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苦くない珈琲が飲みたい  作者: 夢呂
【第三章】多治大輔目線
9/20

これは“ドッキリ”だよな? どこかにテレビカメラとかあるんだよな?


それとも“オヤジ狩り”?え、俺まだ27才だけど、もうカモられてる?


突然現れた、魅力的な女の子。

しかも俺のことを“気になってる”とか“なぜ連絡をくれないの?”とか…ーーー思わせぶり満載、な言動。


こんな恐ろしい現実(こと)は起こるはずがないのだ。


俺は少女漫画に出てくる絵に描いたような“イケメン”でもないし、ましてやこんな可愛い女子高生に言い寄られるほどの魅力など、あるはずもない。


だからこれは悪戯で、彼女に弄ばれているだけで。


そもそも、俺は少女に興味はない。

年上の女性の方がはるかに魅力的だ。



俺が彼女に断りの言葉を告げ、暫くの沈黙があった。

彼女の中で、気持ちを整理しているのだろう。


そして彼女が、ゆっくりと口を開く。


「えっと…」

なんだか申し訳なさそうな表情で、俺は、泣き出されるのかと一瞬ヒヤリとした。


「とりあえず、lineアドレス教えてもらえますか?」

スクールバッグから携帯電話を取り出して、彼女が言った。


「?」

(あれ…俺今、ちゃんと断ったよな?)

どう整理したら、そうなったんだろうかと俺が唖然としていると、


「いや、私のだけ教えても、私から多治さんに連絡出来ないじゃないですか」

彼女は『なぜ連絡先を教えて欲しいのか』の補足を始めた。


(いやいや、lineの使い方なら知ってるよ?lineは俺も使ってるからね?)


どうやら俺の気持ちは全く通じていなかったらしい。

傷付けないように、回りくどい言い方をした俺が悪いよな。


「そうじゃなくて、俺は君と連絡するつもりはないし、君から連絡してもらうつもりもないから。」


「え?なんでですか?」


「いや、だから…ーーー」

(あれ?ここまで言っても察してくれないのか?)


日本人って、あれだよな?空気読むの大事にしてる人種だよな。大抵の日本人ならもう諦めるよな?


「私のこと、何も知らないのに。」

隣のベンチに座っていた彼女が、立ち上がって言った。


「!」

俺は、突然彼女が立ち上がったからか、ドキッとした。

夕陽が、彼女の横顔をほのかにオレンジ色に染めた。


「知る前に、拒否ですか?」

真剣な表情で、彼女が俺を見つめる。


「………。」

(なんだろう…すごく断りづらいなコレ…。)


「フるならせめて、友達として私を知ってからにしてくださいよ」


「友達って…」

(年離れすぎだし、異性だし…)


そんな子と“友達”なんて、おかしいだろ。

―――…周りはそんな目で見ないんだから。


「今日から私は、多治さんと友達です!」


強引にそう断定する彼女。


(―――まだ、断り方なら、他にいくらでもあったはずだ。)


それなのに、俺はまっすぐに向かってくる彼女の心に―――どういうわけか、逆らえなかった。


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