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苦くない珈琲が飲みたい  作者: 夢呂
【第二章】優木梨花目線
8/20

私とオージさんはベンチに並んで座った。

――――正確には、並んでいるベンチの右に私、左にオージさんが座った。


「あの、オージさんは…」

遠くて話しづらいな…と思いながら私は1メートル離れた隣のベンチに座っているオージさんに早速話し掛ける。


「王子?」

いったい誰のこと言ってるの?と混乱したような彼に、

私はキョトンとしてしまう。


「いや、“オージさん”ですよね?」

私は、会社のネームプレートを付けているスーツの胸元の方を指差して言うと、


「え?―――あぁ…」

自分の胸元を見て、オージさんが少し笑った。


「俺は“タジ”だよ。“多治(たじ)”。」


(な、なんですってー!)

青天の霹靂。ピシャーンッと雷が落ちたようなショックだった。


まさかの漢字の読み間違い。

恥ずかしすぎる。てっきり“オオジ”だと思って、私の“王子”様だとか思ってたのに。


「すっ、すみません…」

恥ずかしくて真っ赤になって俯くと、

ブハッと豪快に吹き出す笑い声が聞こえてきた。


「あはははっ…」


(わ、笑った!!)

オージさん、いや、多治さんがこんなに笑うところを私は初めて見た。


(笑うと目が細くなって、すごくかわいい。子犬みたい。 )


恥ずかしくて真っ赤になっていたのも忘れて、私は多治さんに見とれていた。



私の熱い視線に気付いた多治さんは、きまりが悪そうに、すぐに笑うのをやめた。


(なんだ…もっと見ていたかったのに)

残念がっているところに、真顔に戻った多治さんが、


「手紙…読んだよ。」

と、小さな声で言った。



「はい!それで?」

隣のベンチに行きたかった。多治さんの座っている隣のベンチに。

だけど、きっと逃げられるから、私は右のベンチのギリギリ左隅にまで身体を滑らせて、多治さんの返事を待った。


(ドキドキする。告白の返事を聞くのって、こんなに緊張するのね…)



私が多治さんをじっと見つめていると、

多治さんは一瞬だけ私の方を見て、深いため息をついた。


「それでって…。君、高校生でしょ?こんなおじさん、興味持つの止めなよ」


(ん?)

私は今、多治さんがなんて言ったのか、意味がわからなかった。



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