーを巻いていた。ハートとかが似合いそうな彼女は、以外にも肉食動物が好きらしい・。
ネコ【私、お手玉は苦手・。】上品な大人びた外見の彼女は、父親が医者のお嬢様だ。
サラ【ケイさん、お手玉やっていたんですか?】
彼女は肌の白い、ウサギのような人だった。
僕は軽く笑って誤魔化す。実際お手玉が活動内容ではないのだが、ここまで話が進んでしまうと、ここで否定するのは今はやりでいうとK.Yだ・。
ライ【ケイって、恋バナとかする?】
そう話を唐突に変えてきたのは顔の整った美少年だった。部員達は僕の返事を待つかのように僕の顔を見つめている。
ウタ【その顔・!彼女とかいたりして。】
彼はいわゆる盛り上げ役。ケイ【いや・。】
リカ【ケイ、モテルでしょ。】
なんとなくK.Yな彼女は、役者なのだろう。男装に近い格好をしている。
マメ【僕も・・モテたい。】彼の座る長テーブルの上には文庫本が二三冊積まれている。彼は目線を手にしている本の文字に戻した。彼は読書が好きらしかった。
しばらくして、僕は質問攻めから解放された・。
彼らは劇の準備を始めた。彼らが苦労して作った舞台上には、役者が立ち、自分の立ち位置を決めている。僕は作られた観客席に腰掛ける・。通常ここから劇を見ている人が、役者の演技で思ったことや、変更点、ダメだしをしていく・。
劇を動かすのは舞台監督という人物・。映画でいうような監督権を持っているような演劇界で一番偉い人のことをいう・。
ウタ【役者、いいですか?】
一斉にはい、という声が返ってくる・。
ウタ・。彼が舞台監督だ。観客席からの意見の最終的決定権を持つ・。
ウタ【いくよ。よーい、・・。】彼はメガホンを鳴らした・。